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『青空市』からつくる「開かれた空間」 ~『バリア』が解き放たれる場所~ vol.06 2018.01.31 くらしの声 『青空市』からつくる「開かれた空間」
~『バリア』が解き放たれる場所~ vol.06

KOBE須磨きらくえんの施設内に流れる、静かで穏やかな日常が一転。この場で開かれる『青空市』では、世代を問わない笑い声やトランペット演奏や歌…賑やかさと華やかさが生まれていました。

CHAPTER:05 「最期」から考える本当にいいくらしとは?

きらくえん理事長・土谷千津子さん(左)と久木田 啓さん(右)

きらくえんが「地域に開かれた施設」であると伺ったのですが、その内容について詳しくお聞かせいただけますか?

土谷さん:高齢者福祉施設と聞くと、「特別な場所」で閉ざされたイメージがあるかもしれません。きらくえんでは、施設内の喫茶店に地域の住人の方に気軽にお立ち寄りいただけるなど、オープンなスペースとして解放しています。また、地域の方と多世代共生を目指しており、それを実現する一歩として『青空市』を開催し始めました。

そうなのですね。2017年10月に、5回目の開催が終わられたとのことですが、催しを始められたきっかけは何でしたか?

久木田さん:きらくえんさんと最初に出会ったときに、「多世代共生の場作り」、「ノーマライゼーションビレッジをつくりたい」と当時の理事長が仰っていました。この建物ができる2年程前でしょうか。それを頭に入れながら、前職の時に施設案内のパンフレットを作らせていただきました。当時、きらくえんさんの理念である「ノーマライゼーション…どのような障がいがあっても、地域の中で一人の生活者としての暮らしを築く」について何度も話し合い、私自身非常に考えさせられたのを覚えています。

土谷さん:そこから時を経て、「KOBE須磨きらくえんで、実際にやってみたいのですが、アイディアはありますか?」と、久木田さんにお願いさせていただきました。何か大きな催し物をする時に、「まだ知らない人」に関心を抱いていただくには「デザインの力」と言うのが大きいので、精通されている久木田さんのお力をお借りしたいなと。

久木田さん:そのときたまたま同じタイミングで、六甲山の間伐材活用の活動について、友人から相談を受けていて、「ノーマライゼーション」と「神戸市民の六甲山」という2つがリンクしたんです。
つまり、六甲山系の中に立地しているこの場所で、自然との共生について考えること。そして、きらくえんさんのテーマである地域との交流、すなわち「多世代共生」がつながると考えました。さまざまな世代・立場の方にも来てもらえるような地域に開かれた場をつくって、これを実現できると面白いなと。こうして「青空市」がスタートしました。

こういった介護施設が、地域に開かれて、多世代交流の中心になることは珍しいと思います。この「青空市」が目指されていることは、どんなことですか?

久木田さん:基本的にノーマライゼーションとは「重い障害があっても共生していく」という理念です。しかし、これを「高齢者としての障害」という枠から広げ、知的・精神発達障害者など、さまざまな障害をもった方にも、自分自身を「これでいいんだ」と受容してもらえる場になったらと思っていました。

土谷さん:日々の暮らしの中で、高齢者や心が苦しくなった方、障害を持った方との接点はなかなか少ないと思うのですよね。その分、『青空市』では、モノを買ったりワークショップでご一緒したりすることで、押しつけではなく、自然とお互いを知り理解し合えるチャンスになっているのではないかなと。楽しいから、つい来たくなるような場にできたらと思っています。

普段接点のない方と自然と交われる場所、素敵ですね。『青空市』を通してどんなことが生まれていますか?

久木田さん:「バリアを超えること」ですかね。

どのようなバリアでしょうか?

