開放的な木造空間でも温度ムラのない快適さを実現!
喬木村「Co-creation space PERCH」の“居たくなる場所”を支える『ユカリラ』

喬木村「Co-creation space PERCH」
  • ◆課題

    ・開放的かつ可変的な空間を、空間体験を損なわない、一体的に冷暖房できる環境に
    ・温度ムラや風による不快感を抑え、長く滞在したくなる快適な空間に

    ◆解決策&ソリューション

    ・交流棟の開放的かつ可変的な空間を一体的に冷暖房できる『ユカリラ』を採用

    ◆効果

    ・開放的かつ可変的な空間を一体的に冷暖房できることで、利用者の活動を妨げない温熱環境を実現。
    ・冬は「靴を脱いで過ごしたくなるほどの心地よさ」、夏は「風が直接当たらない自然な涼しさ」で、長く居たくなる快適性を実現。

長野県下伊那郡喬木村に誕生した「Co-creation space PERCH(パーチ)」は、宿泊機能を備えた共創施設です。地域住民の交流拠点であると同時に、移住体験や新たな挑戦のきっかけを生み出す場として、地域に新しい価値を提供しています。

設計を手がけたのは、長野県飯田市を拠点とする株式会社鈴木建築設計事務所。木のぬくもりを感じる開放的な空間づくりと、高い快適性の両立を目指した本施設では、DAIKENの床下ダクトレス全空気式 床輻射冷暖房システム『ユカリラ』が採用されました。

今回は、設計を担当した城田祐輔氏に、施設づくりの背景や空間設計のコンセプト、そして『ユカリラ』を採用した理由について伺いました。

施設名のPERCH(パーチ)

施設名のPERCH(パーチ)は“止まり木”を意味し、多様な人が気軽に立ち寄り、新たな交流や挑戦が生まれる場所という想いが込められている。

  • お話を聞いた方

  • 城田 祐輔 氏
  • 株式会社鈴木建築設計事務所
    城田 祐輔 氏
    長野県飯田市を拠点に、公共施設や地域に根ざした建築設計を手がける。喬木村共創施設 PERCHの設計を担当。

地域課題に応える、「学びと挑戦」の共創施設

―まず、このPERCHは単なる宿泊施設ではなく、「共創施設」という位置づけになっています。どのような背景から、このプロジェクトが始まったのでしょうか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
喬木村として大きかったのは、やはり人口減少という課題です。地域外から人を呼び込み、喬木村の魅力を知ってもらうことで、将来的には移住につながるきっかけを作りたい という思いがありました。また、村内には宿泊できる施設がほとんどなく、以前あった合宿用の施設もなくなってしまっていたんです。そのため、滞在しながら地域の魅力を体験できる場所が必要だという背景がありました。

―地域課題への応答としての建築だったわけですね。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
そうですね。ただ、単に泊まれる場所をつくるだけでは意味がないとも思っていました。喬木村からは「学びと挑戦」というテーマが示されていて、多様な人が集まり、交流し、新しいことに挑戦できる場所にしてほしいという要望がありました。宿泊施設でありながら、地域の人の日常にも自然に入り込んでいくような場所を目指しました。

―実際、地域との距離感が近い施設ですね。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
周辺には保育園、小学校、中学校、運動公園などが集まっていて、この施設もその流れのなかにあります。夕方になると学校帰りの小中学生がふらっと立ち寄って、親御さんを待っていたりするんですよ。そういう使われ方を見ると、“地域の日常に溶け込む場所”という当初の狙いが、ちゃんと形になっているなと感じます。

―“挑戦”というテーマについてはいかがでしょうか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
例えば、施設内にはカフェやキッチンスペースがあります。将来的にお店を始めたい方が、いきなり店舗を持つのはハードルが高いですよね。まずここで試してみる。そんなふうに、最初の一歩を踏み出しやすくする場所になればと思っています。“大きな挑戦”でなくても、“ちょっとやってみたい”を受け止められる場でありたいですね。

施設内のカフェやキッチンスペース

施設内のカフェやキッチンスペース

木造×大開口×高断熱。開放性と快適性の両立を目指した設計

―空間に入った瞬間、木のぬくもりと開放感がとても印象的でした。この建築では、どのような設計思想を持たれていたのでしょうか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
この村には、木造の現しでつくられた公共施設があまりなかったんです。公共施設というと、どうしても機能優先で少し無機質な印象になりがちですが、今回は人が集まり、長く過ごす場所です。だからこそ、木の柔らかさやぬくもりをしっかり感じられる建築にしたいと思いました。この規模なら木造で十分成立すると考えましたし、地域にこういう建築があること自体にも意味があると思ったんです。

―大きな開口から景色が広がっていて、とても気持ちのいい空間ですね。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
せっかくこの立地ですから、天竜川や喬木村の豊かな自然をしっかり取り込みたいと考えました。光が入って、外とのつながりを感じられる空間にしたかったんです。一方で、開放感だけを優先すると快適性が犠牲になってしまうので、そこはしっかり性能を確保しています。開口部には高性能なサッシを採用し、熱交換器や断熱材なども含めて、断熱性能としては十分に余裕を持たせました。

喬木村の豊かな自然を取り込む大開口

喬木村の豊かな自然を取り込む大開口

開口部詳細開口部詳細

熱交換器熱交換器

―デザインとしては、地域施設というより都市部のカフェやワークスペースのような洗練された印象もあります。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
そこは意識しました。木を主体にしながら、仕上げ材や家具には黒をポイントで入れて空間を引き締めています。地方の自然豊かな場所にいながら、室内では都市的な居心地のよさや過ごし方も体験できる。そういうギャップもこの施設の魅力になると思いました。地域施設だからといって、素朴なだけの空間にする必要はないと思っています。

