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インクルーシブ教育実現のために 学習環境に求められるバリアフリー化とは

多様性を尊重することの重要性が叫ばれている現在、インクルーシブ教育という教育システムが注目されています。インクルーシブ教育とは、障がいの有無にかかわらずすべての生徒が共に学び、共生社会の形成を目指す教育のことです。

インクルーシブ教育のカギとなるのが、合理的配慮と基礎的環境整備です。学校施設に求められる基礎的環境整備について、そして環境整備に役立つ建材のヒントをご紹介します。

インクルーシブ教育とはどんなもの?

インクルーシブ教育とは、障がいの有無にかかわらず、すべての児童を受け入れ、同じ場所で共に学びあう教育のことです。
日本は2014年1月「障害者権利条約」に同意しています。この条約の中では障がい者児童を教育から排除しないことを約束しており、インクルーシブ教育は「障がい者が教育を受ける権利」を実現するための方法として注目されています。
障がいを持つ児童でも自分の能力を十分に発揮できる場を提供しようとするインクルーシブ教育は、共生社会の実現を目指した教育システムと言えます。

では、共生社会とは何でしょうか。私たちには障がいの有無だけでなく、性別、年齢、国籍、経済力など多くの「個人差」があります。共生社会とは、様々な特性を抱えた違いのある個人が、それぞれを認め合い、一緒に生きていこうとする社会のことです。インクルーシブ教育は障がい支援教育としてとらえられることが多いですが、実はもっと広いレベルの「個人差」を包み込む教育でもあります。例えば、経済的・家庭的な問題を抱える子どもの教育機会を確保することも、インクルーシブ教育の範疇となってくるでしょう。

特別支援教育との違いは? 大切なインクルーシブ教育との関係

インクルーシブ教育

特別支援教育とインクルーシブ教育はどちらも障がい者の教育機会を確保するために重要なものですが、同じ概念ではありません。

特別支援教育とは、障がいを克服・あるいは軽減して社会生活を送りやすくするようにする教育システムです。医学モデルを元としており、障がい児に対し個別に支援を行います。特別支援教育には、以下の3パターンがあります。

1.通常学級に籍を置きながら、特別指導を追加する「通級」
2.小、中学校の中に障がい児向けのクラスを作る「特別支援学級」
3.幼稚部から高等部まで幅広い年齢の障がい児を受け入れている学校「特別支援学校」

一方、インクルーシブ教育は障がいの有無にかかわらず共に学びあえる場所づくりという意味合いを持っています。特別支援教育が医学モデルなら、インクルーシブ教育は社会モデル視点から見た教育システムと言えます。インクルーシブ教育の実践においては、障がい児の個別の頑張りに依存するのではなく、障がいを持っていても活躍できるような学習環境を整えていくことが重要です。

なお、特別支援教育とインクルーシブ教育はしばしば対立構図で語られますが、文部科学省は特別支援教育をインクルーシブ教育の基礎を作る不可欠な要素と捉えています。障がい児個別の教育ニーズにこたえる特別支援教育を発展させつつ、できるだけ誰もが同じ場所で学べるようにすべきという方針を取っています。

カギとなる合理的配慮と基礎的環境整備

インクルーシブ教育

「皆が同じ場所で学べるように」という理念は素晴らしいものですが、ただ障がいのある児童を普通学級のプログラムに参加させただけでは充分に活躍できないのは明らかです。そこでプログラム参加への障壁をできるだけ低くするような工夫が学校側に求められます。このような工夫を文部科学省は「合理的配慮」という言葉で表しています。
合理的配慮の土台となるものとして「基礎的環境整備」があります。「基礎的環境整備」は自治体や国が行う制度・ハード面の全体的な工夫です。一方「合理的配慮」は学校側が行う生徒個別に合わせた工夫となります。
例えば、ある自治体が障がい児支援の為として各学校にタブレットを配布するのは「基本的環境整備」です。そのタブレットを使い、目が見えないAさんを音声授業でサポートするのが「合理的配慮」です。

現場職員が「合理的配慮」をしやすくするために、施設設置者は「基本的環境整備」の充実を図る必要があります。障がいがあっても学びやすい環境づくりをするには、障がい者の目線に立った建材選びも重要です。
まずは車いすで教室の出入りがしやすいかどうかに焦点を当ててみるのはどうでしょうか。段差をなくしスロープを設置したり、少しの力で開け閉めがしやすいドアを採用するという方法等を考えてみましょう。
他にも万が一転倒したときにケガに繋がりにくい建材はないかなど、安全面も含め、様々な視点から「基本的環境整備」の充実を図ります。施設の中にバリアフリー化した方が良い場所はないか見直してみましょう。また今後施設づくりをする際には、ユニバーサルデザインを積極的に導入していきたいところです。

すべての人が活躍できる、誰も排除しない社会を実現するためにも、インクルーシブ教育を実行しやすい環境整備を検討してみてはいかがでしょうか。

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