多目的ホールの快適空調:『ユカリラ』が実現する心地よい空間

  • ◆課題

    ・多目的ホールの夏の暑さ対策が急務
    ・熱中症リスクの増加
    ・多目的ホールでの活動は、暑さにより控えることがあった

    ◆解決策&ソリューション

    ・多目的ホールにDAIKENの全空気式床輻射冷暖房システム『ユカリラ』を導入

    ◆効果

    ・多目的ホールの快適で心地よい温度環境の実現(夏は涼しく、冬は暖かい)
    ・熱中症リスクの低減
    ・多目的ホールを季節を問わず利用可能に(子どもたちの創造的な活動の幅が広がる)
    ・児童会館の利用者数の増加(3年平均1.5倍、最大2倍)

札幌市光陽児童会館|北海道札幌市

札幌市光陽児童会館は、札幌市北区新琴似に位置する児童福祉施設。札幌市の児童会館事業は、1949年に日本初の公立児童会館として中島児童会館が開館して以来、70年以上にわたり子どもたちの健全育成に貢献してきました。

光陽児童会館も、この長い歴史の中で、地域の子どもたちの居場所として重要な役割を果たしてきており、現在は、遊びを通じた学びや異年齢交流、放課後児童クラブ、子育てサロンなど、多様な事業を提供しています。

建物は、光陽小学校の改築に伴い、令和6年(2024年)4月に移転。多目的ホール、プレイルーム、集会室、クラブ室の4室を備えています。多目的ホールには、DAIKENの全空気式床輻射冷暖房システム『ユカリラYGSタイプ』が採用されました。

本記事では札幌市役所にて児童会館施設計画にたずさわる片桐氏へのインタビューを通じて、児童会館の歴史、そして新施設への移転にともなう全空気式床輻射冷暖房システムの採用理由、設置後の効果・感想などについて詳しく紹介します。

  • お話を聞いた方

  • 片桐 有也氏
  • 札幌市子ども未来局 子ども育成部 子ども企画課
    施設保全担当 係長
    片桐 有也 氏

70年の歴史を紡ぐ札幌市の児童会館:進化する子どもの居場所

片桐氏

札幌市の児童会館は、全国的に見ても非常に歴史が長いです。1949年、日本初の公立児童会館である中島児童会館から始まり、2025年1月現在では111館が運営されています。

児童会館は、0歳から18歳までの子どもたちがいつでも誰でも利用できる施設になっています。また、児童会館では留守家庭の児童を対象とした放課後児童クラブも実施しており、近年の共働き家庭等の増加に伴い、さらに需要が高まっています。

各児童会館には、プレイルーム、集会室、クラブ室、多目的ホールなどの多様な活動スペースがあります。
また、多目的ホールでは、スポーツ活動やダンスなどができます。さらに、学習支援、工作、昔遊び、食育活動などの多様な健全育成プログラムを提供しています。地域団体と協力してイベントを開催することもあります。

小学生だけでなく、中高生の利用促進のため、「ふり→たいむ」という中高生向けの夜間利用時間をほぼすべての児童会館で設けています。

片桐氏

多くの児童会館に多目的ホールや体育室といった体を動かせる屋内施設があることは、全国的に見ても特長的だと思います。

札幌市としては、児童会館を子どもたちの健全育成と地域コミュニティの中心として位置づけています。近年は施設の刷新や新しい技術の導入により、より快適で魅力的な空間づくりに取り組んでいます。

近年の児童会館の移設と複合施設化:学校とのゼロ距離が実現する安全性と利便性

片桐氏

札幌市の児童会館は、近年、移設と複合施設化の流れが進んでいます。背景には、札幌市の政策として、小学校の建て替えのタイミングに合わせて、児童会館を学校と複合化させる取り組みがあります。

複合化の最大のメリットは「ゼロ距離」という概念です。これは、児童が学校の敷地を出ることなく、放課後の居場所である児童会館に移動できることを意味します。

従来は、児童が学校から外に出て数分歩いて児童会館に行く必要がありましたが、これには事故などの心配がありました。ゼロ距離化により、保護者の安心感が大幅に向上しています。

