看護師資格は病院・クリニック以外でも活かせる! 企業のオフィスで働く産業保健師とは?

産業保健師

看護師の多くは勤務先に病院・クリニックを選ぶのが一般的ですが、実は看護師資格があるならば「保健師」を目指すことも可能です。

保健師とは、団体内で従業員などの健康改善・維持・促進を目的とした活動を行なう職業で、保健所・保健センターなどに勤める行政保健師、学校に勤める学校保健師の他、民間企業に勤める産業保健師の3つに分かれます。

近年は健康経営という考え方が社会に浸透しつつあり、従業員の健康に配慮した企業が増加傾向にあります。そして、それらを担う存在として、産業保健師の重要性とニーズも増加しています。

本記事では、看護師が働くスタイルの選択肢として、今後広がりを見せる可能性のある産業保健師についてご紹介します。

産業保健師が求められている背景と配置のメリット

健康経営とは、経営の視点から従業員の健康管理を重要項目として捉え、戦略的に実践する経営手法のことです。

この取り組みの具体例としては、健康診断の受診率向上による疾患の早期発見や早期治療、ワークライフバランスの推進、メンタルヘルス相談窓口の設置などを実践し、従業員を心身の両面から支えて健康を守ることが挙げられます。

健康経営は、厚生労働省や経済産業省などの行政が中心となって促進したことで、社会的に認知が進みました。

●働き方改革、健康経営の推進で増加する産業医や人事労務担当者の業務負担

産業保健師

一方、企業内で健康経営の運用・管理を行なうのは人事担当というのが一般的で、医療分野の知見下で管理されている訳ではありません。そのため、人事担当者だけで従業員の健康管理業務を滞りなく行うことは困難です。

加えて、従業員間における健康に対する意識のばらつきも大きく、いくら健康管理を行っても効果が限定的で、疾病を早期発見することの難しさなど、多くの課題を抱えています。このように健康経営を掲げる企業において、それを実践するためには人事担当だけで賄いきれないという現状があります。

また、産業医設置要件のある企業では産業医を設置し、その規模によっては専属の産業医が勤務する企業もあります。しかし、全従業員の健康管理を1名ないし2名の産業医が対応することは困難です。

そのような状況で、産業医や人事担当の負担を軽減しながら従業員の健康管理をより進めたいと考えている企業は、産業保健師を必要としているのです。

●チームとして産業保健活動に取り組む産業保健師

産業保健師

産業保健師は産業医と異なり、法的に選任が義務づけられてはいません。しかし、人事担当者や産業医、時には衛生管理士とチームを組み、分業することで、きめ細やかな健康管理体制が構築可能です。

例えば産業医設置要件がある企業でも、産業医が不在になることがあります。専属でなく嘱託産業医であれば、月に数回の訪問となる場合も珍しくないはずです。そんな時、産業医が担っていた業務の一部を産業保健師がカバーできれば、産業医はより重要な業務に集中することができるでしょう。

合わせて、常勤の産業保健師であれば、従業員の健康相談窓口として、産業医以上の身近な存在になることができます。軽い心身の不調を抱えた従業員への対応は産業保健師が担当し、健康診断で異常が見つかったり、ストレスチェックで高ストレスと判定されたりした従業員の対応を産業医が行なうなど、役割を分担することも可能です。

厚生労働省も、健康経営上の重要な産業保健活動にチーム体制で取り組むことを推進しています。医療の専門家である産業医と産業保健師、そして人事担当者や衛生管理士が、企業内でそれぞれの知見を活かして従業員の健康管理を行なうことは、今後一般的になっていく可能性が高いといえるでしょう。

産業保健師の仕事とは

では、産業保健師の具体的な仕事の内容はどのようなものなのでしょうか。

●従業員一人ひとりに加えて集団としての健康レベル向上も目指す

産業保健師

産業保健活動の目的は、労働条件と労働環境に関連する健康障害の予防、そして労働者の健康保持と増進、福祉の向上に寄与することです。

病院やクリニックなどの場合、看護師は患者さんの外傷や疾患、健康問題が起こった後の治療を担当します。一方、産業保健師は、その前の段階で予兆を察知し、外傷や疾患を予防する役割も担っています。

そのため、産業保健師は企業で働く従業員一人ひとりの健康診断結果に関するデータの管理、外傷・疾患の治療、医療の立場から行う過重労働是正のアドバイス、健康管理、メンタルケアに加え、労働環境の改善を託されることもあります。また、休職者や長時間労働者との面談、安全衛生委員会への出席なども産業保健師にとっては業務のひとつです。

産業保健師は看護師と同じく看護師資格が必要な業務ですが、病院勤務とは業務内容に大きな違いのあることがわかるでしょう。

このような産業保健師の活動によって、心身の健康管理や疾病の早期発見、メンタルなどの健康問題を理由に退職や休職する従業員を減らすことが可能です。看護師と産業保健師では業務に違いがあるものの、医療的な知見をもとにした社会貢献度の高い仕事だという点は共通しているといえるでしょう。

●産業保健師として働くには看護師と保健師の資格が必要

産業保健師

産業保健師になるためには保健師資格と看護師資格の2つが必要です。どちらか一方だけを取得しても、産業保健師として勤務することはできません。

保健師の受験資格を得るためには、大学の看護学系学部で保健師になるための学科を専攻するか、統合カリキュラム採用の看護系専門学校(4年以上)を修了する必要があります。 また、3年制の看護学系の短大を卒業し、看護師試験に合格して看護学系大学の3年次に編入するか、大学院に2年間通学する、もしくは保健師養成所に1年間通うことでも受験資格が得られます。

今後、産業保健師を目指してみようとお考えの看護師の方は、ご自身が保健師試験の受験資格を満たしているかどうか、確認してみるとよいでしょう。

産業保健師の職場は利用しやすい空間に

産業保健師

産業保健師は健康経営を進めるうえで重要な存在であり、前述したような業務を行う勤務場所は、医務室や健康管理室などと呼ばれるスペースです。

社内に健康管理室を設置する場合、産業保健師にとっては働きやすい環境を、訪れる従業員にとっては利用しやすい環境に整えることが重要です。

健康管理室を訪れる従業員は、心身のいずれか、もしくは両方に不調を抱えていることが考えられるため、安全性や衛生面に配慮した環境をつくる必要があります。

例えば戸先木口の角を落とした扉であれば、指や手を挟んでも重大な怪我につながる可能性を抑えられますし、振れ止め機能や床付けのガイドピンがあれば、車椅子などの行動が制限された状況でも安全に開閉できます。

また、衛生面や精神面に対する配慮も大切です。抗菌・抗ウイルス加工などの他に、木目調で明るい色彩といったデザイン性の高い建具を選べば、メンタルの不調を訴える従業員も落ち着ける環境となり、業務の大きな助けになることでしょう。

まとめ

産業保健師

産業保健活動は働き方改革が進んでいく中で、今後ますます重要度が高まることが予想されますが、その中で産業保健師の果たす役割は大きく、医療の専門家として知見を求められる場面も多岐にわたると思われます。

病院やクリニックと同様に、企業で産業保健師が働く場所も、衛生的かつ従業員に配慮した利用しやすい空間にして、産業保健活動をより良いものにしてみてはいかがでしょうか。

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