星野リゾートに学ぶ、『ダイケン健やかおもて』の使い方

ダイケン健やかおもて

星野リゾート BEB5軽井沢|長野県

“和紙畳”が解き放つ日本建築の真価

「靴を脱いで、畳の上で寝転がれるホテルの客室」。そんな日本的なくつろぎを体感できるホテルがあります。
その1つが「星野リゾート BEB5軽井沢」。今回は、設計を手がけた佐々木達郎氏に、お話を伺いました。

  • お話を聞いた方

  • 佐々木達郎
  • 設計:佐々木達郎建築設計事務所
    佐々木 達郎 氏
    千葉工業大学修士課程修了後、東環境・建築研究所に入所。
    「星のや軽井沢」をはじめ、日本各地や海外において住宅や別荘、ホテルなどの設計に携わる。
    その後、2013年佐々木達郎建築設計事務所を設立。
    「OMO5東京大塚 by 星野リゾート」をはじめ、「星野リゾート BEB5軽井沢」「星野リゾート BEB5土浦」、2021年にオープンした「OMO5沖縄那覇 by 星野リゾート」などホテルのみならず住宅や店舗など幅広く設計を手がけている。

星野リゾート BEB5軽井沢の設計と客室について

 

宿泊特化型のホテルといえば、客室の広さはせいぜい20m2程度。狭い空間に大きなベッドが置かれ内装は白で単調に纏められています。旅の疲れを癒やすのは難しいもの。そんな固定概念を覆して設計されたのが、星野リゾートが展開するカジュアルブランドBEB・OMOの客室です。

設計を手がけたのは建築家の佐々木達郎氏。「宿泊特化型の客室でもくつろげるように、しかも日本らしいくつろぎをイメージしました。まずは、靴を脱いで床座で過ごせるようすること。加えてヒノキの構造材を家具的に設えることで、空間に柔らかさを与え、木材に身を預けて安らげるようにしています」。

ダイケン健やかおもて

「星野リゾート BEB5軽井沢」の中庭。軽井沢の豊かな自然を、建物内に引き込めるように、建物は変形のコの字形になっている。ウッドデッキのスペースでは、宿泊者が思い思いに過ごすことができる。

したがって、床材の選択は重要です。採用されたのは“和紙畳”として知られる『ダイケン健やかおもて』。
自然な風合いを持ちながら、編み方や色柄は多種多様。触り心地のよさも折り紙付きです。

ダイケン健やかおもて

「星野リゾート BEB5軽井沢」の客室“ヤグラルーム”。左手には国産ヒノキの集成材 (90mm角)で組み立てた高床式ベッド“ヤグラ寝台”、右手には90mmの奥行きを利用した見せる壁収納“仕掛け壁”があり、床には『ダイケン健やかおもて 清流カクテルフィット』の〈白茶色×灰桜色〉を採用している。「自然のなかに存在する色は複雑。周囲の自然環境との調和を考えれば、こうした複数の色を混ぜ合わせたものを使うのがよいと考えています」(佐々木氏)

 

ダイケン健やかおもて

ヤグラルームの平面図。20m2程度の限られた空間を立体的に活用することで、“和紙畳”の上でくつろぐスペースを最大限に確保していることが分かる。建物は木造在来軸組構法(1時間準耐火構造)であるが、床材に軟らかい"和紙畳"を使用することで、階下への音の響きを軽減する効果もあるので、木造のホテルに最適な素材の1つといえる。

星野リゾートのBEB・OMOで採用された『ダイケン健やかおもて』

ダイケン健やかおもて

“やぐらルーム”は宿場町の旅籠から着想を得て、「OMO5東京大塚 by 星野リゾート」で誕生したもの。都市空間の中での癒やしを実現するため、客室のインテリアに木材(ヒノキ集成材)を取り入れ、“和紙畳”も採用。窓際のベッドから東京の夜景を楽しめる。

 

ダイケン健やかおもて

「星野リゾート BEB5土浦」は土浦駅(茨城県)に接続するサイクリングホテルであり、ビジネスホテル目的での利用も多いホテル。インテリアには合板など、建築の下地に使用される“インダストリアル”な素材を採用。床材も“和紙畳”で、ワーケーション向きの設えとなっている。

 

ダイケン健やかおもて

「OMO5沖縄那覇 by 星野リゾート」では、日差しの強い沖縄の風土が感じられるように、壁紙はビビットカラーを基調にしている。やぐら寝台の壁面にも斜材(ヒノキ)を入れるなどして、南国らしい雰囲気を演出。こうした主張の強いインテリアにも、ナチュラルテイストの“和紙畳”はよくなじむ。

支配人が語る 、“和紙畳”の使い心地

 

ホテル使いを考慮すれば、その耐久性とメンテナンス性は大きな利点でしょう。「BEBやOMOのホテルでは、ワインなどを持ち込んで床座で過ごすシーンを想定しており、床の汚れや傷を考慮しておく必要があります。“和紙畳”は、撥水性に優れているのでメンテナンスが楽。開業してから2年以上経過していますが、傷つきにくく、色が変わりにくいので、畳表の交換が必要なく、客室をきれいに保てています」(星野リゾート BEB5軽井沢 総支配人 蕪木翔太氏)。
星野リゾートからの学び。それは住宅以外の建築にも"和紙畳"を使用することの価値ではないでしょうか。
「内装材は体に触れる部分なので、素材の選択には常日ごろから気をつけていますが、木材や畳など、日本人が長い歴史のなかで親しんできた素材に触れた経験がない若い世代の人も少なくないと思います。ホテルをはじめとする住宅以外の空間で“和紙畳”を使う機会が増えれば、日本の建築がもつ魅力を世界中に伝えられるし、文化の継承にもつながると考えています」(佐々木氏)。

※ 大建工業の“和紙畳”は、機械すき和紙を使用しています。コウゾ、ミツマタなどを使用した手すき和紙ではありません。

「建築知識」2022年1月号 掲載

 星野リゾートの施工事例写真はこちらからご覧いただけます。

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