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サステナビリティ

Daiken Sustainabilities

木材が野菜や植物の培地に<span>アップサイクル</span>!? <span>国産材</span>の新たな活用法

木材が野菜や植物の培地にアップサイクル!? 国産材の新たな活用法

2023年1月16日

お話を聞いた方:伊藤 圭(大建工業株式会社 執行役員 開発本部長 兼 R&Dセンター所長)
※役職は撮影当時のものです。
インタビュアー:こにわ(サンミュージック)

☆本インタビューのダイジェスト映像はこちら

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“「建築資材の総合企業」DAIKEN”として、住宅・建築業界ではおなじみの大建工業株式会社(本社:大阪府/本店:富山県)。幅広い分野で活躍している大建工業の事業に対する取り組み姿勢や魅力を伝えていくWEBマガジン「DAIKEN魂!」。
第4弾は、国産材に関する社会課題をテーマにインタビューしました!!

こにわ:こんにちは! こにわです! 私はいま大建工業さんのR&Dセンターにお邪魔しています。今回は”国産材”の社会課題について、R&Dセンターでどのような取り組みをされているのか聞いてみたいと思います。

今回お話をうかがうのは、開発本部長 兼 R&Dセンター所長の伊藤さんです。よろしくお願いします。

伊藤:よろしくお願いします。

素材そのものから空間の環境づくりまで幅広く研究

こにわ

こにわ:まず、R&Dセンターとはどういった所なのか教えていただけますか。

伊藤:R&Dはリサーチ&ディベロップメントのことで、英語でいうところの研究開発そのままですね。大建工業は様々な製品を開発しているメーカーなのですが、製品になる前の技術をいろいろと開発していく、そういう部隊ですね。

こにわ:製品になる前というと、例えば木を切って、その木に対して何かアプローチできないかを考えていくような感じでしょうか?

伊藤:そうですね。例えば木を加工して繊維板にする場合、繊維の1本1本をどのようにしたらボードになるのかといった基礎的な部分を掘り下げたり、木材自体にもっといろいろな性能を与えて、それを二次的に加工することで違う性能を生み出したりしています。さらに、そうした様々な性能を持つ製品自体を組み合わせて空間を形成した際、人に対してどのような影響を与えるのか。そのような空間の環境に関する研究といったところまで手広くやっていますね。

こにわ:すごいですね。まさに今こうやってしゃべっているこの空間で、私たちにどういった影響が出てくるのかというところまで研究されていると。
すごく心地いいです、今。(笑)

伊藤:大きな声を出した時に、ものすごく反響して聞き取りにくい空間とかあるじゃないですか。そのような空間の音を整えたり、温度・湿度などをコントロールしたりするとか、そういうところも含めて、そのために必要な性能を持たせることのできる材料は何だろうかといった素材そのものから、最終的な空間の環境づくりまでをいろいろと研究しています。

こにわ:いや、すごい。何を開発するにしても見方を画一化してしまうといろいろな可能性が生まれないので、まずは疑問点などから入っていくんでしょうかね。どうすればこうなるのかな、どうすればこういうものができるのかな、みたいな。

伊藤:そうです。だから、もうその連続ですよね。どのような技術で乗り越えていくかというところをいつも皆で一生懸命考えています。

こにわ:アイデアがポンと出て、形にしたら皆の役に立つと思っても、それを実現するために何度も躓いたり転んだりし続けて、やっと完成するといったものが、ここでは多そうですよね。

伊藤:そうですね。ただ、自分たちの力だけではどうにもならないものもあります。自社の開発研究部門だからといって、自分たちの技術で全部乗り越えて行こうとすると、ものすごく時間がかかるんですよね。今の時代はスピードも重要なので、自社の技術だけにこだわらず、他社さんが持っているものや大学とか研究機関が持っている新しい技術を積極的に組み合わせながら研究開発を進めることが必要だと思います。

循環型資源である木材 国産材の新たな活用法を探す

こにわ:それでは今回のテーマとなっている“国産材”の話に移りますが、現在、国産材に目が向けられ始めていて、有効活用することが強く求められているようです。その理由や社会的な背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

伊藤 圭

伊藤:木材は循環型の資源で、再生が可能であるというすばらしい特質を持っています。だから、資源としての再生が不可能な鉄や石油に代えて木製品を使うことは、地球環境に大きく貢献します。
そして、一般の方々はあまりイメージしていないかもしれませんが、日本は国土の大部分、約3分の2が森林で覆われている世界有数の森林大国なんです。それを考えるとこの森林を有効に活用すべきじゃないかという考え方もあります。ただ、輸入材が安価で手に入る時代が長く続いたので、国産材があまり使われなくなっていました。

また、森林にはCO2の吸収や土砂災害の防止など様々な機能があります。その役割を果たす森林を健全に育てるためには、成長した木を伐り、適切に使い、新たに木を植え、そして育てるという木のサイクルを維持することが不可欠です。だからこそ国産材の積極的な活用が求められているというわけです。政府は2025年までに木材自給率を50%に高めることを目指していますね。

