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【第1回】第一線で活躍する保育の研究者が語る「保育環境づくり」

日本で園舎を新築する場合、子どもたちの発達を助長する豊かな経験のための「場」ということが、どれくらい考えられているのでしょうか。「見守る保育」の啓発活動を行っている新宿せいが子ども園園長、保育環境研究所ギビングツリー代表である藤森平司氏に、子ども一人ひとりを見守る理想の保育空間についてご紹介いただきます。

  • 藤森平司氏

  • コメンテーター紹介


    藤森平司 Heiji Fujimori
    新宿せいが子ども園園長
    保育環境研究所ギビングツリー代表


    大学では建築学を学び、その後資格を得て小学校教諭として勤務。1979年、建築学小学校教員の経験をもとに東京都八王子市に省我保育園を開園。1997年、多摩ニュータウンに、せいがの森保育園を開園。2007年、新時代に必要な質の高い保育の実践を目指し、新宿せいが保育園を開園。
    全国からの見学・研修を受け入れ、主宰する保育環境研究所ギビングツリーによる講習会、ブログ「臥竜塾」などを通して、「見守る保育」の啓発活動を行っている。
  • 藤森平司氏著書

  • 著書紹介

    『まなびのデザイン「くうかん」』

    藤森平司
    世界文化社

    アジアでも注目される「見守る保育」。子どもたち一人ひとりが主体的に活動するための空間づくりが学べます。実際の園での実例写真を豊富に掲載しているので、視覚的にも理解しやすい構成となっています。これからの少子化時代を生き抜く上で、保育施設を運営するかた必携の1冊です。

テーマ「子どものための色彩計画」

色というのは、視覚を通して得られる感覚の一種です。その色のもつ文化は、デザインや視覚芸術上の重要な要素であり、人間の生活そのものよりも、生活をより厚くするものとしての要素が大きいようです。私の園では、各年齢の発達やその年齢の特性から色彩計画を立て、その色を基本として、それぞれの年齢の部屋を構成しています。

保育環境

新宿せいが子ども園の色彩計画

まず、保育室ごとに基調となる色が決められています。0〜1歳児保育室は赤、2歳児保育室は黄色、3・4・5歳児保育室は緑色と水色ですが、なぜその色にしたかには意味があります。それぞれの発達過程での育ちを助長する色を選んでいるのです。

園テーマカラー(職員室・職員、見学者玄関)=青

日常の職員にとってメインの出入り口。落ち着いた雰囲気と冷静沈着な判断が求められます。見学者にとっては、初めて訪れる施設の顔です。そこで、落ち着いた色、人の心を落ち着かせる色である青をテーマ色にしています。

0〜1歳児保育室=赤

0〜1歳児期の保育室では、家庭のように安心して眠ることを主としながらも、はいはい、つかまり立ち、よちよち歩きなど重要な身体的発達を促す空間づくりを目指します。月齢6か月くらいまでは視覚が未発達で、ハイコントラストな色彩(黒・白・赤)を好む傾向があることから、元気で健康的なイメージである赤がテーマ色です。

2歳児保育室=黄色

2歳児期は自分で食事ができる、服を着られる、排泄の意思を知らせるなど自分の意志で行動することが多くなります。それを踏まえ、基本的生活習慣の自立を促す空間づくりを目指します。社交的にさせ、コミュニケーション能力を向上させる黄色がテーマ色です。

3・4・5歳児2階保育室(少しワイワイする空間)=緑色

2階の3・4・5歳児保育室は自分の意志で遊びを自由に選択できるスペース、他者との関わり合いの中から自立と自律を促す空間です。外の世界に目を向けいろいろな興味を提供する空間づくりを目指します。そこで慈愛のこころ、客観性、健康意識、独自の目標を立てることなどを育てる効果のある緑色がテーマ色です。

3・4・5歳児3階保育室(静かに過ごす空間)=水色

自分のやりたいこと、やるべきことを見つけ、それを効率よくやることができるような空間です。創造性(製作ゾーン)を発揮でき、自分の想像力(絵本ゾーン)を刺激し、自分からの学習を後押しします。また、 分析的洞察力(静、暗の空間)も促進させる色である水色がテーマ色です。

セミナー室、相談室、園長室=黒

すべての色を混ぜ合わせてできる色、すべてを受容する黒がテーマ色です。

外壁

園のすぐ裏の高台に、緑豊かな「おとめ山公園」があります。おとめ山公園は落合崖線に残された斜面緑地です。江戸時代、おとめ山公園の敷地周辺は、将軍家の鷹狩や猪狩などの狩猟場でした。一帯を立ち入り禁止として「おとめ山(御留山、御禁止山)」と呼ばれ、現在の公園の名称の由来となっています。大正期に入り、相馬家が広大な庭園をもつ屋敷を造成しました。のちに売却され、森林の喪失を憂えた地元の人たちが「落合の秘境」を保存する運動を起こし、1969(昭和44) 年にその一部が公園として開園しました。湧水・流れ・池・斜面樹林地からなる自然豊かな風致公園となっています。

その景観を損なわないようにと、私の園の外壁計画ではまず、壁面緑化をするために前面に格子を作り、そこに植物を這わせました。また、建物の色彩はその緑越しに見える色として、下から岩、土、水、空をイメージした色彩にしました。地域に溶け込む保育を目指すのであれば、地域から浮いてしまうような形態、色彩を計画するのではなく、地域と一体になるような工夫をすべきだと思っています。

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