さらに、一部の施設では学校と児童会館に加えて、まちづくりセンターも複合化されています。これにより、児童が学校で授業を受けた後、児童会館で過ごし、同じ敷地内でまちづくりセンターでの習い事に参加するといった、シームレスな活動が可能になっています。この複合化は、保護者の視点からも非常に安心できる環境を提供しています。

光陽児童会館

夏の暑さ問題に直面:大空間における従来型空調の課題

片桐氏

日本の中では涼しいと言われる札幌でも近年の気候変動の影響か、夏場の暑さ対策が大きな課題となっていました。

従来の児童会館では冷房設備が整っていないところも多く、子どもたちが汗だくになり過ごすことも珍しくありませんでした。

そもそも札幌市ではホールや体育館にエアコンが設置されていない会館がほとんどです。
また、冷房設備が設置されていても、特に多目的ホールのような大空間では冷房効果に課題があり、天井が高いため従来の天井からの吹き下ろすタイプのエアコンでは快適とまでは言えない状況でした。

大きい扇風機を使っている児童会館もありますが、バドミントンや卓球などは扇風機の風でできなくなる。そうすると、扇風機を切ってサウナ状態でやることになり、熱中症リスクも高まる、という悪循環にもなっていました。

子どもたちは児童会館で長い時間を過ごすことが多く、14時半頃に来て、最長19時までいる子どももいます。

そのため、「2つ目の我が家」のように感じられる、リラックスできる空間を作ることが大切だと考えています。学校とは違う雰囲気にすることで、緊張せず、自宅にいるときと同じようにくつろげる環境を目指しました。

その意味でも児童会館で快適に過ごせる空調設計というのが児童会館の移転・改築に際しての重要なテーマでした。

通常の空調整備を検討しながらも、多目的ホールや体育室などの大空間では別の手段を探しており、そこで出会ったのが、DAIKENの全空気式床輻射冷暖房システムでした。

光陽児童会館

全空気式床輻射冷暖房システム『ユカリラ』の採用:3つの決め手

片桐氏

全空気式床輻射冷暖房システムについては、正直なところ、最初は知りませんでした。
先述のとおり、多目的ホールの冷房については以前から課題を持っていましたが、今回、設計業務を委託していた設計者さんからこのシステムを提案されました。

話を聞くと、床下に風を送り、床を冷やしたり暖めたりすることで冷暖房ができる空調システムだと。これは面白そうだなと思いました。ただ、採用を考える時には三つほど心配なことがありました。

一つ目は予算面です。新しいシステムを入れると施工費が跳ね上がるのではないかと心配しました。しかし、よく話を聞いてみると、この現場の場合、工夫を重ね従来のシステムとほぼ同額で導入できることがわかりました。これは嬉しかったですね。
*注 施工費は現場ごとに異なります。事前によくご確認ください。

二つ目は床材との相性です。児童会館では利用者のケガ防止の観点から、ささくれしにくい床材を使っていますが、このシステムと一緒に使えるかどうか心配でした。ただ、この点も床暖房パネルほど高温にならないため、今回選んだ床材と組み合わせても大丈夫だとわかり、これも安心できました。

三つ目はメンテナンス性です。床下に熱源がないため、将来的なメンテナンスや更新の時に床を剥がさなくていいという点が魅力的でした。このシステムは基本的にエアコンの更新だけで済むので、すごく良いなと思いました。

これらの懸念点がクリアできたので、「よし、導入してみよう」と前向きな気持ちで採用を決めました。

公共施設に新しい技術を入れる場合、最終決断には勇気がいることが多いのですが、このシステムはやってみる価値はあると思わせる製品でした。

片桐氏

驚きの体感と効果:全空気式床輻射冷暖房システムがもたらす心地よい室内環境

片桐氏

改築後に実際体感してみて、個人的には正直驚きました。多目的ホールに入った時、すごく気持ちがよかったのです。
夏の場合は、かなり心地よい空間になっていました。涼しい空間にいる感覚で、冷たい風が直接当たっている感じはなく、そよ風がさらっと通り抜けていくような、そんな心地よさがありました。湿気を感じなかったのも良かったですね。涼しいけどちょっとムシムシするわけでもなく、ちょうどいい、カラッとした感じ。まったく不快感のない空間でした。

