施設の収納に必要なおもいやり。満足度の高い共有スペースのあり方
多くの高齢者が生活をする高齢者施設。
施設ごとに理念の違いはあれど、「利用者を第一に考え、おもいやりをもって接する」という姿勢は共通しているのではないでしょうか。
そういった観点から、職員教育や研修に熱を入れる施設も多いでしょう。しかし、その前に施設の環境そのものに目を向けたほうが良いかもしれません。どんなに職員の対応が素晴らしくても、環境が整っていないために「生活しにくい」と思われることもあるからです。
そこで今回は、施設の環境づくりにスポットを当て、美しい共有スペースの作り方をご紹介します。
高齢者施設では共有スペースも重要
高齢者施設は、利用者にとって日常生活の場です。
その環境を改善することは、利用者の満足度にも直結します。
では、環境を整えるためにはどのような点に目を向けたら良いのでしょうか。
一般的な住宅で考えてみると、主なポイントとして「収納スペース」「部屋の広さ」「照明の明るさ」などが挙げられます。
高齢者施設においてもこれらの点が重要であることは間違いありません。実際、利用者の居室など、プライベートな空間ではこれらの配慮がされている施設が多いでしょう。
しかし、一般的な住宅と高齢者施設では大きく異なる点があります。
それは、食堂や玄関、談話室のように、他者との共有スペースが多いということです。
共有スペースは、車椅子の人や杖で歩行する人、手すりを使用する人など、様々な状態の高齢者が利用します。一言で「環境を整える」といっても、こういった身体的状況を考慮しなければならず、容易なことではありません。
その一方、共有スペースでは食事やレクリエーション、他者との交流など、多くの時間が成り立っています。つまり、共有スペースを整えないことには、利用者の満足度を上げることは難しいということになります。
では、共有スペースの環境を整えるためにはどのような方法があるのでしょうか。
次の項で紐解いていきます。
高齢者施設における共有スペースのあり方
共有スペースの環境を整えるには、利用者の目線で「過ごしやすさ」を考える必要があります。
そもそも高齢者施設では利用者の多くが身体機能の衰えから、トイレや食事などの生活動作に不安を抱えています。
まずはそういった不安を解消するために、生活動線上に無理がないかを検討し、不必要なものは置かず、ゆったりとした広い導線を確保しましょう。生活導線が確保されているというだけでも、安心感が生まれます。
加えて、バリアフリーにも目を向けましょう。例えば、車椅子の方が移動しやすいようにスロープを設置したり、通路を広めに設けたりするということが考えられます。
また、歩行が安定している利用者でも、歩くたびに疲れを感じているということは珍しくありません。そのような方に安心していただくため、ところどころに休憩用のベンチを設置することも効果的です。
さらに、見落としがちな「収納」にも目を向けましょう。
具体的には、開け閉めはしやすいか、中身は見やすいか、使いやすい高さかなど、高齢者に対するおもいやりを基準に考えましょう。
特に、玄関スペースの収納は頻繁に利用するため注意が必要です。
玄関は、いわば施設の顔。におい対策やインテリアに力を注ぐことも重要ですが、高齢者の視点で配慮する必要があります。
具体的には、収納扉が指はさみに考慮されているか、弱い力でも靴を出し入れできるか、座って靴を履ける環境かなど、利用者への「おもいやり」を持って考えましょう。
施設として、利用者のご家族などの来訪者が来た際に、自信を持って招き入れることができる玄関が理想ですね。
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若年層が当たり前のように軽々とやっていることが、高齢者にとっては負担ということは珍しくありません。
靴を脱いだり履いたりすることも、高齢者にとっては大きな負担のひとつ。この動作は身体をかがめたり、高い下駄箱から靴を出し入れしたり、バランスを保ちながら脱ぎ履きしたりと、かなりの重労働なのです。若い頃は外出が好きだったという方でも、「靴の脱ぎ履きが大変だから」という理由で外出をしたがらなくなるケースもあります。
そのため、できれば座りながら靴を脱ぎ履きできる椅子と、立ち座りをサポートできる手すりが付けられる下駄箱を導入すると安心です。椅子や手すりがあることで転倒のリスクなど、高齢者の負担を大きく減らすことができ、気持ち良く外出を楽しんでもらえます。
使い勝手の良い玄関は利用者の満足度につながるだけではなく、ご家族などに「おもいやりのある施設」という印象を持っていただくきっかけになります。
後から手すりを設置したり、椅子を置いたりするのはスペース確保などが難しくなる可能性もあるため、設計の段階から利用者が使いやすい下駄箱を導入するイメージで計画することが望ましいでしょう。
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