クリニック・医院設計における建材選びについて

建材選び

医療施設づくりにおいて、どんな基準で建材を選ぶと良いのでしょうか。
クリニック・医院に特化した設計事務所である(株)リチェルカーレ様に建材選びのポイントについてお話をお聞きしました。

  • お話を聞いた方々

  • 高橋
  • 株式会社リチェルカーレ
    西日本統括本部長
    高橋 英貴 氏
    クリニック・医院を専門とした設計事務所。東京・仙台・名古屋・大阪・福岡に拠点を持ち、年間約80件ほどの医療施設を手掛ける。

     

  • 児玉
  • 大建工業株式会社
    国内販売推進部 住空間西部課
    児玉 航
    『おもいやりドア』の発売当初の開発に携わる。現在は物件ごとの特注対応など、販売推進部にて拡販や営業支援に携わっている。

建材を選ぶポイントについて

建材選び

―リチェルカーレ様では、多くの医療施設の設計を手掛けておられます。建材はどんな点を重視して選んでおられますか?

高橋:不特定多数の方が使うものですから、まずは耐久性です。医療施設、なかでも小児科は子どももいて、扱いが雑になりがちです。多少こすってもキズにならないものを選ぶようにしています。
次にメンテナンス性です。血液を扱う処置室では、拭き取りやすいことや抗菌性。定期的にアルコールで消毒されるので、劣化しないかどうかなど、先生方は結構気にされますね。

音への配慮について

―患者様が気にされるのはどんなことですか?

高橋:クリニックの場合は、ご近所どうしの患者さんが、顔を合わすことも多いので、プライバシーへの配慮ですね。診察室の声が外に漏れないようにします。待合室の正面に診察室がある場合は、話し声が漏れないドアにしたり、待合室にBGMを流したりしています。壁には遮音シートを入れます。
音の問題は後々もめやすいので、先生には最初にきちんとご説明し、遮音シートなどは標準で入れるようにしています。

児玉:動線や見た目は、先生も一番に気にされるところですが、音に関しては配慮が行き届きにくいと思います。そこまで目配りされているのが素晴らしいですね。

高橋:音についていうと、とりわけ心療内科では細かく配慮しています。音に敏感な患者さまもいらっしゃるので。
たとえば床材ですと、歩いたときにコツコツと靴音が響かないものを選びます。
ドアもそうです。医療施設では、自閉式の吊戸を採用することが多いのですが、開け閉めするときに「プシュー、ガチャン」と結構音がします。『おもいやりドア』の自閉式は、ゆっくり静かに閉まるのが良いです。うちでは診療科に関わらず、ほとんどの医療施設で採用しています。

児玉:ありがとうございます。『おもいやりドア』の自閉式に使っている金具は、一部エアダンパーのブレーキ機構を採用しています。オイルダンパーだと、閉まる直前に「ガチャン」と音がして、これが耳障りに感じられることがありますが、エアダンパーはそこまでの音がしません。

おもいやりドアはスムーズな動きが特長

建材選び

「大勢の人が触れるので、抗ウイルス機能付きの取手は先生方にも好評です」(高橋氏)

児玉:開発時に重視していたのは、開けるときにスムーズであること。走行性にはかなりこだわりました。ブレーキが効き始めてから閉まるまでが自然な感じの走行で、スムーズなのが特長です。

高橋:細かいところですが、取手が抗ウイルス仕様になっている点も評価しています。医療施設では衛生対策が重要ですので、先生方も気にされている点です。大勢の人の手が触れる場所にこのような機能があるのは良いですね。

―耐久性はどうでしょうか?

児玉:住宅用ではなく、施設専用品として発売するために、金具をすべて変更しました。施設用では、不特定多数の方がさまざまな使い方をすることを想定し、住宅用よりも厳しい開閉試験をクリアできる耐久性を持たせました。それが結果的に走行性の軽さや、音の少ない製品につながっています。

高橋:リニューアルされて、ワイヤーの調整しやすさも耐久性も向上しましたね。

安全性の考え方は現場からの意見も参考に

建材選び

「手を挟みやすい可能性のあるところに切り欠きを入れて、広めにとっています。間をモヘアで隠しています」(児玉氏)

児玉:安全性に関しては、こちらが意図しない使い方をされる可能性も念頭に置いて開発しました。取手を持ってドアを開けるとは限らない、体のバランスを崩して思わぬところで手をついてしまうかもしれない…等。これは高齢者だけの配慮ではなく、子どもに対しても同様です。安全面には、ここまでするのか、というくらい配慮しました。

―安全面の配慮はどこで知見を得たのですか?

児玉:老健など介護施設への採用では、現場ごとに個別対応(特注)することが多く、そこで色々なご意見やご要望が集まっていました。高齢者の方のドアの使い方や、どんな場所でケガをされやすいのかなど。現場からの声が開発に生きています。
たとえば、ドアのすき間。すき間への指挟みは起きやすい事故なので、万一指を挟んでもケガをしないよう、かなり広めにとっています。一般的な建具の場合は8~9ミリ。それを15ミリのすき間にしています。参考ですが、建産協(※)の指針では、13ミリ以上が指を挟まない目安とされています。
※一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会

構造が複雑ゆえに施工性の良さは重要

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「自閉式は、エアーが抜けるシューという音がする程度で、ガチャンという音はしません」(児玉氏)

高橋:施工性もいいですね。一般に吊戸は構造が複雑なので施工が大変ですが、『おもいやりドア』は施工のばらつきがない。これは、現場ではとてもありがたいです。

児玉:『おもいやりドア』は施工のしやすさも考慮しました。具体例を挙げますと、ダンパーの部品は現場で取り付けるのではなく、あらかじめレールに組み込んでいます。レールを枠に取付けるだけなので、部材の取付け間違いや、漏れの心配がありません。
アウトセットで引戸を付けるときには、現場での位置出しが重要になりますが、位置出しがラクなように、レールは組んだ枠の上に載せるだけでいいようにしています。手間を省くとともに、現場ごとの施工のばらつきをなくすための配慮です。

高橋:後からドアに不具合があった場合、施工側の問題なのか、製品の問題なのか、と責任の所在に関わります。また現場に行ってメンテナンスをすることは、手間と経費もかかります。そういった点まで考慮すると、初期コストは多少かかっても品質が良いことが一番ですね。

児玉:「おもいやりシリーズ」は施設専用設計で、規格もコンセプトも統一して開発しました。品質・安全・使いやすさへの想いは、ドアのほか、床材、収納など全製品に行き届いていると思います。

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