高齢者施設におけるヒヤリハット事例!インシデントとの違いと予防策、求められる設備

ヒヤリハット

介護の現場には高齢者が事故でケガをしないように、厳しい安全管理が求められています。なぜなら、事故によって生活の質が低下することもあるためです。例えば転倒によって骨折すると、今まで自力で歩けていた方でも、車いすや寝たきりの生活になることもあります。

そんな高齢者施設ではアクシデントを防ぐためにヒヤリハット事例が活用されています。どのような対策で事故防止に努めているのかを知ることは、高齢者施設の悩みや課題の理解に役立つでしょう。本記事では、高齢者施設におけるヒヤリハット事例の活用法や、事故を防ぐための対策と設備をご紹介します。

ヒヤリハットとは? 「ヒヤリ」「ハッと」する事故一歩手前のこと

ヒヤリハット

ヒヤリハットというのは「ヒヤリ」や「ハッとした」などの軽微な異常を指した言葉で、具体的に言うとアクシデントには至らなかったものの、一歩間違えればケガや事故につながっていたケースのことです。
似たような意味を持つ言葉としてはインシデントがありますが、ヒヤリハットは異常に気づいているのに対し、インシデントは気づいていない状態で、事故一歩手前だった場合も含まれます。
重大なアクシデントを防ぐには、ヒヤリハット・インシデントの事例を集め、予防策に活用することが大切です。そして、そのためにはハインリッヒの法則を理解する必要があります。

●ハインリッヒの法則とは

ハインリッヒの法則はアメリカの損害保険会社で安全技師をしていたハインリッヒという人物が、労災や交通事故などの統計的な経験則より提唱した法則です。簡潔にその内容を説明すると、1つの重大な事故の背景には29の小さな事故があり、さらにその背後には300のヒヤリハットがあるということが示されています。

つまり、1件の重大事故を予防するには29件の小さな事故を減らすこと、29件の小さな事故を減らすには300のヒヤリハットを減らすことが有効であるという法則です。高齢者施設ではこのハインリッヒの法則に基づいて、事故の予防策としてヒヤリハット事例を活用しているのです。

なお、ヒヤリハットに関しては、下記の記事でも詳しくまとめていますので、こちらもぜひ併せてチェックしてみてください。
⇒「ヒヤリハットとは? アクシデント・インシデントを減らすために施設に求められる予防策

ヒヤリハット事例の活用法のフロー

ヒヤリハット

ヒヤリハット事例を事故防止に活かす際、重要なのは原因や状況を分析し、再発しないようにすることです。ヒヤリハットの具体的な活用法は、以下のフロー順となります。

1. ヒヤリハットの発生
2. 報告書の作成
3. 対策の検討
4. 組織内で共有

このようにヒヤリハット事例を活用するには、対策方法の検討・共有が大切です。

●ヒヤリハットを用いた事故予防の例

しかし、ヒヤリハットがなぜ必要なのか理解できても、どうやって事故予防につなげているのかはイメージしにくいでしょう。そこで、「利用者Aさんが×月×日××時、食堂の出入り口でふらついた」というヒヤリハットを例にして、各フローを考えていきます。

・ヒヤリハットの発生

ヒヤリハットが発生した場合は、速やかに利用者の安全を確保する必要があります。ふらついているのであれば、椅子に座ってもらうなどの対策が有効でしょう。また、後で報告できるように、発生時の状況を詳しく把握することが大切です。

・報告書の作成

次にヒヤリハットがどのように発生したのか、「だれが」「いつ」「どこで」「どのように」ということを報告書にわかりやすく記載します。今回の状況は、「利用者Aさんが個室に戻ろうとして、食堂の扉を開けようとした際にふらついた」です。原因は、「引き戸の扉が重くて、開閉時に体のバランスを崩したため」と考えられます。

・対策の検討

ヒヤリハットが起こった状況や原因が把握できたら、次は対策の検討です。今回の例では、「出入り口付近の見守り強化」「ドアの建付チェック・メンテナンス」「開閉しやすいドアへの交換」が挙げられます。ヒューマンエラーだけではなく、外部の環境による対策も大切です。

・組織内で共有

対策を検討しただけでは、次のヒヤリハット・事故を防ぐには不十分です。しっかりと対策を徹底するためには、ヒヤリハットが発生した事実と対策方法を組織内で共有し、施設全体で再発防止に努めることが大切です。

このように、実際のヒヤリハット事例をもとに事故予防を図ることで、施設に合ったきめ細かな安全対策が実現できます。

施設・設備の改善も有効な安全対策

ヒヤリハット

高齢者施設ではヒヤリハット事例に備えることが、将来の事故予防につながります。こうした活動は利用者が安心して生活するためにも重要といえるでしょう。

事故やヒヤリハットの要因を考える際の注意点は、ヒューマンエラーに絞らないことです。なぜなら事故やヒヤリハットの要因は、施設や設備の不足が原因の場合もあるためです。

例えば、先に紹介した「開閉しにくいドア」が要因の場合は、安全かつスムーズな出入りができるように「開閉しやすいドア」を設置することが有効でしょう。また、ドアは指をはさみそうになるヒヤリハット事例も多いので、指はさみにも配慮したドアを設置すると安心・安全な高齢者施設づくりに役立ちます。

人的配慮や職員の注意だけでは事故防止に限界があります。施設・設備を改善して事故が起こりにくい空間をつくることが高齢者施設では大切なポイントとなります。ヒヤリハット事例をもとに、一度、施設内の設備を見直してみてはいかがでしょうか。

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