【第4回】設計前に抑えておきたい 高齢者施設スタッフが感じる床の「困りごと」

床 汚れ

床に関する「現場の困りごと」

●施設特有の汚れに設備面から備えておく

身体介助・生活援助の必要な方が多く暮らす高齢者施設の床には、他の公共施設とは少し異なる機能が求められます。その代表的なもののひとつとして挙げられるのが「汚れの拭きとりやすさ」です。拭きとり作業が発生するのは食堂やトイレなど共有スペースのみならず、高齢者が多くの時間を過ごす個室も含まれるため、とても広い範囲がその対象となります。

●半数以上が「食べ物・排せつ物の汚れ」に困っている

高齢者施設の床に関する「困りごと」について、現役の高齢者施設スタッフへDAIKENが独自調査を行ったところ、半数以上となる55.2%の方が「食べ物や排せつ物の汚れがつく」を挙げていることがわかりました。

◎床についての「困りごと」を教えてください

床 汚れ

高齢者は食事中に食べこぼしをしていることが多くあります。食事を口へ運ぶ間(摂食時)や口に入れる時(捕食時)にこぼしてしまったり、口に入っても舌や唇がうまく使えずこぼれてしまったり(咀嚼時)、飲み込んだタイミングで飛ばしてしまったり(嚥下時)と、理由はさまざま。床に落ちてしまった食べ物はさっと拭きとることが必要ですが、食事介助のタイミングによっては、十分に落とし切れていないケースがあるかもしれません。

また高齢になると、排尿・排便に課題を抱えることが増えてきます。足腰が弱って動作が遅くなりトイレに間に合わないことや、お通じを改善する薬によってお腹がゆるくなっていることも。こちらも早く拭きとって、さらには消毒液で丁寧に掃除する必要があります。

●凹みやキズ、タイヤや杖のゴム痕が残ってしまう

続いて40.0%の方が、「凹みやキズがつく」「車いすのタイヤや杖のキャップの痕がつく」ことに困っていると回答しています。

医療器具や大量の食事を運ぶためにキャスター付きの台を移動させる、椅子やテーブルを引きずって移動させるなど、大きく重い機材を引きずることも多く、凹みやキズの付く頻度が高い現場の様子もうかがえました。

また、フローリングなどの床に一度ついた黒いゴム痕は落としにくいことから、近年車いすのタイヤは色が残りにくいグレーや白に近い色のタイヤが増えています。また、歩行器のタイヤも痕の付きにくい素材が選ばれているようです。しかしまだまだ黒いタイヤの車いすも現役で使われていることもあり、このような声が挙がっているようです。

「その他」に寄せられた回答としては、「気温や湿度などの環境変化で滑りやすさが変わる」という声がありました。

【設備面でできる「困りごと」対策の例】
床に付いた食べ物や排せつ物の拭きとり作業、そして人やモノの移動に伴うキズやゴム痕が残ってしまうのは、施設内の共有スペースのみならず、高齢者が日常を過ごす個室も含まれます。よって、汚れや凹み、キズが付きやすいエリアには多機能な床材を選ぶことで、日々のふき取り作業やメンテナンスにかかる時間が短縮できるでしょう。

・日常生活で発生する汚れが落ちやすい床
・凹みやひっかきキズが目立ちにくい床
・凹みやひっかきキズが付きにくい床

一日三度の食事に加え、おやつや調理レクリエーションの時間にも食べこぼしが発生します。排せつに関しては日に何度もケアのタイミングが発生します。この「日に何度も繰り返すことがある作業」のプロセス見直しこそが、業務の簡素化へと繋がります。スタッフの生産性を考える際、汚れが落ちやすいことで作業負担が減り、作業時間の短縮がかないます。結果として、労働時間内における生産量を最大化することができるでしょう。

recomended item

おすすめ製品