医療現場のインシデントやアクシデントを減らすには ヒヤリハット対策のための空間づくり

医療施設の空間づくり

医療の現場では、医療事故を未然に防止する対策として、「インシデント(事故に至る可能性のあった事件)」の報告と収集、分析が重要です。耳にする機会の多い「ヒヤリハット」もインシデントに含まれます。インシデントの報告から原因を分析して医療事故を予防する考え方として「ハインリッヒの法則」があります。
この記事ではハインリッヒの法則を用いて、医療事故やインシデントを予防する取り組みをしつつ、建物内の安らげる空間づくりについて紹介していきます。

医療安全対策の考え方の変遷とハインリッヒの法則

医療安全への取り組み

日本における医療安全への取り組みは、1999年に発生した患者取り違えの医療事故をきっかけに大きく変化しました。過去の医療事故の多くは「個人による注意不足」が原因と捉えられていましたが、それ以降の医療事故は「誰でも起こる可能性があり、チームや組織全体として医療安全対策をする考え方」となりました。

医療安全の取り組みに用いられているのが「ハインリッヒの法則」です。
ハインリッヒの法則とは、米国のハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が、労働災害の発生確率の分析をしたものです。この法則では「軽災害をなくすと、重大災害もなくなり、労働災害全体の98%は予防可能である」と断言しています。
医療においては、1件の重大事故の背景には、29件の同様の小さな事故、そして300件のインシデントがあるという考え方です。ハインリッヒの法則は、別名「1:29:300の法則」とも言われています。

重大な事故を防止するためには、日々のアクシデントを防ぐことが重要です。
最近はこうした考え方からハインリッヒの法則を用いて、医療組織全体で医療事故を予防する姿勢が浸透するようになりました。

なお、導入部分でもご紹介した通り、「ヒヤリハット」は事故の一歩手前、危険性の高かった出来事として捉えられ、ヒアリングも重要視されています。詳しくは下記の記事でご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
⇒「ヒヤリハットとは? アクシデント・インシデントを減らすために施設に求められる予防策

インシデントの報告・収集でアクシデントを防ぐ

医療現場においてインシデントが発生した場合、その内容の報告と記録を行い、その後収集したデータを分析し対策を練ることが医療事故の予防へと繋がります。逆にインシデントが発生したあとに、何も対策を行わないでいると、小さな事故から医療事故へと発展していく可能性があります。この考え方がハインリッヒの法則でもあります。

インシデント発生後は、原因や問題を分析し、対策を講じる必要があります。インシデントの背景にある「不安全行動」や「不安全状態」を除去することが、1件の重大事故や29件の小さな事故を防止することにつながります。医療現場では、インシデント発生後の原因分析や対策をひとりの医療スタッフだけでなく、医療組織全体で考えることが重要です。そのためには、インシデント発生後にスタッフ間で情報の共有を行い、再発防止対策を徹底して行う必要があります。
インシデントの報告や収集、情報の共有には、レポートの提出が重要です。過去のインシデントレポートから、インシデントの種類や原因、対策などを行うことで、今後の予防策の整備にも繋がります。このように、医療組織全体としての取り組みが必要不可欠であるといえるでしょう。

事故の起きにくい空間づくりを

医療事故を防止する設備

未然に医療事故を防止するためには、医療施設内の設備にも目を向ける必要があります。患者様が安心・安全に過ごせるような空間づくりを行うことは、事故発生のリスク低減にもつながります。

例えば、待合室や診察室に吸音性能を備えた天井材を設置することで、患者様の声が聞き取りやすくなり、間き違いによるインシデント発生の防止に役立ちます。
また、扉の開閉時の事故を防ぐために、指はさみ防止やブレーキ機構を備えた室内ドアを採用することも有効です。
さらに、すべりに配慮した床材を採用すれば、転倒のリスクを低減することもできます。

「事故が起こる前に予防する」ということを意識しながら空間づくりを進めることで、インシデントや医療事故の発生リスクを低減することができるはずです。

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