また、私は参加していないのですが、夏の大人数が入るイベントでも、空間が全然暑くなかったという話を聞きました。大人数が集まると、通常は人の体温や熱気で熱くなりがちなのですが、それがないというのはこれまたうれしい効果でした。

光陽児童会館

冬の場合は、現在進行形(*注 取材当時は設置後初めての冬1月)ですが、先日、温度測定の結果を見せてもらいました。当初の想定通りに、空間がまんべんなく、暖かい空間、温度になっていました。個人的にはこれならば問題ないと思っています。

測定は空間を九つの箇所に区切り測定していますが、すべての箇所で高さが変わってもほぼ一定の温度になっていました。これも本当にいい効果が出たなというところです。

それから、冷暖房をスタートして設定温度にいたるまでの立ち上がりのスピードにも驚きました。北海道の冬は外気がとても冷たいので、暖まりにくいのですが、想定以上の速さでした。

温熱環境の最適化がもたらす多様な可能性:児童会館の新たな未来

片桐氏

全空気式床輻射冷暖房システムを導入して、本当にいろいろな可能性が広がったなと感じています。

まず、多目的ホールでの夏場の熱中症リスクがかなり下がったのが大きいです。これまでは特に暑い日はホールでの活動を控えめにすることもありましたが、これからは夏場でもいろいろ催しができるのではと思っています。
例えば、今までならば暑いという理由で多目的ホールではなく、エアコンのあるプレイルームで何かやろうと考えていたものが、今後は多目的ホールでいろいろできるようになります。

バドミントンや卓球など、スポーツ活動ももっと活発にできるようになると思います。大人数が入るイベントもしかりです。多目的ホールは、児童会館で使用していない時間帯は地域の方々も利用できるので、夏場でも地域のイベントや集会をもっと快適に開催できるようになりそうです。

大きな鏡(姿見)もつけているので、ダンスの練習などにも使ってほしいと思っています。

涼しい環境で思いっきり体を動かせるようになったので、子どもたちの創造的な活動の幅も広がりそうです。

光陽児童会館

冬場も、床暖房効果があるので、小さな子どもたちや子育てサロンの利用者からもとても好評です。床が暖かいというのは、床に近い動きの多い小さなお子様や保護者に本当に喜ばれます。冬でも床に座って遊んだり、活動したりするのが快適になりました。

快適な温度環境のおかげで多目的ホールが本当の意味で「多目的」に使えるようになったと感じています。

季節を問わず、いろいろ活動ができる空間になったので、これからどんな面白い使い方ができるか、現場の職員の方々がどんなアイデアを出してくれるか、本当に楽しみです。

札幌市の新しく生まれ変わった児童会館では、利用者数が3年平均で1.5倍、多いところだと2倍になるデータが出ています。快適な温度環境が整ったことは、増加の要因の一つだと思っています。

これからもっといろいろ子どもたちが来てくれて、楽しい活動が増えていくことに期待していますし、児童会館がより魅力的な場所になっていく可能性を感じています。

 

札幌市光陽児童会館

●施設データ
札幌市光陽児童会館

札幌市光陽児童会館は、札幌市北区新琴似にある児童会館。児童の文化的素養を培い、その福祉を増進することを目的とした児童厚生施設として運営されてきました。遊びや異年齢交流、放課後児童クラブ、子育てサロンなどを提供。
2024年4月、光陽小学校の改築に伴い新施設へ移転し、多目的ホールやプレイルームなど4室を備えています。

注)掲載内容は取材当時(2025年1月)のものです。
  生産中止品も掲載されている場合があります。

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