「木育」が地球環境を救う? 子どもが木のぬくもりを身近に感じられる学習環境

木育

日本の国土は、約3分の2を森林で占めていて、その約4割が植林による人口林です。そのため、1955年時点では国内の木材自給率は94.5%ありましたが、その後徐々に海外の安価な木材の輸入が増加し、2000年には木材自給率が18.2%まで落ち込んでしまいました(林野庁「木材需給表」)。

使うために育てた森林は伐採・植林のサイクルを保持することで活性化し、多くの二酸化炭素を吸収して地球温暖化の抑制にも役立つのですが、国産材の需要が減ったことで数多くの森林が放置された状態となっています。
加えて、近代化やライフスタイルの変化によって子どもが木にふれる機会も減少し、木の文化に対する理解や環境問題などを身近なものとして捉えづらい状況になっていました。

このような状況を変えるため、北海道では2004年に子どもたちが木とふれあい、木に学び、木と生きる「木育」という新しい教育概念が生まれました。また、2005年には日本の木材利用を拡大するための取り組みとして、林野庁による「木づかい運動」が始まっています。そして、それらによる効果もあり、2020年には木材自給率が41.8%まで回復しています。

今回は、この「木育」の概要や全国で取り組まれている事例に加え、教育現場に木育を取り入れる際の方法についてもご紹介します。

木育とは

2004年に「木育」の取り組みを始めた北海道木育推進プロジェクトでは、「木育」について下記のように説明しています。

木育とは、子どもをはじめとするすべての人が『木とふれあい、木に学び、木と生きる』取組。子どもの頃から木を身近に使っていくことを通じて、人と、木や森とのかかわりを主体的に考えられる豊かな心を育むこと。
引用:北海道水産林務部林務局林業木材課「北海道の「木育(もくいく)」を進めるために」

木育では以下のような社会づくりを目指しています。

●木とふれあう

木の温もりを身近に感じ、木とふれあう経験を通して、人や自然に対する思いやりの気持ちを育みます。

●木に学ぶ

木を通じて古くから受け継がれた地域の文化や特性などを学びます。例えば、北海道では、木や森と人のつながりや、大自然とともに生きてきた人々の暮らしを知ることで、木の文化を育んでいます。

●木と生きる

人と木が共存していく社会を目指します。生活環境の変化で、人と木の関係性が希薄になっている今、そのつながりを回復させて地球環境を守り、持続可能な社会をつくることが目標です。

木育で木の温もりを身近に感じてもらうことにより、子どもたちをはじめとした多くの人に木の素晴らしさや魅力を知ってもらうとともに、環境問題を学ぶきっかけになることなどが期待されています。

全国における木育の事例

木育

現在、全国で「木育」をはじめとした「木づかい運動」による木材の普及活動が進められています。ここではその取り組みの中から、4つの事例をご紹介します。

●北海道「木育マイスターの育成」

木育の先駆者でもある北海道では、民間において木育の活動を広げるため、「木育マイスター」を育成。木育活動の企画立案や地域活動のコーディネート、アドバイスなどができる人材を育て、森林資源の循環利用や産業振興といった取り組みを促進させています。

●茨城県「木育を活用した地域による子育ての取組」

茨城県の「一般社団法人子育てネットワークままもり」では、子育てに悩む母親を支援する方法の一つとして、木のおもちゃを使った取り組みを行なっています。豊かな想像力を育みながら、親子や子どもとシニア世代が交流できるように、木のおもちゃを上手く活用しています。

●教育現場において、学習机、その他木材を利用した取り組み

小中学校の学習机を木材で作る取り組みが、多くの県で行われています。群馬県では、100年以上もの歴史ある学校林(基本財産の形成や児童・生徒に対する環境教育、体験活動などを目的に学校が所有する森林)の間伐材で机の天板を制作し、新入生に寄贈。生徒はその天板を卒業まで使い、卒業時には証書とともに6年間の思い出の品として持ち帰れるようにしました。

教育現場では、学習机以外にインテリア家具や木のおもちゃなども制作。山形県の小学校では、津波による浸水が想定される小学校の津波避難道を、子供たちが自分の手で地元産の木材チップを撒いて整備しました。この取り組みは避難の重要性を考えるきっかけづくりとなり、木材に様々な活用方法があることを学ぶ良い機会となりました。

●建物の内装を木質化

長野県と大阪府の幼稚園や保育園、小学校では、地域材を保育室や廊下などの床や壁に取り入れて、木のぬくもりを感じる空間づくりを実現。間伐や森林についての学習も行い、子どもたちが生活と木の関りを学ぶ機会をつくりました。

上記の他にも全国各地で木育に関する様々な取り組みが行われており、木の文化に対する理解と継承に役立てられています。

「木育」をしやすい教育環境に

木育

自然とふれあう機会が減少している今、教育現場では木育が求められています。特に自然の少ない都市部では、子どもの頃から木にふれる機会をつくるため、学校のような身近な場所に木質建材を採用したいところです。その際に、国産材や地域産材を取り入れることができれば、地場産業への理解度がより高まり、地域の活性化にもつながります。

多くの人が利用する学校や文教施設の建材には、メンテナンス性や耐久性の高いものが求められます。現在は木質建材でも高機能な製品が存在し、地域産材を活用できるものもあるのでチェックしてみましょう。

木質建築の施設で「木育」を受けることができれば、より木に対する親しみがわき、地球環境の保護に向けた意識も高まることでしょう。学校施設においてはぜひ積極的に採用することを検討してみてください。

保育園・幼稚園の現場での木育については下記の記事で詳しくご紹介していますので、こちらもご確認ください。
「木育を保育園・幼稚園からはじめよう! 地産地消の木のおもちゃで五感を磨き、SDGsにも貢献」

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