公共施設の老朽化対策 求められるのは「利用したくなる」魅力的な空間づくり

公共施設

少子高齢化が問題視され始めて久しい日本ですが、その問題点はクローズアップされがちな労働力や税収、年金の問題ばかりではありません。公民館や総合体育館などの公共施設はかつての人口増を受け、1970年代前後に集中して建設されましたが、それらも現在では老朽化が進み、各自治体で改修や建て替えを検討する段階に入っています。しかしながら、どの自治体も財政的に十分な余裕があるとは言い難いのが現状です。

公共施設の建設を「箱モノ」というように、ハード面だけで考えていた時代は過ぎ去りました。施設を取り巻く地域社会や利用者のニーズを汲み取り、付加価値をつけて「箱」をより魅力的なものに生まれ変わらせるような改修が求められています。

公共施設の老朽化問題

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第二次ベビーブームといわれる1970年代には、急増した児童を受け入れるために数多くの学校や公共施設が建設されました。そして昨今、その多くが老朽化し、建て替えや補修、補強の必要に迫られています。一方、公共投資予算は減少の一途をたどっています。主な理由は少子高齢化に伴う社会保障費の増加です。

このような状況において、次々と更新の時期を迎える公共施設・インフラの維持、メンテナンス費用を自治体が負担し続けることは難しいため、公共施設への投資を自治体のみに委ねるのではなく、民間の力を導入しようと始まったのがPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)の考え方です。PPPでは民間事業者主導のもと、それまでになかった視点を取り入れ、利便性を高めて効率的かつ魅力ある施設の運営が実現されています。

従来の公共施設建設・運営には、誰もが「利用できる」ように、低料金、バリアフリー、アクセスしやすい立地など、利用者の「公平性」に配慮することが優先されてきました。それに対してPPPを取り入れた施設では、従来の施設運営に不足していた利用者の「快適性」「利便性」「エンターテインメント性」などを盛り込むことが可能になりました。これは付加価値をつけて満足度を高める工夫を凝らした、新しい施設改修のあり方として注目されています。

利用者のニーズに応え、楽しませる施設へ

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少子化の背景には、子育てをめぐる環境の厳しさもあると考えられています。

「子育て=孤育て」などと揶揄されるように、育児中に世間との断絶感を持った方は少なくないでしょう。公共施設においても、子どもを連れて利用できる施設が少ない、施設を利用するために子どもを預けなければならない、預け先がないから利用できない、といったように従来は施設の利用者になることすらできなかった住民が数多く潜在していました。

そのような状況を解決するためにPPPを導入した自治体では、公共施設である公園に多目的トイレや授乳室、おむつ交換ベッドを設置するだけでなく、カフェやレストラン、コンビニ、ペットショップ、子ども向けの玩具店といった民間事業者を参入させ、賃貸収入を得て公園の維持にかかる経費を賄うなど、利用者のニーズを満たしたうえで財政的にも成功した事例があります。

もちろん子育て世帯のみならず、高齢者が気軽に社会参加できる機会を提供するなど、地域の潜在的なニーズを掘り起こしたうえで、「誰もが利用できる」だけの標準的な施設から「利用したくなる」魅力的な施設に生まれ変わらせることがこれからの公共施設に求められています。

建物のデザイン性で公共施設の魅力を高める

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利用したくなる魅力的な施設を目指すなら、建物のデザイン・意匠性の高さにも配慮が必要です。「箱モノ」公共施設には四角四面で平坦なイメージがありましたが、民間事業者の展開する商業施設には、利用者に快適な居心地を提供し、満足度を高めるための意匠性が備わっています。

壁面の意匠ひとつとっても、平滑な塗装面より陰影やテクスチュアを感じさせる壁面のほうが、視覚的に安心感をもたらし、その空間にいることの満足感や心地良さを演出してくれます。落ち着いたインテリアのカフェなどを思い浮かべてみれば、家具やカウンターは木製、壁面の仕上げは織物調のクロスやレンガ、土や石のような天然素材など、質感や立体感で陰影を生み出す素材でできていることが多いと思います。人は本能的に陰影や素材感から温かみ、落ち着きを得るものなのでしょう。利用したくなる公共施設をつくるために、ぜひとも導入したい要素といえます。

ただ、石材やレンガは意匠的に人気の高い素材ではありますが、コストの問題以外に、重量があるため建物への負荷や耐震性の面で施工できない場合があります。また、公共施設の壁や天井には建築基準法で定める「内装制限」が適用されるため、防火性に優れた材料であることは必須条件でしょう。さらに、広い空間に施工することを考えると、軽量であることや加工のしやすさなど、施工性も重要な条件となります。現在は、軽量で施工性に優れた高意匠不燃壁材も開発されていますので、公共施設に新しい命を吹き込む際は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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