急な地震に対する対策4選(自宅編)
転倒防止グッズも紹介

日本は世界に比べて地震が発生しやすい地域です。
地震が発生しやすいため住宅の強度は世界に比べ強く造られていますが、地震による被害の30%〜50%は家具の転倒や落下によるものです。
地震が発生した時に備えて自宅の地震対策が必要です。地震対策についての知識があれば、購入側のお客様だけでなく、住宅を売買する側の法人の方も、よりお客様に寄り添った提案が可能となることでしょう。
今回は自宅でできる地震対策を紹介しているので、まだ自宅の地震対策ができていないという方は参考にしてください。
自宅の地震対策が必要な理由

大地震は突然襲ってくるため、普段の生活のうちから防災グッズを用意したり耐震対策を行ったり、地震に備えることが大切です。
例えば、1995年の阪神・淡路大震災では、犠牲者の死因の過半数が建物の倒壊、家具の転倒などによる圧死です。
倒壊した建物のほとんどが1981年以前の旧耐震基準の家屋だったため、1981年6月以降は、最大震度6以上でも倒壊を免れるように強化された新耐震基準が設けられていました。
また、2000年には阪神・淡路大震災の教訓を基に耐震基準が見直され、木造建築で土台、柱、梁の接合部を金もので固定するなどのさらに強化された耐震基準になりました。
耐震基準が見直された後に発生した熊本地震では、新しい耐震基準の建物と以前のものでは、倒壊した割合に大きな差が出ています。
1981年5月以前の旧耐震基準の建物はほとんどが被害を受け、倒壊・全壊は3割近くに及びます。
上記の耐震基準による建物が倒壊した割合から自宅の対策が重要であることが見て取れます。
地震が多い国日本

日本で起きている地震の割合
日本は毎年多くの自然災害が発生しており、災害大国と呼ばれています。
豪雨や台風、火山の噴火など多くの自然災害があります。
数ある災害の中でも日本は地震大国であり、世界で発生しているマグニチュード6以上の地震の約20%が日本周辺で発生しています。
近年は、2011年3月11日の東日本大震災や2016年4月16日の熊本地震などの大規模地震が発生し、多くの被害をもたらしています。
地震が日本で発生しやすい原因
日本で地震が発生しやすい原因は地震の原因となる岩盤プレートが他の国と比べて多く重なった場所に位置しているためです。
地震が起こる原因となる岩盤プレートは1年に数cm単位でゆっくりと動いています。ゆっくり動いているうちにずれが生じることで岩盤が跳ね上がったり、断層運動が起こったりするため揺れが発生します。
プレートには陸のプレートと海のプレートがあります。
日本周辺は陸のプレートであるユーラシアプレート、北アメリカプレートと海のプレートであるフィリピン海プレート、太平洋プレートと4種類のプレートに覆われているのでずれが起こる可能性が高くなり、地震が多く発生します。
自宅の地震対策4選

1.家具の転倒防止
1995年に発生し、被害総額が約9.6兆円にも達した阪神・淡路大震災では多くの方が寝ていた早朝に発生したため亡くなられた方の死因の過半数が窒息や圧死でした。
家具や家電が倒れる可能性を低くするためにもまずは家具・家電を固定することが大切です。
さまざまな耐震グッズが市販されているので、それぞれの家具や家電に合ったものを利用しましょう。以下、家具・家電の中で転倒防止対策したほうが良いものをご紹介します。
本棚
本棚は倒れてくると大ケガの恐れがあるため、家具転倒防止グッズを取り付けましょう。突っ張って固定するタイプや、壁に固定するタイプがあります。
テレビやデスクトップパソコン
耐震マットや耐震ジェルで固定して破損しないようにします。転倒の危険を完全に防ぐことはできませんが、転倒のリスクは大幅に下がります。
照明
簡単にはずれないようにしっかりと固定しましょう。特に吊下げ式のものは同色の飾りチェーンなどを使い、3または4方向への連結をおすすめします。
食器棚
食器棚は転倒してしまうと中の食器が割れるため危険です。避難経路を防いでしまう可能性もあるので家具転倒防止グッズを取り付けましょう。扉がある場合は扉開き防止具を、ガラス張りであればガラス飛散防止フィルムを貼りましょう。
冷蔵庫
大きな冷蔵庫は転倒すると大ケガをする可能性があるため、家具転倒防止グッズを取り付けましょう。突っ張って固定するタイプや、壁に固定するタイプがあります。
2.家具の配置確認
家具や家電は配置場所を見直してみましょう。就寝中に大きな地震が起きたとき、ベッドのそばにテレビや本棚など、重たい家具を置いていると家具の下敷きになってしまう可能性があります。
