クリティカルシンキングとはどのような思考法? グローバル感覚を育てる教育環境整備

クリティカルシンキング

ビジネスの場から教育の現場まで、幅広く注目を集める「クリティカルシンキング」。「批判的思考」と呼ばれるこのスキルは、実は日本の学校や家庭ではあまり教えられてきませんでした。しかし、価値観が多様化するこれからのグローバル時代を生き抜いていくために、クリティカルシンキングは欠かせないスキルだとされています。
クリティカルシンキングが注目される背景とすでに導入されている事例をご紹介しながら、その必要性を考えます。

日本人に足りていない? クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングは、通常「批判的思考」と訳されます。
「批判」と聞くと、他の人の意見を攻撃する、あるいは揚げ足を取るなどのマイナスイメージをもたれる方もいるでしょう。しかし本来のクリティカルシンキングは、そうしたネガティブなものではありません。
自分の考えは証拠に基づいた論理的なものか。偏見や思い込み、既成概念に左右されてはいないか。他の人ではなく、自分自身の感情や考えをそのように客観的に吟味し、さらにそれを適切な言葉で他の人に伝えるスキルやプロセスを指す言葉が、クリティカルシンキングなのです。

日本人は、クリティカルシンキングが苦手な傾向があります。このスキルが、これまで家庭や学校で積極的に教えられることは、あまりありませんでした。この点を裏付けているのが、2018年にOECD(経済協力開発機構)による教員を対象にした国際的な調査「TAILIS 2018」です。その調査の中で、授業で批判的思考を促す頻度をたずね、「いつも行う」「しばしば行う」と回答した比率を国ごとに比べた結果、日本は約24%で46カ国中なんと最下位。ちなみに46カ国の平均は約82%で、ワースト2位のノルウェーでも約66%であることから、日本の数値は際立って低いことが分かります。

日本の多くの家庭や学校では、親や先生に教えられることを正確に覚え、きちんと従うことが優先されてきました。また議論することよりも、人に迷惑をかけず決まりを守ることが重視される傾向があり、長らくクリティカルシンキングは育ちにくい状況にありました。しかし近年、その状況は変わりつつあります。

これからの時代を生きていく子どもたちに必要な力

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングは日本人にとってあまり馴染みがない言葉であるとはいえ、日本の教育理念に反するものではありません。例えば「学校教育法」では、「個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養うこと」が掲げられています。文部省の学習指導要領でも、「自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する能力を育む」ことが理念とされていますし、平成24年には、文部科学大臣がクリティカルシンキングを重視した教育システム改革を打ち出しています。

こうした変化の背景として、近年、私たちが非常に多くの情報にさらされるようになったことが挙げられます。SNSなどで流れる誤った情報に振り回されず、必要な情報を見極めるうえでクリティカルシンキングは役立ちます。また、コンピュータやAIが大きな役割を果たす世の中で、既成概念にとらわれず、自由で新しい発想を生み出せる社会人となるためにも、クリティカルシンキングは有用です。実際、海外ではクリティカルシンキングは、「21世紀スキル」「汎用的能力」のひとつであり、就職において重要視される能力となっています。

クリティカルシンキングが身につけば、周りに流されず、情報の本質を見きわめて取捨選択し、かしこい進路やキャリア選びができるようになります。グローバルで多様な価値観を持つ時代を生きる子どもたちにとって、クリティカルな思考法は大きな武器となるでしょう。

子どもたちにクリティカルシンキングを教える

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングはスキルなので、教えること・学ぶことが可能です。例えばアメリカでは1980年代から、クリティカルシンキングが教育現場で重視されるようになりました。現在、アメリカの学校では、すべての教科でクリティカルシンキングが導入されています。生徒は先生の話をただ聞いて学ぶのではなく、議論に参加して自分や他の人の意見を吟味しながら、ロジカルに他の人に伝える技術を身につけます。

日本でも、いくつかの学校でクリティカルシンキングが導入され始めています。例えばある高校では、1年生の時点から批判的思考教育の混合アプローチによる取り組みを行っています。夏休みに個人が作成したレポートを、2学期に輪読して相互批評し、グループでプロジェクト活動を実施。また2年生になると、国語の教科書に掲載される論説をテーマに、分析的・批判的読み方を学び、討論や相互批評を行います。また、クリティカルシンキングの実践として、ビジネスをベースに課題解決型学習(PBL)を取り入れている高校もあります。

日本のクリティカルシンキング導入は、まだ始まったばかり。今後、教員の育成や教材の見直しに加え、クリティカルシンキングに適した環境整備も重視されるでしょう。話を聞き取りやすく、ディスカッションやプレゼンに適した教室。集中しやすく、自由な発想が生まれやすい教室。学校の設備を整える側としては、これからのグローバル時代を生き抜く子どもたちのために音環境に配慮した環境を提供することで、クリティカルシンキングの学びをいっそう後押ししていきたいところです。

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