施設の音環境を整える~求められる吸音性能とそれを叶える防音・音響仕様

音環境 吸音性能 防音

近年の建物は、高気密・高断熱、耐震、空気質などの基本性能が充実している一方で、「音環境」への配慮は後回しにされるケースが見受けられます。特に公共施設においては、遮音対策だけでなく、「吸音(調音)」、つまり、その空間の用途に合わせて音の「響きの長さ」を調節することが肝心です。今回の2つのセミナー動画では、入社以来40年にわたり音響の研究を重ねてきた当社 サウンドセンター センター長の井上 直人が音環境の中でも「施設で求められる吸音」について、そして施設ごとの理想の音環境を実現するための「防音・音響仕様」についてご説明します。

  • お話を聞いた方

  • 井上 直人
  • 大建工業株式会社
    音響製品部
    サウンドセンター センター長
    井上 直人

 
 

| 施設で求められる吸音とは?

 

施設で求められる音響

ー施設の防音について、皆さまはどのような工夫をされているでしょうか?

一般的に「防音対策」などと言いますが、私たちDAIKENでは、「防音」は「遮音」「吸音(調音)」そして「制振、防振」、これらすべてを含んだ言葉として使っています。動画では、こうした言葉の意味するところを振り返りながら、音の単位「Hz(ヘルツ)」「dB(デシベル)」や、日常の様々な音の騒音レベルなどをおさらい。施設で求められる防音について、具体的なイメージを掴んでいきます。

音環境 吸音性能 防音

「防音」には様々な対策が含まれる
 

音環境 吸音性能 防音

施設に求められる静けさとは?
 

施設の音響におけるポイントは、「遮音」と「吸音(調音)」

施設の防音においてのポイントは「遮音」と「吸音(調音)」です。
例えば会議室や病院の診察室では、静けさやプライバシー確保のための遮音性能が重視されます。一方で、駅であれば放送の聴き取りやすさ、学校では先生の声の聴き取りやすさが優先事項となります。この聴き取りやすさを調節するのが「吸音(調音)」です。基本的には音のエネルギーを吸音材で吸収させて、音の響きを短くすることを指しますが、施設の用途によって室内の響きの長さをあえて長くしたり、短くしたりと、事前に計画する(調音する)ことが大切です。動画では、建築学会が定めた建物(用途)別の静けさの推奨値を示しながら、適切な「響きの長さ」=「理想残響時間」についても探っていきます。

音環境 吸音性能 防音

「理想残響時間」は部屋の体積と用途によって変わる
 

音環境により、育児に関するストレスが変化する?

「響きの長さ」が長い、つまり音が「ワーン」と響くような環境では、赤ちゃんの泣き声がよりストレスに感じられる――つまり、音環境が育児・保育の現場に少なからず影響を及ぼすとの近年の論文(※)もあります。部屋の残響の度合いを調整することで、保育をする側、される側、どちらにとってもストレスの少ない環境づくりが可能なのです。
※埼玉大学 志村洋子 名誉教授(現在退任)

音環境 吸音性能 防音


 

欧米各国では、幼保施設や小学校における音環境について、細かい基準・指針が定められています。例えばオーストラリアでは「0~5歳の子どもは言語能力の発達段階であり、可能な限り最高の音響条件を必要とする」として保育室、小学校の理想的な残響時間を政府が示しています。一方、日本では、2014年にようやく指針が定められた以降、法制化には達していないのが現状です。
教育・学習活動を効果的に行うためには、話がしやすく、かつ相手の話が聴き取りやすい音環境が必要です。保育施設においては、学校施設に求められる値よりもさらに厳しい「静けさの指標」を定め、成長段階にある子ども達にとって最適な環境を用意することが理想的です。
動画では、学校施設、保育施設などの用途ごとの「理想残響時間」、そして望ましい「平均吸音率」(音の跳ね返りを少なくする能力の平均値)をご紹介します。

音環境 吸音性能 防音

残響時間と平均吸音率の関係
 

movie

アーカイブ動画 コラムの内容を動画でチェック

青山幸広

recomended item

おすすめ製品