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“山を活かす”を目標にしたオロチの地域創生 ~株式会社オロチインタビュー~ 前編 2018.07.23 くらしの声 “山を活かす”を目標にしたオロチの地域創生
~株式会社オロチインタビュー~ 前編

中国山地の中央にある鳥取県日南町は、町面積の9割が森林。3万ヘクタールある森林資源を生かし、林業を基幹産業として活性化するのは命題だった。林業作業者の高齢化が進む中、豊富な森林資源を将来にわたって維持管理、活用していくために会社を立ち上げた、株式会社オロチの森社長に、木材の在り方と日本の山林再生について訊いた。

CHAPTER:01 いま、森林資源を本気で考える時代になった

株式会社オロチ 代表取締役社長 森 英樹氏株式会社オロチ 代表取締役社長 森 英樹氏

現代人は「林業」そのものに、かなり疎遠になっています。極端かもしれませんが、「山林には花粉症の原因となるスギ・ヒノキがたくさん生えている」……そんな認識をもった方が、かなり多いのではないでしょうか。そこで、まずは現代日本の林業について初歩的なところを教えていただけますか。

森社長:いま、日本の森林資源は非常に充実してきています。

先の国会(平成30年1月)において、総理大臣の施政方針演説の中で「農林水産新時代」という言葉が使われ、「戦後以来の林業改革に挑戦して、豊富な森林資源を有する我が国の林業には、大きな成長の可能性がある」との発言もありました。
なぜ、このような表現になったかというと、昭和20年(1945年)に終戦を迎え、高度経済成長期の需要とあいまって、昭和35年ぐらいまで、日本の山はほぼ「禿げ山」になりました。その後に植林活動が行われて、昭和40年頃までに植えられた木が約半世紀ほどかけて育ち、約一千万ヘクタールもの“植林資源”になっています。山に植樹して人工林を作ってきたわけですが、「植えて育てる時代」から「伐って次の循環をつくる時代」へ、いま変わってきているからなんです。

一方で需要の面から見ると、戦後、山に木はないにもかかわらず、住宅を建てるために木材が必要としたので、外国材の輸入に頼りました。この依存度はどんどん高まり、昭和の終わりごろには、製紙原料のパルプ・チップを含め、木材の自給率は20%近くまで下がってきました。つまり80%を外国に頼っていた……と。
しかし、さきほど述べたように、現在の約一千万ヘクタールもの“植林資源”がありますので、林野庁は、自給率を上げて50%を国産材でまかないたいという指針を出しています。

  • 鳥取県日野郡日南町に位置する株式会社オロチ鳥取県日野郡日南町に位置する株式会社オロチ
  • 約7,380平米もの広さを誇るオロチ第一工場約7,380m2もの広さを誇るオロチ第一工場

なるほどよくわかりました、その林業におかれた状況をふまえて、森社長は、森林資源を中心とした「地域創生」に取り組んでおられていると聞いています。

森社長:そうですね。まず、林業と地域社会の関係を語ると、昭和20~30年代の田舎には現金収入があまりなかったのですが、森に木を植えることや下刈りをしたりすると、ある程度の現金収入が発生しました。農業をしているので食べ物には困らないけれど現金収入がない、という農家にとっては、植林や山の手入れをするということで現金収入を発生させるという仕組みは、非常に有用なものでした。また、戦後の荒廃した山々に対して植林をすることは国土緑化運動として行なわれ、その象徴的行事として、天皇陛下による「全国植樹祭」が毎年開催されています。

しかし、わが国の高度経済成長の中で、若い人は都会で仕事を選ぶようになって労働力の流出がはじまり、だんだんと田舎の労働力はなくなり、たとえ2~3%の若い人が残っても、せっかく植えた山林に手がまわらない状態になりました。特に、山あいの過疎化した町・村では、木は育っているけれど、まるで手入れがされないという山林が増えていきました。手入れされない植林地は、間引きされず、ぎゅうぎゅうに混み合った状態になり、杉の木は生命の危機を感じて「枯れる前に」と花粉をたくさんつけ、花粉をたくさん飛散させるようになったわけです。

そんな状況下で、平成になって国・県の補助金も充実し、間伐が進められるようになりましたが、コストの問題と、人手不足の問題で、間伐は想定通りに進みませんでした。森をもっとうまく活用できれば、以前のように「現金収入」の道が広がっていきます。

なるほど、間伐材が木材として売れて、それでさらに森林整備が進めば、「地域創生」のサイクルが形成されますね。

森社長:はい。そもそも、日本の森林資源は豊富で、世界屈指です。フィンランド・スウェーデンに次いで3位につけています。なのに、木材自給率がまだ30%程度です。ここで、売れる木材、売れる仕組み、そして将来を見据えた森林整備を進めれば、資源はあるのですから、自給率は50%近くになると思います。

