快適な空間「コンフォートゾーン」とは?ストレス解消、リラックスできる歯科医院の空間づくり

コンフォートゾーン

病院やクリニックの待合室は、患者様が長い待ち時間を過ごす場所であり、診療中は誰しも少なからず不安やストレスを感じるものです。特に歯科にかかるときは治療への不安もあり、待ち時間が長いほど緊張が高まってしまう方も多いかもしれません。
そのため、患者様が不安を感じながら長い時間を過ごす待合室や診療室の環境が快適かどうかは、患者様の歯科医院への満足度に直接影響を及ぼします。いくら技術力が高くても、院内の環境が悪く患者様が居心地の悪い印象を持つと今後来院をためらってしまう場合があり、そういった患者様が増加すれば中長期的な患者数の減少につながる可能性もあります。

そうした事態を防ぐために、院内環境をリラックスできるコンフォートゾーンにすることが求められます。そこで本記事では歯科での例をあげつつ、コンフォートゾーンについてご紹介致します。

歯医者さんに望まれる院内環境とは

他の病院やクリニックと比較しても、歯科での治療は緊張するという方が多いでしょう。歯を削るあの「キーン」という独特の音やにおい、口の中にいろいろな機材を入れられる感覚に対して、苦手意識がある方は少なくありません。 そのためどんなに良い治療を行ったとしても、患者様の治療への満足度に関して不安に思っている歯科医師の方も多いのではないでしょうか。

そこで、患者様の満足度の傾向について、2つの調査結果を見てみましょう。

・歯科の治療は約8割が満足

コンフォートゾーン

公益社団法人日本歯科医師会は、2020年7月30日から8月1日にかけて全国の15歳~79歳の男女を対象に実施した「歯科医療に関する一般生活者意識調査」の結果を公表しています。
現状の歯科医療を取り巻く環境や生活者の意識を把握することを目的としたこの調査によると、直近の治療に対し歯科医師・歯科医院へ「満足」と回答した患者様は全体の約8割と、意外に多くの患者様が満足しているという結果が得られました。

そのおもな理由としては「治療の上手さと丁寧さ」と「治療前の説明」が挙げられ、「受付やスタッフの対応の良さ」も上位5項目内に含まれています。これは歯科医院に通う患者様が、歯科医師が高い治療技術を持っていることを実感し、その治療内容や説明・接遇にも満足していることの表れと言えるでしょう。

・患者満足度には院内環境が影響

また、歯科における患者様の満足度に関しては、別の要素が大きくかかわっていることがわかる調査結果もあります。

医療や歯科分野に様々なサービスを提供している株式会社メディネットが、平成24年7月から平成24年12月までの間に9か所の歯科医院で外来患者様800名に対し行ったアンケート調査から得られたレポートを発表しています。その結果は大変興味深いものです。
これによると、歯科医院に対する患者様の満足度に関し、より相関関係が強いのは「診察室の環境」(相関値0.918)「待合室の環境」(同0.841)と、「診断や技術」(同0.731)を上回るという結果でした。
また一般的に満足度に直結すると考えられがちな「待ち時間」の相関値は0.781と、「診断や技術」以上ではあるものの、診察室や待合室の環境を上回るものではなかったことも興味深い点です。

この様な結果から考えると、多くの患者様にとってまた来たい、治療を続けたいと思える歯科医院の条件は、待合室や診療室の環境など、診療以外の部分にも力を入れている歯科医院であると言えます。

院内をコンフォートゾーンにして患者満足度の向上を

コンフォートゾーン

歯科医院内の環境を考えるうえで、参考になるのが「コンフォートゾーン」という考え方です。

・コンフォートゾーンとは

コンフォートゾーン(Comfort zone)とは、「快適な空間」を意味し、心理学などではストレスや不安が無く限りなく落ち着いた精神状態でいられる場所を指します。建設業界では建築物の快適性評価に関連して使用されることがあります。

・スタッフにも重要なコンフォートゾーン

コンフォートゾーンを整えることは、患者様だけではなく歯科医院のスタッフにとっても大事な要素となります。

病院やクリニックではなかなか人材が定着せず、人手不足で悩んでいる施設も多くあります。その要因のひとつとして、業務が多忙で、ストレスを感じやすい環境があげられます。

コンフォートゾーン

そんな中でスタッフが院内を自分の居場所と思ってもらえるようなコンフォートゾーンをつくることは、人手不足解消の手助けとなるかもしれません。また、スタッフの満足度が高ければ、自ずと患者様への対応も良くなり、医院全体の印象も良くなるでしょう。
患者様にとっても、また働くスタッフにとってもストレスのない環境にするために、コンフォートゾーンという考え方を取り入れてみるのはいかがでしょうか。

院内をコンフォートゾーンにするには

コンフォートゾーン

では、院内をストレスのない環境にするためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。

・院内環境で患者満足度を高める

環境整備として、例えば待合室の場合であればソファやイスが十分にあり、他の患者様と鮨詰め状態にならずにゆったりと過ごせたり、待ち時間を長く感じさせないため雑誌などがきちんと整えられていたりするかどうかは重要です。

また何年も前の張り紙がそのまま貼りっぱなしであったり、待合室全体が壁色や照明の印象で薄暗かったりなど、患者様が歯科医院に対して不安や不快に思う要素は極力無くしていくと良いでしょう。

診察室に関しては、歯科治療の特色として患者様の口の中に器具を入れることになります。そのため水回りに水滴や汚れが無く器具が整然と置かれているなど、清潔な印象を抱く工夫が重要です。

こうした例の様に、コンフォートゾーンを基に患者様にストレスを感じさせない待合室や診療室に整えていけるよう、工夫を凝らしましょう。

・患者様の要望を参考にコンフォートな環境づくりを

また、患者様に院内環境についてのアンケートをとり、できるだけその要望を実現するのも効果的です。
予約制にして待ち時間を短縮したり、診察室や待合室をより明るく清潔に改善したりするほか、患者様にストレスを与えやすい要素の聴覚・嗅覚への配慮もあると良いでしょう。
静かな待合室や廊下などで、ドアや壁の向こう側にいる人物の声が聞こえると、自分の診療中にも歯科医との会話が他人に聞かれているのかと不安に感じます。さらにスタッフ同士の何気ない会話であっても、患者様の受け取り方次第では不安や悪印象を持たれてしまう可能性もあります。ドアを防音タイプのものにしておくと、音漏れがしにくくなり、患者様のストレスとなる要因を減らすことができます。
また歯科独特のにおいを嫌がる方は多く、においを嗅いだだけで憂鬱に感じる患者様もいますので、消臭機能を備えた天井材などを採用すると効果的です。

患者様に院内がコンフォートゾーンと思ってもらうためには、医療技術の高さやスタッフの対応の良さに加え、居心地の良い待合室・診察室づくりが重要です。総合的にみてストレスを感じさせない環境を用意できるよう、できるところから改善していきましょう。

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