こにわ:なるほど、国産材を利用することはとても重要なんですね。

伊藤:もちろん海外の木材も活用するんですが、ウッドショックや為替の影響で海外の木材価格が急騰することがありますので、安定した価格で製品を供給する意味でも国産材は注目されています。

ですから、観点もいろいろですよね。一つのことだけを見ていたら多分うまくいかなくて、いろいろな情報を集めて今ならどれがベストかということを考える。その今を考えるのが当社の製品関連の事業計画等を担当している各製品事業部なんですけど、我々R&Dセンターはさらにその先で何が起こるだろうか、ということを常に考え続けています。

こにわ:これから先に起こるかもしれない現象を考えているわけですか。

伊藤:まあ、分かりませんけどね。

こにわ:(笑)これ、予想が当たっていたら本当にみんな苦労しないんですよね。これだけのスペシャリストが集まっていてもやっぱりそういうものなのかと。

伊藤:はい。百発中一発当たるかどうかも分からない。そういう世界なわけですよ、研究開発っていうのは。だから、研究開発に従事している人たちは、すぐにお金を稼ぐという意味では会社に対してあまり貢献できていないわけですよ。ここでは会社から研究開発費をもらいながら業務を行っていますけど、それが何になるんだ、と思っている人もたくさんいるでしょう。でも将来、100、200の様々な研究開発を進める中で1個でも大当たりしたら、大建工業の未来と社会に貢献できるかもしれない。そういう思いを持っていないと続けられないタフな仕事ですね。

木に木を植える驚きの発想『グロウアース』

国産材活用

こにわ:そのタフなお仕事をされているR&Dセンターで開発された『グロウアース』という商品があるということをお聞きしたのですが、どのようなものなのか教えていただいてもよろしいですか?

伊藤:『グロウアース』というのは、国産木材を粉砕したものを原料にして特殊加工を施した木質培地(ばいち:微生物や植物の栽培を促進する資材)です。
今、こにわさんと私の間にあるプランターも『グロウアース』で育てた野菜です。

こにわ:ちなみに何の野菜を植えているんですか? これ何だろう。

伊藤:真ん中にあるのがカリフローレです。ご存知ですか? カリフローレ。

こにわ:いや、カリフラワーはわかりますけど、初耳です。

伊藤:カリフラワーの親戚なんです。カリフラワーのモコモコっとした部分の一個一個に長い茎が付いたような野菜なんですね。それで、その両端に植えているのが空芯菜です。

こにわ:おお、あの中華にすると美味しい空芯菜。それで、これらを育てるのに使っているのが『グロウアース』なんですよね。

伊藤:具体的にはこのようなものですね(こにわさんに『グロウアース』が入った小袋を2つ渡す)。

こにわ:ちょっと持たせてもらいますね。ほーなるほど、これが。

伊藤:今2つお渡ししましたけど、もっといろいろな種類があって、その総称を『グロウアース』と呼んでいます。

木を伐って丸太から板材や角材に製材すると、使えない部分がどうしても出てきます。それらを無駄にしないために端材を繊維状にして全部使い尽くそうとしたのがインシュレーションボードやMDFといった繊維板の始まりなわけです。
そして、木材を繊維にする大建工業の技術を使って、建材以外に何かできないかと考えてできたもののひとつが『グロウアース』なんです。それ、見た目は土みたいじゃないですか?

こにわ:確かにそうですね、木なんですけど。

伊藤:はじめにあったのは「木に木を植えたらどうなるんだろう」という単純な発想ですよ。
実を言うと『グロウアース』は開発テーマとして認められて実際に商品化するまで5〜6年かかっています。2015年に創立70周年を迎えた際、大建工業が持っている技術を披露するイベントを開催したんですが、その時この研究に携わっていた人間がはじめてその内容を発表したんです。私もその時に初めて見て「えーっ、木に木を植えんの?」って。みんな思いますけど。

こにわ:(笑) そうですよね。

伊藤:「でも、これ、できたら面白いね」って、結構いい評価だったんですね。そこから本格的に研究がスタートして大体6年ぐらいで商品化にこぎつけました。

こにわ

こにわ:ちょっと待ってください。その6年にやっぱりいろいろな躓きがあったんじゃないかなって思うんです。大建工業さんなんで、木をこの形にするのは多分簡単なんですよね。でも木に木を植えるってことは、植物が育たなきゃいけないわけですよね。最初は難しかったんじゃないですか?

伊藤:育たないんですよ。

こにわ:(笑)

伊藤:最初に試した時はうまく育たなくて、黄色い葉っぱですごく貧弱な感じになってしまって。そこでなぜ育たないのか、その原因があるはずだと考えていろいろ調べていくと、木材の中に含まれているある成分が生育を阻害していることがわかったんです。

こにわ:ええ!? それでは、その成分を取り除いていく作業はどのように行ったんでしょうか?

伊藤:そこは技術の肝になるんで詳しくは言えないんですが、この部分だけで多分片手では足りないぐらいの特許を出願しています。

こにわ:えーっ、すごい!