部屋の出入り口付近や通路には家具を置かない
出入口付近に置いた家具が倒れてドアが開かなくなったり、廊下に置いた家具が倒れて通路を塞いでしまったりすることがあります。
避難経路が塞がれるのを防ぐために、出入り口の近くや廊下などに家具を配置しないようにしましょう。
背の高い家具はベッド・布団から離して設置する
背の高い大きな家具をベッドや布団の近くに設置しないようにしましょう。どうしても必要で大きな家具を設置する場合は枕元に置かないようにするなど工夫をしてケガのリスクを下げましょう。
重いものは低い位置に置く
重いものを低い所へ置くことで、重心を下げ家具を倒れにくくしましょう。例えば、食器棚では陶器やガラスでできた大きくて重いもの、本棚では百科事典などの重い本を下段に入れると、家具全体の重心が下がるので倒れにくくなります。
重いものが高い位置から落ちてくると非常に危険なため、重いものは低いところで置くようにしましょう。
3.避難経路の確保
玄関やベランダへの避難ルートに障害となるものを置かない
地震が発生した時、揺れによって大きな家具や家電が避難ルートを防いでしまう可能性があるため避難ルートの周辺を避けて家具や家電を配置しましょう。
自分の部屋からどのようにして脱出するか室内から屋外までの避難ルートを確認しておきましょう。可能であれば複数の避難ルートを確保しておくことがおすすめです。
集合住宅の場合、非常口・非常階段の確認
集合住宅の場合はほとんど共用部分に非常口や非常階段が設置されています。ベランダには、隣家との仕切り板を非常時に破って避難できるようになっていたり、階下への避難はしごが設置されていたりします。
地震後に屋外へ避難をするときはエレベーターを使用するのは閉じ込められてしまう可能性が高いので危険です。非常階段を使ったルートをチェックしておきましょう。
自宅から避難所までの避難ルートをチェック
自宅近くの避難所や防災拠点を事前に調べておきましょう。分からないときは、お住まいの地域の自治体に問い合わせましょう。
4.避難グッズの準備
自宅が被災したときは、安全な場所に避難し避難生活を送ることになります。非常時に必要なものを非常用バッグに詰めておき、いつでも使用できるようにしておきましょう。
非常用バックには大きく3つの種類があります。いつものバッグに入れる持ち歩き用グッズ、非常用持ち出しバッグにいれておく避難用グッズ、自宅に置いておく在宅避難用グッズ。
以上3点を、取り組みやすいものから作っておきましょう。
以下はそれぞれのグッズのまとめ方です。参考にして準備してみてください。
1.持ち歩き用グッズ
持ち歩き用グッズはいつも使っているようなバッグに入れておきましょう。外出時に地震が起きて避難が必要になった場合にも役立ちます。以下は持ち歩き用グッズの例です。
いつも使っているバッグに入れておくもの
- 食料(手間なく食べられるチョコレートバーや個包装のアメなど)
- 飲料水(500ml)
- 停電対策グッズ(現金、小型LEDライト、モバイルバッテリーなど)
- 貴重品(国民健康保険証、運転免許証など)
- 個別に必要なもの(コンタクトレンズ、メガネ、常備薬、補聴器など)
2.避難用グッズ
避難用グッズは非常用の持ち出しバッグを用意して必要物を入れましょう。量の目安は人命救助のリミットとされている3日分の食料や生活用品です。以下で中身の例を紹介します。
非常用の持ち出しに入れておく必需品
- 飲料水バッグ(1人あたり500ml×3本)
- 手間なく食べられる食料(1人1日あたり3食分)
- 携帯トイレ(1人1日あたり1日約8回分)
- LEDライト、ランタン
- 電池式のモバイルバッテリー
- マスク(1人1日あたり約3枚)
- 常備薬、持病薬
- 保険証のコピー
- 印鑑
- 現金(公衆電話用の10円玉を含ませる)
- 紙のハザードマップ
非常用の持ち出しバッグに入れておく身を守るもの
- ヘルメット
- 万能ナイフ
- カイロ
- 電池式の扇風機
- 歯ブラシ
- スリッパ
- 簡易敷マット
- 体温計
- 消毒
- オールインワンクリーム
- 筆記用具
- 軍手、手袋
- レインコート
3.在宅避難用グッズ
在宅避難用グッズは一般的に、3日分の備蓄が望ましいです。しかし近年は、高層マンションでの電気システムの水没で復旧までに時間がかかったことから、7日程度の備蓄が推奨されています。
用意する時に同じ場所にグッズを固めてしまうと家屋が損害を受けた際、容易に取れなくなってしまう可能性があるため、在宅避難用グッズはキッチンや玄関など複数箇所に分散させて設置しておきましょう。
在宅避難用グッズの例は以下のとおりです。
