高齢者の暮らしをデザインする設計

高齢者 施設 自立支援

少子高齢化が進む日本。2024年には国民の3人に1人が65歳以上になり、2025年には認知症の患者数が800万人にもなると言われています。有限会社 RX組 代表取締役の青山 幸広氏は、長年にわたり介護と保育の現場に携わってこられました。特に高齢者施設においてはスタッフの介護技術向上のみならず、介護を受ける利用者の方たちを取りまく環境についても理想の姿を追求されてきました。今回のセミナー動画では「高齢者の暮らしをデザインする設計」をテーマに、生活シーンごとに高齢者の「できる」を引き出す工夫、寝たきりを作らない備え、多世代交流の場所づくりなど、施設設計に留まらない様々なヒントを紹介いただきます。

  • お話を聞いた方

  • 青山
  • 有限会社RX組
    代表取締役
    青山 幸広 氏

これからの高齢者施設のあり方

高齢者施設の設計については、一般的には建物だけをパッケージで用意して、外の空間については特に検討しない、というパターンが多いんですね。こうした場合は、屋内もメリハリがなく単調で、無駄な空間が非常に多いということになりがちです。

大切なのは、基本構想から自分たちで考えていくこと。そこに過ごす利用者の方たちにとって、どんな暮らしが「豊か」であるのか。そのことを設計士さんはじめ、いろいろな方たちと共有しながら話し合い決めていくことが重要です。その際には、屋内だけでなく施設の外にどのような空間を設けるか、外の風に当たれる場所や畑づくりやガーデニングを楽しめる場所を盛り込めそうか、ということも検討いただけるとよいですね。

また、高齢者施設のポイントとなるのは動線です。高齢者の場合は生活動線が長くなると疲れてしまいますから、いかにコンパクトな動線を設けられるかが重要です。

高齢者 施設 自立支援

これからの高齢者施設の設計に求められるポイント

キーワードは「居心地の良さ」と「自立支援」

従来の施設は、ビニル素材を採用することでメンテナンス性を優先している設計が多いです。ここは、木質の素材感を楽しめるものや、エコな素材などが採用されるようになるとよいですね。また、白い壁に囲まれた生活感のない空間よりかは、落ち着ける空間づくりを心がけたい。

四季のある日本で外の景色が見えにくいつくりになっているのももったいないです。屋内と屋外をつなげるなどして、狭い広い、静かにぎやか、暗い明るいなどが選べる空間づくりがされているとよいと思います。もし雨が降っていたら、そのことを見て感じられる場所があること。雨だね、じゃあ傘を差して行きましょうとか、そういうやりとりがあるだけでも豊かさが違ってきます。

床面はコンクリにシートを貼るのみで、転倒時の安全性について配慮したつくりになっているところは意外と少ない。畳の部屋があれば、そこに座り、立ち上がるという動作につながります。そんな空間を設けることで利用者の自立につなげるという視点もあるかと思います。

高齢者 施設 自立支援

望ましい空間づくりのポイント

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青山幸広