人と地域が元気になる~医療施設のデザイン戦略

小学生の頃にナイチンゲールの生き方に憧れ看護師になった戸倉 蓉子氏。ナイチンゲールが取り組んだ「病院の環境改善」に感銘を受け、日本の病院の環境も変えたいという一心で建築家の道へ。イタリア留学を経て一級建築士となり、女性スタッフのみで構成された建築デザイン事務所「株式会社 ドムスデザイン」を立ち上げます。「また来たくなる、ずっと働きたくなる」病院づくりを目指し邁進する戸倉氏に、医療施設におけるデザイン戦略の重要性について語っていただきました。
お話を聞いた方
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株式会社ドムスデザイン
代表取締役
戸倉 蓉子 氏

医療施設をデザインでブランディングする
「デザインと聞くと、『装飾すること』というイメージが先に来るかもしれません。しかし実際は、ただ装飾するだけでなく、『問題解決の手法』になり得るのです。特に医療施設のデザインについては、イコール『ブランディング』であるとも言えます」と戸倉氏。
一般的に医療施設が抱える課題について患者さん・スタッフの2方向から捉え、ここにデザインの工夫を施すことで、どのような変化が起きるかを確認していきます。

もしも医療施設が暗いイメージを持つ場所であれば、患者さんは暗い気持ちや不安になり、来患者数は減っていきます。また、看護師の離職率は高くなり、スタッフのモチベーションが上がらないことで患者さんへの対応に悪影響が出てしまいます。
「デザインが、こうした悪循環を断ち切るきっかけになる」と戸倉氏は言います。
「施設のトイレが綺麗になると、人の気持ちがどう変わるか」に着目しながら、デザインによって患者さんの気持ちが前向きになる、そしてスタッフの心にも火をつけるという流れを紹介。デザインがブランディングにつながっていくということを、戸倉氏の実績と共にお伝えしています。



戸倉氏の手掛けた医療施設のトイレ。病院のイメージとはかけ離れたインテリアによって、患者さんやスタッフに対するおもてなしの気持ちを表現。
スタッフのモチベーションを上げるための工夫として、ロッカー室とナースステーションの事例も紹介しています。
スタッフのロッカー室は、つい後回しにしがちのエリアですが、実はとても大切な領域。スタッフがそこで「今日1日頑張るぞ」と思えたら、その気持ちが笑顔となり患者さんに向けられる、その良い循環を生み出す場所と捉えることがポイントです。

実績紹介:医療施設①
病院をブランディングするということは、「患者さん、そしてそこで働く人にとっての憧れの存在になる」ことであると戸倉氏は言います。
「憧れの存在、つまり、地域社会で唯一無二の存在になっていくということです。働く場所としても居心地の良ければ、施設の価値はさらに上がっていきます。10年、20年と存在する施設。その価値を定めるための礎をデザイナーや設計者がしっかりブランディングしていくことが重要です」。
戸倉氏が手がけた案件の中から、いくつかの医療施設の事例を紹介しています。