カフェやワークスペースのような居心地

木を基調としながら、仕上げ材や家具に黒をアクセントに取り入れることで空間を引き締め、都市部のカフェやワークスペースのような居心地のよさも意識されている。

―使い方の自由度も高いですね。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
そうですね。会議やイベント、講演会、ワークショップ、音楽イベントなど、本当にいろいろな使い方を想定しています。空間側が用途を決めすぎず、人の活動に応じて変化できることも大切にしました。

コミュニティホール

1Fコミュニティホール。最大50席を収容できる吹き抜けのホール。間仕切りにより最大6つの空間での活用も可能。

大空間だからこそ問われた、温熱環境のあり方

―ここまで開放的な空間だと、温熱環境の設計はかなり難しかったのではないでしょうか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
そうですね。断熱性能はしっかり確保していますが、それだけで快適性がすべて解決するわけではありません。吹き抜けもありますし、空間の使い方も日によって変わります。一般的な空調だと、場所によって温度差が出たり、風が直接当たったりしてしまう。設備として機能していても、“ここに居たいか”という意味では違和感が出てしまうことがあります。

―快適性を、単なる性能ではなく“体験”として考えられていたんですね。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
そうです。この施設は、ただ用事を済ませて帰る場所ではなく、人が滞在し、くつろぎ、会話し、時には新しい何かを始めることができる場所です。そのため、空間の居心地は非常に重要な要素となります。建築としてせっかく気持ちのいい空間ができても、設備がその体験を損なってしまっては意味がない。そこはかなり意識しました。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏

“設備が主張しない快適性”として『ユカリラ』を採用

―そのなかでDAIKENの『ユカリラ』を採用された決め手は何だったのでしょうか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
大きかったのは、建築空間の見え方や居心地を邪魔しにくいことです。一般的なエアコンの場合、どうしても壁面に室内機が出てきたり、運転音や風の当たり方が気になったりします。この施設では、木の架構や大きな開口、外の景色を含めて空間を感じてほしかったので、設備が前に出すぎないことは重要でした。ユカリラは見た目もすっきり納まり、音や風の不快感も少ないため、この建築の心地よさと相性がよいと感じました。

ユカリラ

窓際の床に配された『ユカリラ』の吹き出し口(シルバーのガラリ部分)

ユカリラ

―実際の使われ方として、快適性への反応はいかがですか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
冬場は、本当に“土足禁止にしてもいいんじゃないか”なんて冗談まじりに話すくらい、心地よい暖かさがあります(笑)。床からじんわりと熱が伝わってくるので、一般的な暖房のように空気だけが暖まる感じではなく、体全体が自然に包まれるような感覚なんです。実際、“裸足で過ごしたくなるね”という声もあって、長く居たくなる快適さがあると感じています。床からじんわり暖かさが伝わってくるので、一般的な暖房とは感覚が違いますね。長く過ごしたくなる快適さがあると思います。

―夏場はいかがでしょうか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
夏もしっかり冷えますね。それでいて、一般的な空調のように風が直接当たって不快になる感じがありません。ちょうど今日(取材当日:5月中旬)も、5月とはいえ外はかなり暑くて、さきほど少し汗ばんだ小学生たちが学校帰りに入ってきたんですが、“ああ、涼しい”“気持ちいい”と自然に言いながら中に入ってきたんです。あの光景はすごく印象的でしたね。この場所が、ただの施設ではなく、子どもたちにとっても自然と立ち寄りたくなる“居場所”になっているんだなと感じました。

PERCH

取材当日(5月中旬)も学校帰りの小中学生が気軽に立ち寄っていた。

―今回、PERCHで『ユカリラ』を導入されてみて、設計者としてどのような手応えを感じていますか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
非常に満足しています。建築として目指していたのは、木のぬくもりや開放感を感じながら、人が自然に集まり、長く過ごしたくなる空間でした。その意味で、設備が空間の体験を邪魔せず、しっかり快適性を支えてくれているのは大きいですね。実際に子どもたちが自然と立ち寄ったり、利用される方が心地よさを感じながら過ごしている様子を見ると、狙っていた空間がきちんと機能していると感じます。

―今後の設計にも活かしていきたいと感じますか。

株式会社鈴木建築設計事務所 城田氏
そうですね。今回のような公共施設や共創施設はもちろんですが、特に保育園や幼稚園、学校のように子どもたちが長い時間を過ごす施設には、とても相性がいいと感じています。
一般的な空調のように風が直接当たることがなく、『ユカリラ』ならではのやわらかな暖かさ・涼しさで空間全体を快適な温熱環境にできる点は大きな魅力です。また、床面が極端に高温にならないため、低温やけどの心配が少ないことも安心材料になると思います。実際にこの施設でも、冬は「靴を脱いで過ごしたくなるね」と話すほど心地よい環境が実現できています。
子どもたちは床に座ったり寝転んだりしながら長い時間を過ごします。そうした教育施設には特に適したシステムだと感じていますし、今回の PERCH で『ユカリラ』を導入したことで、開放的な大空間でも快適な温熱環境を実現できることが確認できました。 今後も、児童福祉施設、教育施設など子どもたちが長時間過ごす場や、大空間を持つ施設への導入を積極的に検討していきたいと考えています。

 

喬木村共創施設 Co-creation space PERCH

●施設データ
施設名:喬木村共創施設 Co-creation space PERCH
所在地:長野県下伊那郡喬木村1917-1
用途:共創施設(宿泊機能付き)
構造:木造2階建て
設計:株式会社鈴木建築設計事務所

※掲載内容は取材当時(2026年5月)のものです。

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