友達とじゃれあい元気に走り回る子どもの日常において、ケガが全く発生しないということは現実的に考えにくいもの。幼保施設では “いつか発生するであろう” アクシデントを最小限に抑え、重篤な事故となってしまわないよう、常に備えておくことが求められます。今回は、幼保施設内で負傷事故が起きやすい場所、そして事故を引き起こす活動内容について調べてみました。
園舎内で事故が起こりやすいのは「教室・遊戯室・廊下」
内閣府が発表した「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議 年次報告(平成30年7月30日更新)」によると、負傷等※が起きやすい場所は施設によって異なり、施設敷地内(室内)で起きる事故の割合は、幼稚園では37%、保育所では42%、認定こども園では50%を占めています。
※負傷等…治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病
負傷等の発生した場所と件数
出典:内閣府「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議 年次報告 (平成30年7月30日更新)」Ⅲ 負傷等の詳細より(P18)
また、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が発表した「学校の管理下の災害[令和元年版]」によると、園内・園舎内事故の発生した場所は教室(保育室)が最も多く、次いで遊戯室や廊下が多くなっています。
負傷・疾病の場所別件数表
出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)「学校の管理下の災害[令和元年版]」
幼保施設で起きる事故は「自らの転倒・衝突によるもの」が最多
最初にご紹介した、内閣府「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議 年次報告」によると、施設事故(屋内・屋外)を引き起こした原因は「自らの転倒・衝突によるもの」が施設を問わず4割を超え、最多となっています。次いで、「遊具等からの転落・落下」「子ども同士の衝突によるもの」の割合が多くなっています。
事故誘因の件数
出典:内閣府「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議 年次報告 (平成30年7月30日更新)」Ⅲ 負傷等の詳細より(P24)
事故原因として「遊具等からの転落・落下」よりも、「自らの転倒・衝突」が多いという結果が、少し意外だったという方もいらっしゃるでしょう。
室内で起こる「自らの転倒・衝突事故」とは?
では、「自らの転倒・衝突事故」とは具体的にどのような動作を指すのでしょうか。
子どもたちは頭部に重心のバランスがあり、身体も発達途中であるといった特徴からも、転倒・衝突しやすいもの。さらには、興味のおもむくまま走り出すなど、危険についての予測能力もまだまだ不足しているため、予想外の行動をとることも多いでしょう。例えば少し目を離した隙に、以下のような事故が起こるかもしれません。
・廊下でじゃれあっていた際、つまずいてこける
・お遊戯の練習中、ジャンプの着地に失敗して転倒
・鬼ごっこで逃げることに夢中になり、ガラス戸に気づかず衝突
・はしゃぎ回る中でバランスを崩し、滑って転ぶ など
「必ず起こる」転倒・衝突事故に備えた施設づくりを
ご紹介した内閣府の報告では、事故発生の要因には「子どもを見守りつつ後片づけなどの作業を並行していた」「延長時間で、通常クラスでなく異年齢児構成で対応する際、担当の受け渡しが十分でなかった」「子どものお迎えで保護者に対応していた」など、いつもは保育士さんがしっかりと見守りを行っていても、子どもを観察していない一瞬の隙に発生していることが多いようです。
このような「必ず起こる」であろう転倒・衝突事故から子どもたちを守るためにも、施設運営者は、ソフト・ハードの両面において備えておく必要があります。
参考:内閣府「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議 年次報告(平成30年7月30日更新)」
独立行政法人日本スポーツ振興センター「学校の管理下の災害[令和元年版]」
兵庫県・公益社団法人兵庫県保育協会「保育所におけるリスク・マネジメント」