導入設備…ねこゲート
東京都文京区、神田明神のすぐそばに、保護猫カフェ「ネコリパブリック東京お茶の水店」があります。おしゃれな昭和レトロ風の店内で、多数の猫と一緒にくつろげる癒し空間として人気を集めています。
今回は店長の内川絢子さんに、お店の概要やDAIKENの『ねこゲート』を設置した経緯や感想などをお聞きしました。
来場して猫と触れ合うことも“猫助け”に

──「ネコリパブリック東京お茶の水店」について簡単に教えてください。
内川さん:このお店は、入場料をいただいて猫と触れ合ってもらうことが目的の保護猫カフェです。もし、気にいった子がいたら、審査を経て里親になることもできます。
──保護猫の里親になることが目的ではなく、猫と触れ合いたい、という理由だけで訪れてもよいのでしょうか。
内川さん:もちろん構いません。むしろ、猫と遊ぶためにいらっしゃるお客様の方が多いです。入場料は保護猫を救うための貴重な運営資金になりますので、遊びに来ていただけるだけでも、人助けならぬ“猫助け”になります。
──常時、何匹くらいの猫がいるのでしょうか。
内川さん:平均で25匹前後の猫がいます。おうち時間が増えたことで、最近は里親になるのを希望される方も増えていますので、今は30匹います。 この店にいるのは、保護された後に「ネコリパハウス高円寺」などで、病気やケガの治療、猫免疫不全ウイルス感染症などの検査を行う検疫期間を終えた猫たちです。
──「ネコリパブリック東京お茶の水店」のコンセプトやシステムについて教えてください。
内川さん:「ネコリパブリック」は“猫共和国”という意味があります。楽しみながら猫たちを幸せにする活動に参加していただけるように、入店=入国という設定で、お客さまには「ネコリパブリック=猫共和国」の国民になっていただいています。 初入国の際に入国手続きをすることで、その後の入国がしやすくなるパスポートを発行させていただきます。こちらがスタンプカードになっていまして、入国のたびにビザスタンプを押させていただきます。そして、スタンプがたまるごとに爵位があがり、特典がつくシステムとなっています。たとえば、1番上の爵位の公爵になると、毎回15分延長無料になります。
──店内は和室になっていますが、どういった理由からでしょうか。
内川さん:家にいるような感覚でくつろいで過ごしていただくことで、猫との暮らしが想像しやすいように和室にしています。 多数の猫とゆったりくつろげる大きな和室と、シニアの猫や大勢の猫と一緒にいるのが苦手な猫がいる小さな和室、さらに“りんご猫”専用の個室スペースがあります。
──りんご猫とはどのような猫のことをいうのでしょうか。
内川さん:ネコリパブリックでは、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)に感染した猫のことを“りんご猫”と呼んでいます。FIVは猫エイズともいわれていますが、人や他の動物にうつることはなく、発症率も低いためウイルス陰性の猫たちと変わりない生活ができます。ただ、イメージの問題で譲渡がなかなか進みません。そのため、ネコリパブリックでは、りんご猫の偏見をなくすための活動も行っています。
保護猫を迎えることを日本の文化に

──「ネコリパブリック東京お茶の水店」を運営されていて嬉しいと感じられるのはどんなときですか。
内川さん:お客様がゆっくりくつろいで満足いただけたときや、里親が決まったときです。高齢の猫や人に慣れていない猫は、里親が決まるまでの期間が長い傾向があります。長くお店にいると情もわいてくるので、そういう子の状況を理解していただいた上で里親が決まったときは特に嬉しいですね。
──逆に、困難に感じられていることはありますか。
内川さん:猫の医療費が高額なことが大変ですね。寄付をいただくこともありますが、安定的なものではないので、譲渡活動を継続した取り組みにするには、ビジネスとして成立させなければならないと考えています。 そこで、皆さんから入場料をいただいたり、グッズの販売のほか、ペット保険の代理店となることなどでお金を工面しています。
──保護猫についての想いをお聞かせください。
内川さん:ネコリパブリックでは、行政による猫の殺処分をゼロにすることを目標に活動を行っています。猫を飼いたい場合は保護猫を家族として迎える、ということが日本の文化になってほしいと考えています。
保護猫は一度悲しい思いをしているため、保護猫を譲渡するときの審査は少し厳しくしています。たとえば、猫の留守番時間がどのぐらいになるかをお聞きしているのですが、その理由は甘えん坊の猫が一匹で留守番する時間が長いと、問題行動を起こす可能性が高くなるためです。そのような場合は、2匹飼う、あるいは人との距離があるマイペースな子を勧めています。そのほかには、猫の飼育経験をお聞きして、初心者の方には人馴れしている猫を勧めています。 里親になる方は、保護猫を迎えるための審査をクリアしたことをステータスにしていただけたらと思っています。
猫が外に出てしまうリスクを大幅に軽減

──今回、『ねこゲート』を設置された理由を教えてください。
内川さん:お客様が和室に出入りするときに、同時に猫が廊下に出てしまうことがたびたびありました。猫が玄関の方までいってしまうと外に出てしまう危険性があり、スタッフがその都度、捕まえるのが大変でした。
そこで、受付から和室までの廊下に『ねこゲート』を設置することになりました。
──『ねこゲート』を設置されて、実際に猫の飛び出し防止に役立っていますか。
内川さん:『ねこゲート』を取り付けてからは、和室の出入りをする際に猫が飛び出しても、和室前の廊下で捕まえられるようになったのでとても楽になりました。
格子状のデザインなので、お客様が出入りするときに反対側に人がいると見えたり、猫が和室から出てしまっているときは注意して入ったりできるので便利ですね。
──今後、導入を検討されている猫向けの建材はありますか。
内川さん:りんご猫専用の個室スペースに一面壁が空いているので、『ねこステップ』をつけるのも良いかと考えています。 人が苦手な猫もいるので、お客様が入って来たときに人の手が届かない場所をもう1箇所作ることで、猫がより安心して過ごせる環境になると思います。
──ありがとうございました。
<プランニングのポイント(一級建築士 金巻とも子先生のコメント)>
人の出入りが多い玄関ホール・受付(レジ)周りの空間への、猫の出入りを制限し、誤って外に出てしまうことを防ぐことを目的としています。 ねこゲートから内側の廊下は、猫の給餌準備室や化粧室があり、猫のお部屋からの人の出入りが多いところです。人が猫室から出入りするとき、猫も一緒に着いてくることがありますが、ねこゲートがあることで玄関ホールへまで出てしまうことがなくなります。 お茶のお水店は和のデザインで格子が多用されております。ねこゲートも柔らかい木の色を選択し、既存の格子になじむことで、調和をとれるようにしました。
自宅に一定の広さが確保され、適度な刺激と運動ができ、家族とのふれ合いで満たされるなど、その自宅が安全で豊かであれば、年齢を重ねるほど自宅(テリトリー内)から出ようとは思わなくなります。 しかし、室内が豊かであっても、鳥などの動く誘惑が、突如視界に現れることがあり、追いかけて飛び出してしまう事故があります。 また、ヒトは猫にとっては「動くテリトリー」であることも理解しておきたいところです。ヒトの出入りする場所は自分も出入りできると思っていますし、ヒトの出入りがあると言うことは、扉の先に別の空間があるわけで、その空間を知りたいもの。 猫は好奇心が旺盛なので、見える場所(入れる=行ける場所)には行ってみたいと考えます。(だから、部屋でも収納でも(それが箱であっても)、扉を開けたら「とりあえず入ってみる」という行動になるのです)
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