工場内には木材の匂いが充満している工場内には木材の匂いが充満している

しかし、自給率の向上ということになると、外国木材との勝負となりますね。

森社長:はい、インターナショナルに考えると、価格競争は避けて通れません。ヨーロッパやアジア諸国から入ってくる木材と競争するとなると、やはり安いもの、あるいは同価格でないと勝負になりません。ヨーロッパの木材が1万円なら、日本の木材も1万円と言わないと、住宅メーカーも国産材を使ってくれません。しかも、日本の木材の品質は、決して優れていると断言できるものではないのですから……。

どういうことでしょうか。

森社長:日本の人工林は7割近くが杉です。杉は比較的まっすぐ育ちますが、実は柔らかいし、十分乾燥しないと「暴れる(反ったり、歪んだりする)」素材です。強度検査をすると、外国産の木材とほぼ同一水準か、杉のほうが弱いという材料となります。

もちろん、木曽檜や秋田杉などのブランド木材の値段は、外国材の5倍も10倍もしていた時代もありましたが、今日ではそのような高級木造住宅の需要はそれほど多くはありません。高級ブランド木材は無理に安価で「売りたくない」という心境になってしまいます。そうすると、山主さんたちは「木は大きく育ってきたけど、売るに売れないから、何の収入もない」というジレンマに陥ってしまったわけです。

しかし、いま木がたくさん育っているなら、「50年育った木からどんどん伐って消費していけばいいじゃないか」と、素人考えでは思うのですが……。

森社長:まさにその通りなのですが、ポイントは「価格競争力があるかどうか」ということです。樹木は資源として育ったけれど、切り出して、加工して、付加価値をつけて「商品」という出口をつくらなければ売れません。売れなければ、地域発展にはつながりません。

CHAPTER:02 品質、材質、強度をクリアした「強い木」を作るために

工場敷地内には木材が所狭しと置かれている工場敷地内には木材が所狭しと置かれている

付加価値をつけるために、加工は必須ということですか?

森社長:はい。山から木を伐り出しして、すぐに加工して、家を建ててしまうと、後にひずみや反りが生まれて、隙間がでてきてしまいます。

昔ながらの日本の在来工法で建築すれば、柱は乾燥させていなくても、数ヵ月ほどかけてゆっくり建てている間に乾いていきました。それに昔であれば、建てた後に反ってしまっても、大工さんがよく顔を出してくれて、細かなところを直してくれたりしていました。現代にも残る伝統的な木造建築物は、そういった棟梁たちがじっくりと作ることができる時代だったと思います。腕のいい大工さんが、時間をしっかりかけて、いい仕事をして、孫の代まで住めるような家を作る時代だったんですね。

でも、現代はスピード社会です。パッと建ててピシッと合わないといけない……ふすまはピタッと閉まること、ドアはかっちり閉じられること。「隙間ができる」では商売にならないのです。壁が反るとクロスも貼れないわけですし、ヒビなんかが入るのはもってのほかで、大きなクレームになりますよね(笑)。

とくに、平成以降、ますます高気密高断熱の住宅仕様になってくると、エネルギー効率の面からも隙間がないことはさらに重要視されます。さらに、熟練の大工でなくても、工期も短く、簡単に作ることができる素材が望まれだしたのです。

そこで我々は、LVLというエンジニアリングウッドを製造し、日本の杉の問題点を克服して品質を安定させることで、現代の住宅仕様にあった木材を供給することをスタートしました。

  • 桂剥きになった単板桂剥きになった単板
  • これが重なって加工されることで「LVL」となるこれが重なって加工されることで「LVL」となる

それはいつの話でしょうか。

森社長:平成18年(2006年)に会社を起こし工場をつくり、国から「地域再生計画」の認定を受けました。秋田や木曾という既存のブランド地域ではない、この日南町という新興林業地域でスタートしたのは、日南町も行政をあげて「地方創生をやる」と合致したので、この地域での事業化を始めました。地域が作ってきた資源を有効活用し、付加価値をつけて次の世代まで循環していきたいという願いがありました。

私自身、以前より「これからはエンジニアリングウッドを作らないと」とは思っていました。今の住宅メーカーは、寸法が安定し強度が表示できるものしか出荷できません。構造計算を行い、一定の耐震性能が求められる中、それぞれの材料の強度をしっかりと標準化しながら作っていく必要があります。弊社でも認定住宅の基準に沿って作っています。

その品質を認めていただいて、価格に押されて外国産材を使うようになっていた住宅メーカーさんが、再び国産材に目を向けてくれています。「品質、材質、強度基準をクリアできるなら、国産のものを使いますよ」と言ってくれ、市場に受け入れられるようになってきました。

なるほど、次回、メーカーが望むクオリティに合わせた木材を作られた社長が考えている、木材の在り方と「出口」について伺っていきます。