介護老人保健施設（老健）とは？　入所条件や特徴、リハビリからターミナルケアまで

人生100年時代とも呼ばれるように、長寿社会となった現代では、介護が必要になった場合でも様々な選択肢があります。特別養護老人ホーム（特養）や有料老人ホーム、介護老人保健施設（老健）などが選択肢として挙げられますが、その中でも、「住み慣れた自宅で生活を続けたい」という思いをサポートするのは老健です。本記事では、老健の目的や入居条件、特養・有料老人ホームとの違いについてご紹介します。

老健とは在宅復帰・在宅療養支援を目的に、主にリハビリを提供する高齢者向け介護施設です。例えば病院を退院したものの、在宅での生活が困難な方の受け入れ先となっています。

そのため、医師とリハビリ専門員が1名以上常駐しているのが特徴です。また、デイケアやターミナルケアを提供する施設もあります。ターミナルケアとは苦痛やストレスの伴う延命治療を中止し、人生の最後を穏やかに、自然なかたちで迎えるように看取ることです。

つまり老健はリハビリや在宅介護を通じて、高齢者が可能な限り在宅での生活をできるように支えている公的施設となります。

●老健の入居条件

老健はどなたでも入居できるわけではなく、入居するためには以下の条件を満たす必要があります。

・原則65歳以上で要介護1以上の方
または40～64歳で特定疾病による要介護認定を受けている方
・症状が比較的安定しており、リハビリの必要性が認められる方

つまり要介護1 以上（または40～64歳で特定疾病による要介護認定を受けている方）で、症状が比較的安定しており、リハビリの必要性が認められる場合に入居できます。特定疾病とは末期がんや関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症など16種類の病気です。

●老健の特徴は医療体制の手厚さ

老健の特徴は医療体制の手厚さです。老健には1名以上の医師と、1名以上の作業療法士や理学療法士といったリハビリ専門職の常勤が義務付けられています。そのため、老健の運営母体は医療法人であることが一般的です。

さらに老健は公的施設のため、民間の老人ホームよりも安価で利用できるのも特徴です。有料老人ホームで必要な入居一時金も、老健では必要ありません。リハビリを必要としている方にとって老健は、環境が整っている施設といえるでしょう。

老健と特養、有料老人ホームなどの高齢者向け施設はそれぞれ違いがあります。老健が他の有料老人ホームと比較して優れている点は以下のとおりです。

・リハビリが充実していること
・医師・看護師が常勤しており、医療体制が手厚いこと
・民間施設よりも安価で利用できること

ただし老健は、特養や有料老人ホームと比較するとレクリエーションが少ない傾向にあります。なぜなら、日中の活動時間の多くを訓練に費やすためです。

●老健と特養の違い

高齢者向けの介護施設で利用者数が最も多いのは特養です。その特養と老健には2つの大きな違いがあります。

1つ目は入居できる期間です。老健は3カ月から6カ月が入居可能な期間です。一方、特養は期間の制限がなく、終身での利用ができます。

2つ目の違いは入居条件です。老健に入所するには原則要介護1以上で、リハビリが必要と認定される必要があります。一方、特養の入居条件は原則要介護3以上です。

これらの違いにより、特養への入居待ちの方が一時的に老健へ入居することもあります。

高齢者施設には、老健・特養以外にも様々な種類があり、「公的施設」「民間施設」などの分類もあるため、詳しく知りたい方は下記の記事もご参照ください。
⇒「高齢者施設の種類と違い　「特養」「老健」「サ高住」など各施設の特徴をチェック」

老健の空間づくりに重要なポイントは、安心した在宅療養生活が目指せるかどうかです。老健の目的は在宅復帰で、特養のように終身利用ができません。
つまり、快適さもさることながら、何よりも重要なのは転倒などによるケガを予防することです。
例えば退院した後、在宅での生活を目指しているのに転倒して骨折してしまうと、入院生活に逆戻りしてしまいます。このような事故が起こると、本来の目的である在宅復帰が遠のいてしまいます。

施設利用者が安心して在宅復帰を目指せるようにするためには、手すりの設置が有効です。ただし、手すりは壁沿いにだけ設置すれば良いかといえば、必ずしもそうではありません。室内やホールなどでは、壁から離れて移動する場合もあるためです。
壁のない場所や、開口部、立ち座りの補助など、それぞれのシチュエーションに対応した手すりを設置していくことが、老健をはじめとした高齢者施設での空間づくりのポイントとなります。