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日本全国、そして海外からも人を惹きつけるタルマーリーの求心力とは? ~パン工房・カフェ タルマーリーインタビュー~ vol.04 2018.06.25 くらしの声 日本全国、そして海外からも人を惹きつけるタルマーリーの求心力とは?
~パンとビール製造、カフェ タルマーリーインタビュー~ vol.04

なぜ、タルマーリーの独自性に、人々は惹きつけられるのか。
中国山脈の山間の場所にもかかわらず、日本中あるいは世界中から人を集める。
現代において多様性が広がり、田舎にあっても活躍の可能性があることが認識されていくことで新しい価値が生まれる。それを実践するオーナーである渡邉格さんにお伺いした。

CHAPTER:01 タルマーリーの「想い」と「場」に引き寄せられて人が集まる

都会の有名なパン屋さんではなく、中国地方の山間にあるタルマーリーを選んで来る理由はどこにあるとお考えですか。

渡邉さん:ここに来られる人の中には、今の社会の中でどこか不安があって、なんとなく「今」を断ち切りたい気持ちで動いているんじゃないかな……。「今、自分自身が生きている価値観とは違うものが存在しているのではないか」と思って、そのヒントを求めてきているんじゃないかと思っています。

というのも、今の社会では、不安をベースにして、売上を上げている商品が増えていると思います。企業側も、不安に対してすごく気を遣い、何を売り買いするにしても安全性が重視されています。
またその不安は、お金を貯める行為そのものの根源にもなっています。私なりの考えですが、社会が単一化してしまって「お金=不安から脱却」みたいな構図になってしまっています。さらに、稼ぐ人と稼げない人のラインが見えてしまって、稼げるレールから外れた人たちは、「この先どうやってこの状況を打破すればいいんだろう」と考えているのでは……と。
ゆえに、「田舎で何かをやってみよう。何かが掴めるんじゃないか」という気持ちが自然と湧き上がっているのでは……と。

なるほど、「何か」を求めてタルマーリーにやってくるわけですか。

渡邉さん:うちには、海外の方、とくに私の本がヒットした韓国の方が多く来られるのですが、「何か」を求める傾向は、とくに強いように感じています。日本と同様に、いい大学に行って、大企業に入るのが成功ルートですが、大企業に入れなかったらドロップアウトして露天商になるしかない……と、彼らは言います。それだけ閉塞感が広がっているようです。

彼らが感じているのは、やはり言葉にできないくらいの不安感で、「今のうちに何かできないかな」「自分にもできるかな」と、自分の中でもやもやしている気持ちのヒントを探しに来るのではないでしょうか。わざわざこんな山奥まで来られて退屈ではないかと思うのですが(笑)。本当にゆっくりされて、雰囲気を味わいにきているのかなと思います。

よく「話したい」といって声をかけられることも多いです。これはとくに韓国の方だけではなく、日本の若い人もそうですが、僕と話をしてみたいと声を掛けてこられるんです。でも、まだ言語化されていないようで、話しをしてみても「今こんなことしています」という自分語りで終わってしまいます。
そこに、僕が勝手に話して答えを出してもしかたがないので、だいたい「がんばってください」ということになります(笑)。

日本の若い世代から中年まで幅広く、都会から田舎に移住して、農業やカフェで生計を立てて生活してみたいという夢を、多くの方が持っていると聞きます。

渡邉さん:そうですね、ときどき講演などをさせていただくのですが、そういう意見は多いように感じます。また、中年以降の世代は、「田舎」ということを知っていますので、都会に住んでいると、なおさらに「帰りたい。もう一回、田舎でゆっくり過ごしてみたい」という方は多いと思います。

CHAPTER:02 タルマーリーでの採用術と、「純粋に労働する」の意味とは

聞くところによると、スタッフは遠方の方を採用されているとのことでした。その理由はなんでしょうか。

渡邉さん:やはり同じように、全国から私たちの想いに共感して採用に応募してくれる人が多いですね。タルマーリーで働きたいと熱い思いを持って……。
前の店舗でも全国から採用募集に来てくれていたんですが、あの時は、まだ働ける場がしっかりできていなかったので、どんどん来て、どんどん辞めていく……という悪循環が発生していました。

職場環境が整っていないということですか?

渡邉さん:はい、コミュニケーションや受け入れ態勢が十分にできていない中で、私が親方として「モチベーション上げろ!」と強く言ったり……と。それは、場ができない状態では決してやってはいけないことをしていたんです。

それに気づいて、ここでは、まず場を整えることによって、落ちついて仕事をしてもらえるような職場環境づくりをしました。
たとえば、パンのチーフは本当にていねいに2年かけて育てました。今はもう完全に任せています。私がいると自分で考えませんから、私が離れていたほうが、彼がつくった方向性でやっていて、いい結果が出ています。

またいま問題になっている長時間労働には、ならないように気遣っています。

スタッフに心がけてもらっていることなどありますか。

渡邉さん:「純粋に労働」を考えてもらいたいと思っています。タルマーリーが利潤を追求しないのであれば、スタッフには「労働に対して純粋な気持ちで働いてもらいたい」と。あまり余計なことを考えず、純粋な気持ちで仕事をして、個々の力を生かしながら、全体のチームワークを生み出していきたいんです。

採用されたスタッフは、ビールやパン作りが希望であっても、かならずパンとカフェの販売からスタートするんです。
それは大げさに言うと、資本主義的な短絡的思考を払い落とす、と言いますか(笑)。販売スタッフとして、お客さんとの会話などを楽しんで、他スタッフともコミュニケーションをうまく取り、純粋に労働に取り組めるようになってもらう。それができてから、はじめてもの作りに移ります。
金銭の損得などを考えずに、本当に「楽しむ」「学ぶ」「働く」ことを考えてもらう姿勢といいますか……。

必要な技術を短期間で獲得したい短絡的思考を払っておかないと、もの作りの現場でも、「レシピをもらえればそれでいい」「何で僕にはちゃんと教えてくれないんだ」などと感じて、イライラしてストレスをためてしまうことが多くあります。
パン作りでも、ただレシピをもらえればいいというものではないんです。仕事に対しての姿勢や気持ちが醸成されてないとやはりうまくいかないんですね。

  • 本当に「楽しむ」「学ぶ」「働く」こと。
    それができるようになってからが
    「ものづくり」のスタート。

それをまず販売側のスタッフとなって学んでいくわけですね。

渡邉さん:はい、そうして、今のスタッフたちが上手くいって、彼らが次の世代に影響をあたえる。たとえば、彼らが独立して、人を雇う立場になって同じような考え方でやってもらえれば、どんどんその考えが広まっていきます。考え方のリノベーションが進みます。

なるほど、次回は最終回として、地域や時代の中でのタルマーリーの役割について聞いていきます。