人生100年時代の健康寿命の大切さ 病院に求められる配慮は?

健康寿命

昨今では100歳以上生きる人も非常に多くなり、“人生100年時代”ともいわれています。このような時代においては、高齢者から若者まで全ての人が健康で活躍し続けられる社会づくりが重要となります。 今回は、平均寿命と健康寿命に対する理解を深めるとともに、病院における健康寿命をおびやかす要素、そして高齢者に求められる配慮などをご紹介します。

長寿社会にとって何より大切な「健康寿命」

健康寿命

世界保健機関(以下、WHO)が発表した2021年版の世界保健統計(World Health Statistics)によると、日本は平均寿命が84.3歳と最も長い国でした。 2位のスイスが83.4歳なので、その差は約1歳です。

男女別に見ても、男性は81.5歳でスイスの81.8歳に次ぐ2位、女性は86.9歳で1位です。

近年は、平均寿命だけでなく健康寿命も注目を浴びています。健康寿命とは、WHOが2000年に発表した概念で、介護されたり、病気で寝たきりになったりせずに、日常生活を健康的に過ごすことができる期間のことです。

日本は平均寿命も健康寿命も世界でトップのレベルですが、それでも平均寿命と健康寿命を比較すると、その大きな差が問題となっています。 実際に2016年の平均寿命と健康寿命を比較すると、男性で8.8歳、女性の場合は12.3歳の差がありました。 つまり、日本人の多くの方が、人生における最後の約10年間は健康的な日常生活が送りづらい状況となっているのです。

健康寿命を脅かす、病院での「転倒・転落」事故

転倒・転落

高齢者の健康寿命を脅かす大きな要因のひとつが、日常生活における転倒・転落事故です。高齢者は転倒・転落をすると、ケガや骨折の影響で寝たきりになってしまう可能性があるだけでなく、歩くことへの恐怖心が生まれ、自由な日常生活を送るのが困難になることもあります。

しかも、高齢者にとって安息の場であるはずの病院でも、転倒・転落事故は発生しているのです。

実際、2020年に東京都病院経営本部が発表した「都立病院におけるインシデント・アクシデント・レポートの第18回集計結果」の事象内訳では、第1位:薬剤(31.9%)、第2位:転倒・転落(14.2%)、第3位:抜去※(13.0%)(※カテーテル、ドレーンなどを抜く事)という結果が出ており、病院においても多くの転倒・転落事故が発生しているのが分かります。 これは第1回の調査開始時から概ね同様の傾向が見受けられており、転倒・転落はどこでも発生するインシデント(事象)・アクシデント(事故)で、予防するのが容易ではないことが分かります。

都立病院全体

しかし、なぜ病院において転倒・転落が発生しているのでしょうか?

1つ目の理由として、一般的な病院では高齢者の方が多いことが挙げられます。

日本整形外科学会と日本骨折治療学会が監修する大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)には、在宅高齢者の20~25%が毎年転倒しているとの報告もあります。 さらに、2019年の「国民生活基礎調査の概況」によると、介護状態となった主な原因の3位が骨折・転倒となっています。

2つ目の理由は、病院には若年者も含めてケガや病気で体調が万全ではない人が通っており、薬などの影響でふらついたり、体力や筋力の衰えでバランスを崩したりて転倒・転落が発生するというものです。

3つ目の理由は、病院の環境が日常と異なるため、点滴などのチューブに引っかかったり、身体疾患や薬の影響で「せん妄」という混乱状態に陥ったりすることです。

このように、むしろ病院こそが転倒・転落事故のリスクに気を配らなければならない場所ともいえるのです。

転倒予防や転倒時の衝撃を和らげるにはどうすれば良い?

病院においても、転倒・転落事故が多いことはわかりました。

言うまでもなく転倒・転落を発生させないことが重要です。床材の中には、高齢者の滑りに配慮した加工がされた製品もありますので、転倒のリスクを低減させるために設置するのも良いでしょう。

また、高齢者が転倒・転落した際の衝撃を和らげるには、下記の方法などがあります。

1. 床面に衝撃を吸収するマットなどを敷く

2. ベッドの高さを調整し、 転落時の高低差をできる限りなくして衝撃を緩和

3.リハビリ中や歩行中の転倒に備えて衝撃緩衝用の保護帽を装着

転倒・転落は、“人生100年時代”で高齢者の数が今後さらに増えることを考えると、できるだけリスクを低減したいものです。滑りに配慮した床材や転倒した際の衝撃を和らげる配慮など、全ての患者さんやスタッフに対して気配りをしている病院は信頼が得られやすく、日々働くスタッフの負担も大きく軽減できるため、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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