パーソナルスペースとは ソーシャルディスタンスとの違いや、年齢・性別・関係性などを配慮した空間づくり

パーソナルスペース

この数年で感染症予防の観点からソーシャルディスタンスの概念が、社会全般に浸透するようになりました。これに似た概念として、自分にとって心地良いスペースを意味する「パーソナルスペース」があります。人々が安心で快適に過ごすためには、このパーソナルスペースを適切に保つことがとても重要です。また、パーソナルスペースを保つためには様々な配慮が大切であり、建築やインテリアなど、周囲の空間が影響を与えることも知っておくべきでしょう。

本記事では、パーソナルスペースの詳細やソーシャルディスタンスとの違いを解説するとともに、小さな子どもたちが集まる保育園や幼稚園、認定こども園におけるパーソナルスペースの考え方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

パーソナルスペースとは? 建築との関係は?

パーソナルスペース

パーソナルスペースとは、個々が自分のスペースだと認識している空間のことです。また、他の人との距離や接触を調整するためのスペースでもあり、他者に侵入されると不快に感じる心理的なテリトリーともいえます。そのため、他の人と過ごす際、自分に必要なスペースが確保されていない時は、「居心地が悪い」「落ち着かない」と感じることもあるでしょう。

パーソナルスペースの範囲は、性別・年齢・姿勢・人種・文化・相手との親密度や関係性など、様々な要因で変化します。
例えば、男性は前方の半径が長く後方の半径が短い楕円形で、女性は自分を中心に円形のパーソナルスペースを持つ傾向にあるといわれています。さらに、社交的な人のパーソナルスペースは狭く、内向的な人は広いなど、それぞれの性格による個人差も大きいため、人と関わる際には十分に気をつける必要があります。

また、人が適切なパーソナルスペースを保つためには、建築やインテリアをデザインする段階から、空間の使い方やレイアウトなども考慮すべきでしょう。例えば、会社の会議室などにおける席の配置は「ソシオペタル」と呼ばれる、コミュニケーションが取りやすい向かい合わせの状態が基本になりますが、病院の待合室など、知らない人同士が集まる場所では「ソシオフーガル」と呼ばれる、互いの目線が合わないようにレイアウトすることで、パーソナルスペースを確保しやすくなります。
このようにパーソナルスペースの概念は、建築物の快適性を左右する重要なポイントとなっています。

パーソナルスペースとソーシャルディスタンスの違い

パーソナルスペース

パーソナルスペースとソーシャルディスタンスは、どちらも他の人との距離や接触を調整することを表した概念です。
1966年にアメリカの文化人類学者であるエドワード・ホールが、パーソナルスペース(対人距離)を以下の4つに分類しています。

<パーソナルスペースの分類>

●密接距離(intimate distance :45cm以下)

家族や恋人など、ごく親しい人に許される距離

●個体距離(personal distance :45~120cm)

友人や知人などの親しい間柄なら不快にならない距離

●社会距離(social distance :120cm~360cm)

仕事上の業務や商談などに用いられる距離

●公衆距離(public distance :360cm以上)

講演会や演説などで用いられる距離

パーソナルスペース

一方のソーシャルディスタンスは、パーソナルスペースの分類にある「社会距離」からきており、コロナ禍における感染防止対策として2m以上の対人距離を取ることを呼びかける言葉として注目を浴びました。

パーソナルスペースは個人的な感覚による概念のため、上記の分類はあくまでも目安ですが、人と接する際は相手に不快感を与えないよう、常に適切な距離感を保つ努力をしたいところです。特に仕事をするうえでは、近づきすぎたり離れすぎたりすることで、相手に不快な印象を与えないように注意しましょう。

幼保施設におけるパーソナルスペースの考え方

パーソナルスペース

最後に、施設におけるパーソナルスペースの配慮として、保育園での例を考えてみましょう。

乳幼児期の子どもは同じ年齢のクラスでも、月齢が低いほど発達の個人差が大きくなります。とりわけ一斉に同じ遊びや活動をすることが難しい乳児クラスでは、ひとり遊びや平行遊び(他の子どもと同じ場所にいながら、交流しない状態で同じようなことをする遊び方)の時間や空間を確保してあげることが大切です。

例えば保育園の中には、保育室を可動式の間仕切りやカーペットで分け、ひとり遊びをするためのパーソナルスペースを確保できるように工夫している施設もあります。これは、子どもが自分のペースでじっくりと遊びに集中でき、落ち着いて過ごせる時間が増えることで情緒の安定にもつながるためです。中には、ひとり遊びがしやすいように、園舎の設計段階からあえて狭い空間を用意している施設もあるようです。
また、子どもたちが集中して遊べる環境を整えるためには、保育室に音の反響を和らげる吸音性能がある天井材もおすすめです。子どもたちの成長に役立つ快適な空間をつくるために導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、企業のオフィスにおいてもパーソナルスペースを確保することが生産性向上に効果的な場合もあります。下記の記事をご参照ください。
「パーテーションはオフィスに必要? 設置のメリット・デメリットと活用法」
「オフィスランドスケープの注意点 やる気がでない従業員の士気をパーテーションで向上!」

recomended item

おすすめ製品