ADLとQOLの違いを知り、自立支援を! 介護スタッフと高齢者施設に求められるものは?

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介護の分野でよく使われる「ADL」や「QOL」という言葉を聞いたことがありますか?

ADLやQOLは、高齢者の自立支援に欠かせない重要な概念です。高齢者福祉に携わる介護スタッフはもちろんのこと、施設の設備面からの自立支援サポートのため、高齢者福祉施設の設備・環境の構築に関わる方も理解を深める必要があります。

本記事では、QOLとADLの言葉の意味や違い、QOLを高めるためのポイントを紹介します。

ADLとは? IADLについても知っておこう

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ADLは、高齢者の自立支援でよく使われる概念・言葉の一つです。ADLの言葉の意味や種類、重要性について解説します。

●ADLは被介護者の自立度を測るものさし

ADLとは、Activity of Daily Livingの略で「日常生活動作」のことです。具体的には、「起床動作・移動・排泄・食事・更衣・入浴」などの日常生活を送るうえで必要な動作です。

ADLは、介護者が被介護者の状態を客観的に把握するために用いられ、動作ごとに「できるADL」「できないADL」と分類して評価します。その評価をもとに、介護者は被介護者の「できないADL」をサポートするための介護サービスを提供します。そのため、ADLは「被介護者の自立度を測るものさし」ともいえるでしょう。

●ADLはBADLとIADLの2種類

ADLはBADLとIADLの2種類に分類されます。
BADLとは、Basic Activity of Daily Livingの略で「基本的日常生活動作」のことです。BADLは一般的にはADLと同じ意味として使われます。IADLとは、Instrumental Activity of Daily Livingの略で「手段的日常生活動作」のことです。簡単に説明すると、ADLに手段的な動作や活動が加わるとIADLになります。具体的には、「食事の準備・買い物・金銭管理・交通機関の利用・趣味・余暇活動」などです。

IADLは、判断力・記憶力・運動能力などが複合的に必要となるため、ADLよりも高次な動作になります。例えば、買い物に行く場所によっては交通機関を利用することもあるでしょう。交通機関の利用方法・金銭管理が難しい場合は、ADLで自力歩行できると評価されていても「できないIADL」となります。このように、IADLは自立した生活を送るうえで欠かせない要素となります。

QOLとは? ADL、IADLとの関係性

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ADLとともに高齢者の自立支援でよく使われるのはQOLです。ここからは、QOLの言葉の意味、ADL、IADLとの関係性についてご紹介します。

●QOLは本人の主観的な幸福感を重視

QOLとは、Quality of Lifeの略で「生活の質」を意味する言葉です。生活の質、すなわち本人が幸福と感じられる生活を送っているかが重要になります。つまり、ADLは動作ができるかどうかが中心の考え方に対して、QOLは本人の幸福感を重視した考え方です。

●ADLとIADLはQOLに大きく影響する

QOLとADLやIADLは、それぞれが密接に関係しています。ADLとIADLが向上すると、自分でできることが増えるためQOLも向上しやすくなります。自立した生活が送れると「自分のしたいことができる」という自信につながり、生活への意欲が向上するためです。反対に、ADLとIADLが低下するとQOLも低下しやすく、QOLとADLやIADLは相関関係にあるといえます。

●とくにIADLはQOLの維持・向上に役立つ

QOLの維持・向上のためには、とくにIADLを高めることが重要です。自立した生活を送るためには、ADLだけではなく様々な要素が組み合わさった動作をする必要があるためです。そのため、「外出ができる」「食事・料理が楽しめる」「排泄が自分でできる」など、一連の動作をできるような支援の方法が介護業界で模索されています。

QOLを向上させるための4つのポイント

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介護スタッフや介護施設に求められていることは、提供する介護サービスにより被介護者のQOLを向上させることです。QOLを向上させるためには、以下の4つのポイントを押さえましょう。

●QOL向上のための自立支援をする

1つ目のポイントは、QOL向上のための自立支援を意識することです。介護サービスの目的は「介助をしてあげること」ではなく、その人らしい生活をサポートすることです。QOLの向上を意識することで、自立支援につながる適切な介護サービスが提供できるでしょう。

●サポートしすぎないように気をつける

介護スタッフが「できないADL」をサポートすることで被介護者は、より良い生活を送れます。しかしながら、サポートしすぎると「できるADL」の機会を奪うことになりかねず、生活に対する意欲低下や既存能力低下につながってしまいます。介護者がサポートしすぎないように気をつけることも自立支援・QOLを高めるためには重要なポイントです。

●QOLは本人が望む生活を念頭におく

QOLは本人の幸福感を大切にする考え方です。そのため、QOLを向上させるためには、本人が望む生活を念頭におくことがポイントです。本人の望む生活に近づくようにADLやIADLを高めるための自立支援をしましょう。どれだけ介護スタッフや介護施設がADL向上に役立つと思っても、本人が望む生活とかけ離れていてはQOLの向上にはつながらないからです。

●効率的に自立支援を促すための環境を整備する

最後のポイントは、効率的に自立支援を促すための環境を整備することです。

例えば、高齢者の方でも歩きやすいように、滑りにくくつまずきにくい床材を選択することが挙げられます。安心して歩行できるようになれば、自力で移動する意欲を高めることにつながります。

また、トイレ出入口の開口を大きくできれば、車イスのまま出入りできたり、トイレ介助がスムーズになるなど、ADLとQOL改善に役立つケースがあります。そうしたサポートにつながるドアをこちらの記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
⇒「引き戸にも開き戸にもなる新発想のドアで高齢者施設トイレを使いやすくコンパクトに

さらに、快適に過ごせる生活環境を整えることでもQOLは向上します。意外と見落としがちなのは、室内の湿度環境です。夏場のジメジメ、冬場の暖房による乾燥は、高齢者が自分で行動する意欲を削いでしまいます。調湿機能をもった天井材や壁材などの導入も検討してみましょう。

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