車椅子ユーザーを含めた患者の動線の見直しを 顧客満足を追求した病院設計

車椅子

超高齢化が進む日本においては平均寿命も延び続けており、さまざまな医療機関を訪れる方の中には車椅子を利用される方も多くいらっしゃいます。けがや病気の時だけでなく日常的に車椅子を使用し生活している人も増えていることから、あらゆる施設、特に病院・クリニックには車椅子で利用しやすくすることが求められます。
そこでうまく取り入れたいのがユニバーサルデザインです。

今回の記事では、車椅子ユーザーをはじめとしたあらゆる患者様が院内をスムーズに移動するための動線の見直し・改善や、ユニバーサルデザイン実現をサポートする建材もご紹介します。

院内にユニバーサルデザインを取り入れるべき理由

医療の進歩や生活水準の向上、健康意識の高まりによって多くの人が健康に長寿でいられるようになりました。しかし加齢による全身の機能の衰えは止めることができません。そのため、足腰の筋力の衰えにより車椅子を利用する人も増えています。また病気への対処ばかりではなく、血圧や認知機能、視力や聴力など衰えつつある機能を維持するためのヘルスケアとして、医療機関の役割も変わりつつあります。

健康寿命が延びたこと自体は喜ばしいことですが、超高齢社会にシフトした現在、それを受け入れる社会への変革が求められています。具体的には車椅子を利用する方など高齢者に配慮して、建物の段差や廊下の狭さの解消、乗降のための余地を十分にとった駐車スペースなど、施設の環境整備がそれにあたります。1994年に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(通称ハートビル法)」が施行されたことで、社会意識も大きく変わってきました。

また、「高齢者や障がい者に配慮した」とされる施設面での対応は、そういった人たちだけでなく結果的に一般の人にも優しく誰にも受け入れやすいもの、との理解が深まりました。「障壁を取り除く」のではなく「はじめから障壁を作らない」というコンセプトにより生まれたのが「ユニバーサルデザイン」という概念です。ユニバーサルデザインは、すべての利用者の満足度を高めることができる考え方として、社会に浸透していきました。

院内動線のチェックポイントは?

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高齢者や車椅子ユーザーの利用がさらに増えると予測される医療施設において、どのような点に注意すべきか考えてみましょう。

まずは利用するすべての居室、設備(受付・診察室・トイレなど)を結ぶ動線で、安全かつスムーズに移動できるかを考えます。患者様目線で、受付から待合室・診察室・会計・処方箋受取などすべての動線においてわかりやすくスムーズに移動できるよう計画しましょう。次にどこへ移動すればよいのかわかりやすいようにシンプルな動線計画に加えて、視認性の高い案内表示も必要です。

バリアフリー新法では車椅子利用者が通行できる廊下の有効幅員を80cm、通路幅は90cm以上とされていますが、実際スムーズに通るには120cm以上は必要です。角の部分で車椅子を回転させるにはさらに余裕を持たせて140cmは必要でしょう。出入口には段差を設けず、診察室などへの開口は80cm以上必要です。建具は開き戸よりも引き戸がおすすめです。介助者が付き添う場合にも、またスタッフによる介助のしやすさにも配慮することで、よりスムーズに危険やストレスを感じることなく施設を利用することができ、利用者の満足度は高まるでしょう。
床面に段差を設けないのはもちろんのこと、滑りにくい床材を使うなどすれば車椅子の利用者のみならず、誰にも優しい配慮となり、より利用満足度が高まるでしょう。

立った姿勢で利用するカウンターは床面から100cm程度ですが、車椅子で利用しやすいカウンターの高さとしては上端が床面より70cm程度、下端が60~65cmとされています。車椅子の場合、カウンター下に足の入るスペースが必要です。45cm程度の奥行きを持たせるよう計画しましょう。立位で利用する方のためには杖を立てかける場所や、倒れないようひっかけるくぼみなどをつけるとより利用しやすくなります。

診察の順番や会計や処方箋受け取りの呼び出しは音声によるほか、聴覚に障害のある方に配慮して電光掲示板やバイブレーターなどの伝達手段を併用するのが望ましいでしょう。

特に配慮したいトイレのユニバーサルデザインと清潔さ

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車椅子利用者でなくとも、また医療施設以外の場所においても、トイレの清潔さと使いやすさは満足度を高める重要な要素です。
なによりも車椅子でのトイレ利用に大きく影響するのは、開口部の大きさと建具の種類です。建具のひき残しを除いて80cm以上(理想的には90cm)の有効開口寸法が確保できるよう計画しましょう。引き戸がおすすめですが、スペースの都合などで大きく開口部をとれないケースもあります。その場合、引き戸と開き戸の機構を組み合わせて大きく開口できる画期的なドアもあるため、導入を検討してみるのも良いでしょう。大きく開口されることで介助がしやすくなり、また掃除もしやすく清潔を保てるという利点もあります。

これからの病院・クリニックにおいては、より一層、高齢者・車椅子ユーザーの利用を考えた施設環境づくりが重要となります。動線の見直しやユニバーサルデザインの導入などをすることで、顧客満足を追求した病院設計を目指しましょう。

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