※あくまで一例です。適宜調整して備えてください。
在宅避難用グッズの必需品
- 水2L×約11本(1人1日あたり約3L、飲料水と調理用水を含む)
- カセットコンロとボンベ×6〜9本程度
- LEDライト、ランタン(1人1灯と1部屋に1灯)
- 電池式モバイルバッテリー(1つ以上)
- 乾電池(単三系の場合)×33本程度
※ライトや使用機器に合わせてサイズと本数を確認する
食料(1人分)
- 乾麺×2袋
- パックご飯×3個
- 缶詰(肉・魚)×9缶
- レトルト食品(カレー等9個、パスタソース3個など)
停電対策
- 簡易トイレ×56個(1人1日あたり8回程度)
- 手回し充電ラジオ
- カセット式のストーブやカイロ
- 電池式の充電器
自宅の場所別地震対策

地震が発生した際に自宅内で起こるケガの原因は様々ですが、普段からできる対策で被害の可能性を下げることができます。
以下では地震が発生した時に場所別に起こりうる危険な要因と対策を紹介します。
1.寝室・こども部屋の地震対策
寝室やこども部屋に大きな家具などがあると揺れにより転倒した際に大ケガの可能性があるため危険です。危険性を知った上で家具の配置やアイテムを使って事前対策をしておきましょう。
背の高い大きな家具の位置を工夫する
まずは背の高い大きな家具を設置しないようにしましょう。どうしても必要で大きな家具を設置する場合は枕元に置かないようにするなど工夫をしてケガのリスクを下げましょう。
枕元のライトは充電式のものを採用する
地震が起きた際の停電対策として枕元のライトを充電式にすると、緊急時に懐中電灯としてすぐに使用して状況を把握できます。
ベッドの頭を壁や強い柱に向けて設置する
無防備な就寝中の地震に備えるならベッドの向きが重要です。ポイントは寝室のいちばん強い柱があるほうに頭を向けることです。倒壊した場合に少しでも頭を守ることに繋がります。
ベッドの下に頑丈な靴を置く
大きな地震が発生してものが飛び散り、裸足で部屋を移動するとガラスの破片やがれきでケガをしてしまう場合があります。すぐに避難できるよう、ベッドの下に安全靴やスニーカーなど頑丈な靴を置いておきましょう。
クローゼットに鍵をかける
地震が発生した時にクローゼットに多くものを収納している場合は、中のものが飛び散らないように鍵をかけておきましょう。南京錠などは普段の生活で手間になるため、自転車の番号式のチェーンなどで簡易的に鍵をかけておくのがおすすめです。
2.リビングの地震対策
リビングはものが多くなる傾向があるため、激しい揺れが起きた場合ものが飛び交ったりする危険性があります。
ものが多いため収納に困る方も多いです。収納ケースや滑り止めなどを活用してものが散らばらない工夫をしましょう。
滑り止めでテレビを固定する
リビングによく設置されているものの中で、特にテレビは揺れによって転倒してしまうと画面が割れてしまい鋭利な破片が飛び散ってしまう可能性があり危険です。
置くタイプのテレビは前側の脚に滑り止めを設置すると後ろに倒れやすくなるため画面が割れにくくなります。
工具を利用して固定する
背の高い大きな家具を設置する場合は金具や転倒防止ベルトを使用して家具を固定して転倒のリスクを減らしましょう。
重心が下にある家具を設置する
家具は高さが低いものにして転倒した時にケガのリスクを下げるのがおすすめですが、収納するものが多くどうしても高くなってしまう場合があります。
腰よりも大きい家具を使用するときは上段よりも下段に奥行きがあり、重心が下に来るような家具を選んで設置すると揺れの大きさによっては転倒を防止できます。
本棚に滑り止めを設置する
本棚が倒れないように工夫をしても収納している本が揺れによって飛び出してしまう可能性があるため、棚部分に滑り止めを設置したり本をきっちり並べて詰めたりしておきましょう。本が飛び出しにくくなります。
天井までの高さがある棚を使用する
重心が下にある棚や低い棚を使用するのもおすすめですが、あえて天井まで高さがある棚を使用すると天井がストッパーとなり倒れにくくなります。高さが天井まで届かない場合は箱などで高さ調整しても良いでしょう。
3.キッチンの地震対策
通路にものが置かれていると転倒に繋がります。地震や火災が発生した時には、避難経路をふさいでしまうことになるため、キッチンの床にものを置いたままにならないようにしましょう。
以下では床や作業台の上に置かれたままのものを収納した上での地震対策のポイントを紹介します。
大きな家電の固定
冷蔵庫や食器棚などの大きく重量がある家具、家電でも大きな地震が発生すると容易に転倒する場合があります。ビスなどの金具でしっかりと固定しておきましょう。
