医療施設における電子カルテ・マイナンバーカード健康保険証導入のメリットと注意点

電子カルテ

近年、医療DX推進の動きが盛んになっています。具体的には電子カルテやマイナンバーカードの健康保険証化が挙げられますが、過去の調査に見る普及率は、必ずしも高いものとは言えないでしょう。しかし、導入すれば業務の効率化や患者の利便性向上が期待でるといわれています。
今回の記事では、電子カルテとマイナンバーカード健康保険証(以下、マイナ保険証)とはどのようなものか、具体的なメリットや注意点について解説し、現在の医療機関に望まれる受診環境づくりについてもご紹介します。

電子カルテ導入のメリットと注意点

電子カルテとは、従来の紙のカルテを電子化して管理できるシステムです。病院(病床数20以上)向けのものや診療所(病床数19以下)向けのものなど、規模や診療内容に合わせていくつかの異なるタイプがあります。
このような電子カルテには、医療問題を解決するための様々なメリットがあります。
例えば、パソコンなどで作成される電子カルテでは読み間違いがおきにくく伝達がスムーズに行えること。電子カルテに入力した情報は、複数の場所で共有できるため、受付で入力された患者の個人情報や既往歴が診察室の医師にタイムラグなしで伝えられること。会計システムと連携して自動的に医療費を計算したり、カルテ上から検査結果を閲覧することが可能であること。手作業で探さなければならなかった従来の紙カルテとは違い、データベースに登録された電子カルテは検索も安易であること。紹介状や診断書のテンプレートを利用すれば、文章作成時間を短縮できること、などが挙げられます。

このようなメリットがある中で、電子カルテには注意点もあります。
例えば、職員がシステムの操作になれるまでに時間がかかること。今まで使用していた書式や帳票がシステム上で利用できず、個人任せだったカルテの書き方を変更したり、統一したりしなければならない場合もあること。電子カルテは停電時には使用できないため、万が一の際には、一時的に紙のカルテに切り替えられるようシュミレーションしておく必要があること。電子カルテの導入と運用にはコストがかかること、などが挙げられます。

電子カルテの導入と運用のコスト面については、令和2年の調査では病床数400床以上の大病院では約91%が電子カルテを導入しているのに対し、診療所の導入率は、50%を切っています。この結果からも、規模の小さな病院ほど電子カルテの導入にかかるコストの負担が大きいと考えられます。
※参考:厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」

マイナンバーカード健康保険証導入のメリットと注意点

電子カルテ

医療機関のDX化を推進する取り組みとして広く注目されているのが、マイナンバーカードの健康保険証化です。
2021年にはマイナ保険証が本格運用されることになりました。さらに政府は医療機関に対し2023年4月までにマイナ保険証が利用できるシステムの導入を原則義務付けました。
マイナ保険証のメリットは、様々な情報が1枚のカードに集約されている点にあります。
例えば、マイナ保険証には過去の特定健診結果や受診記録、薬剤処方の情報がひも付けられています。マイナ保険証を提示された医療機関は、患者の体の状態を正確に知ったうえで診察に当たれるのです。患者も支払った医療費の情報はマイナポータルで閲覧でき、e-Taxと連携すれば医療費控除の手続きも簡略化できます。
またオンライン資格確認ができるのも大きな魅力です。受付時間が短縮される他、高額療養費制度を利用する際は事前申請がなくとも限度額以上の支払いがその場で免除されます(情報提供に患者側が同意する必要があります)。
保険証の切り替えや変更手続きが不要な点もメリットです。マイナ保険証ならばライフイベントの変化後もそのまま使えます。なお、2023年4月から12月までの間なら、マイナ保険証を使ったほうが窓口費用が安くなるという利点もあります。
一方、マイナ保険証には注意点もあります。まず、医療機関に専用のカードリーダーが必要な点です。政府はカードリーダーの普及を進めるため補助金を出していますが、導入後のランニングコストについて懸念を示す医療機関もあります。
患者側からは、個人情報が流出するのではないかという不安の声が出ています。システムがサイバー攻撃されれば、個人情報が第三者の手に渡ってしまいます。
システムダウンのリスクがある点も注意しなくてはなりません。自然災害やアクセス数の急増によってシステムが使えなくなる懸念があります。

患者にとって便利で安心できる受診環境づくりを

電子カルテ

電子カルテは病院の規模によって普及率が異なります。また2023年4月時点で医療機関によるマイナ保険証カードリーダーの申請率は、厚生労働省によると92.2%まで上がりましたが、運用率は68.2%にとどまっています。どちらのツールに対しても早急な整備が望まれる中、患者が安心して受診できる環境づくりにも注目していきましょう。
例えば、デジタル化された個人情報や受診記録を扱う際は、情報管理を徹底することが求められます。他にも、診療中の話し声、面会時の会話から大事な個人情報が漏れてしまうことにも注意しなくてはなりません。医療施設内でのプライバシーに配慮した環境づくりは、患者の安心感につながります。医療のデジタル化とともに施設の環境整備についても考えていきたいですね。

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