こどもがこどもらしくいられる空間づくり~幼保施設の設計

幼保施設の設計

認定こども園、幼稚園、保育園などの幼保施設において、園舎の建て替えや、大規模な改修・増築を行うことは、何十年に一度あるかないかの希少な機会となります。「こどもたちを、どのような環境で、どのように育むべきか」という園の存在理由に関わる課題に正面から向き合い、新園舎の在り方を考え、整備方針を固めていく――そのアプローチの仕方と内容は一園ごとに異なり、実に多様です。そこで生まれる要望・期待・夢をいかに設計に落とし込んでいくか、そのポイントについて、幼保施設に特化した設計事務所として700園を越える設計監理の実績を持つ株式会社 時設計の松坂 俊一氏が語ります。

  • お話を聞いた方

関わるスタッフ全員でコンセプトを共有する

保育に最適な環境を創出するために――松坂氏は、園舎・保育室などの設置基準のほか、園舎の階数、保育室等の設置階など様々な法的条件について振り返りつつ、「こどもたちを、どのような環境でどのように育むべきか」という園の存在理由に関わる課題に真摯に向き合い、新園舎への想いを知るところから仕事は始まると語ります。

幼保施設の設計

幼保施設の建て替え事業、整備に関しては、園側の先生方はもちろん、設計チーム、施工関係者も含めると、非常に多くのスタッフが関わることになります。そのため、関係者全員で共有できるコンセプトの存在がプロジェクトの成否を分けると言っても過言ではありません。

プロジェクトの推進はマクロとミクロを行ったり来たりしながら収斂していきます。時設計の監理における特徴的プロセスとして「一部屋分科会」について後述しますが、園との密なコミュニケーションを重視し、様々なアプローチを園ごとに工夫しています。

こどものスケール感を掴む

「設計にあたっては、実際に現場に行き、こどもの目線で景色を見て、こどもにとっての快適性を肌感覚で掴むことが重要」と語る松坂氏。その成長過程に応じて、3歳、4歳、5歳の身体寸法と、それぞれのスケール感を大切にしながらの空間づくりを実践しています。

幼保施設の設計

こども達だけの隠れ家のような読書コーナー

幼保施設の設計

調理エリアをのぞくこども達。3歳児の目線でも調理師の方とアイコンタクトがとれることを意識した設計に。キッチンでは先生方のカウンターとは別にこども専用のカウンターを設け、自分たちの目線で食育を学べる空間を実現。

以下は、先述のテラスイン方式の認定こども園の様子です。もともとあった樹木を残しながら、こども達が裸足で走り回れる園庭となっています。羊などの生き物の世話も体験しながら、年に1回、園庭にテントを張ってお泊り保育をします。屋上にバスタブを持ち込み満天の星の下で友達と露天風呂につかるという体験まで行っているそうです。その様な取組みに共感したフィンランドの幼稚園が園を訪れ、その後も交流が続いていると伺っています。

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松坂俊一

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