保護猫カフェや猫の譲渡会に高まる関心。猫エイズにも正しい知識を

保護猫カフェ以外にも、“譲渡会”という保護猫と里親をマッチングさせる場があります。

保護猫の譲渡会は動物愛護団体など、多くのNPO法人によって開催されており、その会場も全国各地となっています。基本的には屋内で開催され、実際に保護猫と触れ合うことはもちろん、保護された経緯や性格などもスタッフから聞くことができるので、「里親になりたい！」という多くの方が参加します。

また、譲渡会に限らずネット上での譲渡についても審査などがあり、その条件は年々厳しさを増しています。ごくまれですが、譲渡先で不幸な思いをすることになる猫もいるので、これはそういうかわいそうな猫を出さないための措置です。しかし、心から猫の幸せを考えている愛猫家は、面倒な審査にも快く対応してくれる場合がほとんど。こうした厳格な条件のおかげで、心ある人が里親として名乗り出てくださいます。譲渡会や保護猫カフェを通して、多くの保護猫が新たな家族と出会い、新たな一歩を踏み出しているのです。逆に譲渡の条件があまりにも緩い場合は注意が必要です。猫たちにとって好ましくない人たちも、まれに譲渡会と関わる可能性があるからです。猫たちのために厳しい目で里親をチェックすることは、それ自体が猫に対する強い愛情の表れなのです。

譲渡会はコロナ禍においても実に精力的に行われています。もちろん一つでも多くの命を救うためです。環境省の発表によれば、平成元年における犬猫の返還譲渡率は、たった2%しかありませんでしたが、令和2年には68.5%という驚異的な数字に跳ね上がっています。譲渡された猫の頭数も、令和2年には犬が24200匹、猫が25400匹と逆転しています。どれだけ多くの愛猫家が頑張ってきたのか分かりますね。しかし、今もなお飼い主の見つからない猫は、残念ながらやがて命を落としてしまいます。そのため、増え過ぎないように去勢して頭数をコントロールしたりして、猫の里親を探している愛猫家たちは懸命に奮闘しています。こうした活動が少なからず実を結んできているからこそ、保護猫カフェや譲渡会に寄せる関心と期待がますます高まっているのです。

ほとんどの保護猫カフェは、譲渡会などを行う外部のＮＰＯなどと連携し、保護猫たちの里親を探すために頑張っていらっしゃいます。中にはFIVという“猫エイズ”への偏見を取り除く啓蒙に取り組みながら、FIVの猫たちの里親を見つけるための“尊い”活動を積極的に展開されている施設も多数存在します。

FIVとは、猫免疫不全ウイルス感染症、通称“猫エイズ”のことです。一度体内に入ったFIVウイルスはいなくなることがなく、感染した猫は生涯を通して「FIVキャリア猫」として生きていくことになります。

なお、「キャリア」とは、ウイルスや細菌などを引き起こす病原微生物を体内に持っていることを表す医療用語で、ウイルスが半年以上血液中に残り、生涯を通じて感染が続く状態をいいます。つまり、猫エイズのキャリアというのはエイズウイルスに感染している猫のことを指しているのです。

ただし、FIVキャリアだからといって、すべての猫が発症するわけではありません。FIVウイルスは潜伏期間が長いため、発症せずに天寿を全うする猫も存在します。実際、FIVウイルスが陽性の猫と陰性の猫では平均寿命にほとんど差がなく、発症しない限りは他の健康な猫と変わりなく過ごせることが分かっています。

まず、猫エイズに対して私たちの正しい理解が大切です。「エイズ」の名称から、人に感染するのではと心配する方もいるようですが、猫エイズウイルスは、人や犬には感染しません。そして感染力も弱いため、猫同士であっても飛沫感染や空気感染の心配はまずありません。また繰り返しになりますが、発症率も低く、生涯発症しないまま天寿を全うする場合もあります。

とはいえ、同じ屋根の下で暮らしている以上、猫同士で感染する可能性がゼロとはいえません。まずは先住猫のワクチン接種を行い、なるべくお互いが別の空間で暮らせるよう、生活環境を整えることが大切です。そのうえで良質な睡眠や栄養バランスの整った食事、適度なスキンシップなどを通して、猫にストレスを溜めさせないようにしましょう。

「保護ねこカフェもりねこ」さんではFIVキャリアの猫が生活するための「もりねこプラス タイコウクロノーブキャットシェルター」という施設を別フロアに設置しており、感染している猫もFIVキャリアの猫も安心して過ごせるように環境を整えています。

もりねこ

「ネコリパブリック」さんでは、FIVキャリアの猫を“りんご猫”と呼び、偏見をなくすための活動をしています。

ネコリパブリック東京お茶の水

ネコリパハウス高円寺

FIVキャリアの猫をただ恐れるのではなく、病気の理解を深めて行きたいですね。

心ない噂がひろまったことで、奄美大島の猫たちに起きた悲劇をご存知でしょうか。世界遺産登録を目標とした奄美大島で始まった「ノネコ管理計画」。自然の山の中で暮らす絶滅危惧種とされる在来種、アマミノクロウサギやケナガネズミなどの保護を理由とし、昔から奄美の島民と共存し生きてきた猫達が殺処分されたのです。

多くのボランティアの方々の活動により、2021年7月時点では殺処分ゼロ。この奄美大島の猫を救うための活動は奄美大島近辺だけでなく、遠く離れた横浜でも行われていました。

クラウドファンディングで、「奄美大島の猫を殺処分から救う為の猫カフェ設立」というプロジェクトの資金を募って誕生したのが、譲渡型猫カフェ「ケット・シー」です。

ケット・シー

スタッフは全員無給で保護猫のお世話などに従事しており、奄美大島の猫だけでなく多くの保護猫が救われました。

まだ多くの自治体が殺処分を行っており、その猫たちを救うために多くの方々が活動をしたり、里親として保護猫を迎えたりしています。猫との生活を考えている方は、ぜひ一度譲渡会や保護猫カフェを利用してみてくださいね。

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