ビス留めできない食器棚や冷蔵庫は、強力な接着パッドで貼ったり転倒防止ベルトを使用して固定するのがおすすめです。
扉が開かないようにする
地震で大きく揺れた時には、食器棚の扉が揺れで開いてしまい中の食器が飛び出して散らばる可能性があります。
ベビーガードのような扉ロックを取り付けておくと扉が開いてしまうことを防止できますが、普段の開閉に手間がかかってしまうため、普段はロックされずに大きな揺れだけに反応して自然にロックのかかる耐震ラッチや耐震ロックの使用がおすすめです。
リスクを避けた食器収納
お皿やグラスはたくさん重ねていると不安定になり、地震で揺れた時には食器棚の中で崩れてしまいます。
耐震ラッチをつけて中のものが飛び出すのを避けられても、再び扉を開けた際に中の食器が滑りだしてきたり、食器棚の中で割れていたりします。
食器を重ねる時には多くても3枚程度に抑えておきましょう。食器を重ねすぎないことは、日ごろの使いやすさにもつながります。
どうしても複数枚の食器を重ねたい場合には、食器の種類ごとにサイズがあったカゴを使ってまとめましょう。
4.玄関
大きな地震が起きると玄関ドアが開かなくなる可能性があります。玄関ドアが開かなくなると避難が遅れて二次災害に巻き込まれる可能性が高くなる危険性があります。
玄関ドアが開かなくなる原因は、ドアの枠と扉のバランスが崩れてしまうためです。揺れによってズレが生じると、ドア枠と扉をつなげている丁番が変形してドアを開かなくします。
以下ではドアが開かなくなるのを防ぐための方法を紹介します。
玄関ドアの近くにものを置かない
玄関ドアが開いている状態でも、ものやガラスが散らばっていたら逃げにくく避難が遅れてしまいます。ものがありすぎて道をふさいでしまう可能性もあります。
例えば、自転車やベビーカーなどの大きなものや花瓶などの割れものは玄関ドアの近くに置かないようにしましょう。
シューズクローゼットを併設すると、ベビーカーや自転車など屋内に持ち込めないものが収納できます。シューズやブーツなどの靴だけでなく、コートや傘が掛けられるようにハンガーパイプを付けると便利です。
耐震丁番に変更する
丁番とは枠と扉をつなげている金具のことです。ネジがゆるんだり丁番が曲がったりすると、ドアがスムーズに開きません。取り付け位置が枠と扉で数ミリずれているだけで、ドアが開かないこともあります。
耐震丁番は、通常の丁番とはちがって内部にスプリングが組み込まれている丁番です。ある一定以上の力がかかるとスプリングが動き、変形に合わせてドアの開け閉めを可能にします。
耐震枠に変更する
ドア枠と一言でいっても種類は様々です。ドア枠の中で地震の時に閉じ込められるのを防ぎやすいのが耐震枠です。
枠と扉の間に新しく空間をつくるという仕組みになっており、玄関枠が歪んでも扉が入り込まないようにしてくれます。
耐震枠は、地震が起きても100%ドアが開けられるわけではありません。しかし、耐震枠だったら開けられたのにと後悔する前に、玄関ドア自体の交換を検討してみましょう。
地震対策グッズを選ぶ際3つの注意点

1.耐震強度と耐久年数の確認
地震用グッズを選ぶ際は耐震強度と耐久年数を確認しましょう。いつ起こるかわからない地震のためのグッズなのでしっかりと効果のある状態でキープしておきましょう。地震用グッズを購入した時に記載されている耐震強度や耐久年数に従って正しく使用しましょう。
2.自宅の家具に取り付け可能か確認
自宅の家具に取り付けが可能か地震用グッズのサイズや素材を確認しましょう。使えないグッズを購入してしまって無駄になったり、本来の効果が得られなくなります。
3.家具とのデザインバランスの確認
地震用グッズはデザインバランスにも注意して選びましょう。地震は突然発生するため、事前に準備をしておくことが大切です。
しかし、いかにも地震用グッズという見た目のものでは家具とのデザインバランスが悪いため家具や部屋の雰囲気を壊さないような色柄のものを選んでみましょう。
自宅の地震対策まとめ
自宅で可能な地震に備える準備では身の回りの家具、家電を固定して突然の揺れに対応できる状態にしておくのが大切です。
本記事を参考に、ものにあった地震用グッズの使用や避難経路の確保など、地震が起きてしまった直後の行動をできるだけスムーズにするために抜けのない地震への前準備を普段の生活から意識しましょう。
※ここに掲載されている情報は2023年11月15日時点のものであり、ご覧いただいている日と情報が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。