2025年問題は宿泊施設にも! インクルーシブなユニバーサルツーリズムで重宝される施設づくり

2025年問題

2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になることで、様々な社会問題が生じるといわれています。これらの問題は2025年問題と呼ばれています。2025年問題は、福祉や介護の分野だけの問題ではなく、観光業界にも大きく影響すると予想されます。超高齢社会に求められる観光の形、それがユニバーサルツーリズムです。ユニバーサルツーリズム市場の需要拡大に伴い、宿泊施設にはハード、ソフト両面のバリアフリー化が求められます。

この記事では、ユニバーサルツーリズムとはどのようなものか解説したうえで、市場需要に対応するための施設づくりとそれをサポートする建材を紹介します。

市場規模が拡大する ユニバーサルツーリズムとは?

まずは、国土交通省観光庁によるユニバーサルツーリズムの定義を見てみましょう。

「すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり、高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行」
※参考:観光庁「ユニバーサルツーリズムについて

ユニバーサルツーリズムは国土交通省の主導で2012年頃から普及活動が進められてきた取り組みです。背景には日本の高齢化があります。総務省統計局の調べによると、日本の65歳以上の割合は2023年10月時点で29.1%。日本人口の約3分の1は高齢者で、今後この傾向は加速すると考えられます。さらに高齢になれば障がいを持つ人も増えると予想できるでしょう。
高齢者や障がい者の存在は、観光業界において無視できない規模に拡大しているのです。また高齢者、障がい者は旅行時に家族や友人と同伴することが多い傾向にあります。そのため障がいのある人と健常者が区別なく、誰もが「共に」楽しめるインクルーシブ(※)な環境づくりが求められています。

(※)インクルーシブとは、障がい者や健常者、経済的状況、国籍や年齢・性別などのあらゆる区別がなく共に参加できる状態を指す言葉です。

これらの要因から考えると、年齢や障がいの有無などにかかわらず、すべての人を旅行対象とするユニバーサルツーリズムの市場規模は今後拡大していくことが予想されます。

ユニバーサルツーリズム実現のために

ユニバーサルツーリズムを実現するためには、ツアーの各所にバリアフリー環境を整えていく必要があります。特にツアー選びの中で大きなポイントとなる宿泊施設にはユニバーサルツーリズムを可能にする環境整備が求められます。
環境整備といえば段差をなくすなどの施設(ハード)面に目が行きがちですが、心のバリアフリーも同時に実行していく必要があることを忘れてはいけません。

たとえば、2023年に国土交通省が障がい者の方を対象に実施した「ユニバーサルツーリズムに関する調査業務 報告書」では、旅行の際、観光施設(宿泊施設、飲食店等)がどのような面でバリアフリー化されていることを望んでいるかという問いに対して、下記のような回答結果が報告されています。

・トイレ…………29.5%
・客室……………23.7%
・出入口・通路…23.2%
・障害のある方に対してのスタッフの思いやりや気遣い…35.9%

このような結果からも、ユニバーサルツーリズムの実現を目指す施設において大切なのは心のバリアフリーであると言われています。
心のバリアフリーとは、多様な特性や考えを持つ人が、相互理解のためにコミュニケーションをとり、支え合い、心の障壁をなくすことです。
国土交通省では、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を創設し、心のバリアフリー化への取り組みを推進しています。この認定を取得することは、宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインに基づく登録制度」(※)の必須項目でもあるので、認定取得が推奨されます。

(※)経営の健全化を図るための制度。観光庁による補助事業の評価基準として採用される予定ですので、登録をしておくと採択時には有利に働く可能性があります。また登録自体が各種自治体が行う補助事業申請時の必須条件となっている場合もあります。

心のバリアフリー認定取得のために

2025年問題

心のバリアフリー制度では、ハード面とソフト面両方のバリアフリーはもちろん、「バリアフリー情報の発信を促進している点」に特徴があります。仮に宿泊施設側でバリアフリー整備が整っていたとしても、旅行者がその情報をキャッチできなければユニバーサルツーリズムの実現には至らないからです。

では、心のバリアフリー認定制度の基準となる3つの条件をご紹介します。
1.施設のバリアフリー性能を補完するための措置を3つ以上行っている
2.バリアフリーに関する教育訓練を年1回以上行っている
3.自社サイト以外のウェブサイト(宿泊予約サイト、グルメ予約サイトなど)で設備のバリアフリーに関する情報を積極的に発信している

※参考:観光庁「観光施設における心のバリアフリー認定制度

これらすべての条件を満たさなければ、認定は取得できません。
まずは、高齢者や障がいのある人が施設内を安全かつ快適に利用できることを目指していきましょう。
たとえば廊下、階段などの動線には、安全に移動ができるように体を預けられる手すりの設置が求められます。ただ、旅館などに多い和室や窓際など、壁がなく手すりが設置できない場所もあります。その場合は、床に直付けできる手すりを使うとバリアフリー対策がしやすいでしょう。
また、足元の不安定な高齢者はスリッパをはくことで転倒や事故につながる恐れがあります。そのため、客室や廊下の床材は滑りにくく、躓きにくいものに変えることも大事です。車いすで使用される場合も想定し、表面が傷つきにくく、お手入れしやすい床材を選ぶこともポイントです。
宿泊業の超高齢社会への取り組みとして、インクルーシブな条件を整え、多様な顧客に選ばれやすい宿泊施設づくりを目指しましょう。

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