土谷さん:青空市に出展された、あるお店のオーナーさんの親御さんのエピソードですが、普段はご病気の後遺症もあって、あまり表に出られないそうなのですが、青空市では、自然と前に出て接客やシール貼りなどを頑張ってらっしゃる姿を見て、オーナーさんや奥さんに喜ばれていました。表に出る機会を作ることで可能性が広がるのだと分かって、嬉しかったと。きっと、ご自身の中にある心の隔たりを超えられる機会になったのかなと思います。

久木田さん:何でも挑戦できる、失敗してもいい。そんな寛容な雰囲気がありますよね。また、障害あるなしに関係なく、何かに対してバリアを持ってしまっている人が、そのバリアを解き放ち、交わりあう場所になればと思っています。つまり、『青空市』は「人と人との価値交換のプログラム」であってほしいと。

価値交換ですか?

久木田さん:共生、多彩なパーソナリティーを認め合う、ということで、毎回、さまざまな方にお声がけをして出店していただいているんです。たとえば、全国展開されている企業にお酒やスープを出していただいたり、個人店からお菓子販売や、アクセサリー出店があったり。ご近所のサークル、子供に関する活動をされている団体、大学生、就労支援施設に通われている方に来ていただいて。

そんな『青空市』で、ワークショップをされていた出店者が会場の空気に感動されて、すべてのブースを回って「ありがとうございました!」とおっしゃっていたんです。それは、その方自身に「貢献感」があり自己受容できたというところがあると思いまして。そこから、皆さんに感謝の念が生まれたのかなと。言われた側も嬉しいですよね。何を具体的に交換するというより、こういう価値を「感じあっている」ということ自体が、価値交換になっているのかなと。

土谷さん:『青空市』の一回目に来た方が次もその次も、また周りの人を呼んで参加されるという連鎖がありますよね。食の仕掛けがあるのも、楽しく集いやすいということがあるかもしれませんね。

なるほど、今後の『青空市』、そして「ノーマライゼーションビレッジ」の目標はありますか?

土谷さん:『青空市』を継続していき、このような催し自体が、皆さんが住んでいる地域でも広がっていったら嬉しいなと思っていますね。また、ノーマラーゼーションビレッジでも、『青空市』のようなバリアを超えた交流が広がればと。世代を超えて、自然と誰かのために自分が「したいからする」、「できることをする」という繋がりが広がるような場づくりを実現できたらと思います。

久木田さん:このような場が広がることで、高齢者、障害、子供…と分けて考える心の中の壁が、どんどんなくなっていったらいいですね。

本当に「明るい未来」だと思います。最後になりますが、今後のきらくえんの施設およびサービス展開について教えてください

土谷さん:現在、施設の目の前に、サービス付き高齢者向け住宅の建設を計画中です。それが終わると、須磨きらくえんとしてはハード面では完成形となりますね。予定では再来年の秋に開設いたします。一部屋30平米以上の賃貸住宅とし、お二人でも入れる様に検討しています。さらにその横に、地域交流スペースを設けて、コンサートや研修など、多機能に活用する予定です。ソフト的には、これまでのノーマライゼーションの流れは維持しながら、神戸市との障害者雇用連携や子育て支援、また多世代にわたって集えるようなレストランなど、「ここに来れば元気になる」という多世代共生の場を作っていけたら…と。

  • 「バリア」を超えた交流を
    広げていきたい。

それが、「高齢者にとっていい暮らし」につながる?

土谷さん:はい。特別なことではなくって、高齢者の小さな願いでも実現できるくらしを作っていきたいですね。おばあちゃんの身体がしんどいときは隣の方がゴミ出しを手伝う、逆に子育でイライラしていたお母さんが、「大丈夫だよ」とおばあちゃんに声をかけてもらうことで安心する、例えばそんなことがあると思います。血縁関係でなくても一人ひとりの心配りで、共生の可能性が広がるのではないかなと。
本来そういう多世代共生が、「幸せの原点」だったのかもしれません。私たちはいま、このきらくえんで、施設・ケア・地域交流をとりまとめて「高齢者にとっていい暮らし」を作り上げています。

長い時間、本当にありがとうございました。