伊藤:生育を阻害する成分を取り除くというよりは、無害化する方法を考えていきました。ただ、最終的には野菜などの食料になるものを植えたい。そのためには環境にも人体にも影響がないものを選ばなければいけないので、食品などに使用されているものをいろいろと試したり、実際に育てたものを使って健康被害が起きたりしないかということを検査するなど、かなり時間をかけて研究開発をしています。

こにわ:ちょっと待ってください。今の話だけ聞いていたら農業関係の会社みたいですね(笑)。今、私がすごいなと思ったのは『グロウアース』で植物を育てられるようにするだけではなく、育てた野菜が問題なく食べられるように、人が利用することを踏まえて先の現象まで考えながら開発するということが根底にあるということですね。

伊藤:我々は建材メーカーですから、人の生活に必要な「衣食住」のうち、「住」の部分で製品を提供しています。ただ、人にとっては「食」も非常に重要じゃないですか。その「食」に何かアプローチできないかっていうのは、皆常に何となく考えています。そこに対して我々が一番得意な「木」をうまく使っていきましょうと。『グロウアース』はうまくマッチした良い例だと思いますね。

こにわ:何か一つのことに特化しているからこそ他の分野に応用できるんだと思いますが、それにしても大建工業の皆さんはチャレンジ精神があるなぁと感じました。

伊藤:実際のところ、ものになるかどうか全然わからない研究を、自由に6年もやらせてもらえる。そこは大建工業自体が持っている懐の深さだと思うんですよね。

こにわ:そうした環境があるからこそ生まれたのがこの『グロウアース』ですね。これ、水はけが良いとか水もちが良いとか、いろいろな種類があるようですが、そこも最初から考えていたんでしょうか?

伊藤:いや、そこは我々も実際の植物を育てることに関してド素人ですから、いろいろな人たちに聞いてまわりました。農家さんや、農業資材を取り扱っている展示会などでサンプルを見てもらったりしていると、新しいもの好きな人に「これからは環境にいいものだね」と言われて、実際に使ってもらった人から「こりゃ、あかんわ」と言われたり。
そういったいろいろなご意見を聞きながら「じゃあ、もうちょっと粗いのにしてみましょうか」とか、「もうちょっと細かいのにしてみましょうか」とか、「いや、ちょっとミックスしましょう」といったことを繰り返して、実際に使えるものが揃ってきたという感じです。

こにわ:これまでのインタビューでもお客様の意見やクレームは大事だと伺いました。いろいろな人の意見を参考にこういう商品が開発されているわけですね。

伊藤:そうです。開発者というのはひとりよがりじゃ駄目なんですよね。熱い想いはないと駄目なんですけど、それに共感してくれる人たちがいて初めて世の中に貢献できるものができる。やっぱりいろいろな人たちの意見を聞くということはものすごく大切です。

こにわ:なるほど。そのような努力で生まれた『グロウアース』というわけですね。他にはどのような特長があるんでしょうか?

伊藤:この『グロウアース』は木を使っているので環境配慮型の材料といえますが、そこは興味がないという人も多いと思います。でも、もう一つの特長は使う人にとってものすごく大きなメリットになります。
(袋を取り出して)これが通常の栽培に使う黒土です。こにわさんちょっと持っていただけますか?

こにわ:はい、持ってみます。どっしりした感じですね。これがもっと多くなると車がないと運べないですね。

伊藤:ええ。で、こちらが同じ袋に入れた『グロウアース』になります。どうですか?

こにわ:いや、嘘でしょ、これ(笑) 全然重さが違う。

伊藤:はたから見たらわからないと思うんですけど、ものすごく軽いでしょう? 3倍ぐらい違うと思います。

こにわ:いやいや、びっくりします。えー、こんなに重さが違うんですか?

伊藤:違うんです。今、目の前にあるプランターは深さが大体20cmぐらいありますが、これを持ち運ぼうと思うと一人じゃ到底無理だと思いませんか?

こにわ:普通に無理です。この大きさのプランターにこんなに目一杯土が入っていたら絶対無理です。

伊藤:こにわさん、ちょっと持ってみてください。

こにわ:えーっ、ほんとに? じゃあ行きますよ、せーの、よっ。えっ、嘘!?

グロウアース

伊藤:持ち上がるでしょう?

こにわ:重いけど全然持ち上がりますよ! 普通なら持ち上げられない。

伊藤:これがグロウアースの持つ最大の特長である「軽い」というところです。

こにわ:木って重いイメージあるけど、こんなに軽いものなんですか、木の素材って。

伊藤:木を粉砕してファイバーの状態にしているので、隙間が多くて土と比べると元々比重も違っていて非常に軽いんですよね。持ち運びがしやすいので、プランターで家庭菜園をしている方などは配置換えも手軽にできるようになりますよ。他にも、土って通常のゴミとしては出せないんですよね。処分しようと思ったら大変じゃないですか。

こにわ:めちゃくちゃ大変ですよね。

伊藤:でも、『グロウアース』は木材でできているので、土を混ぜない状態で使っていたら、乾燥させると燃えるゴミで捨てられるんです。

こにわ:そうか、なるほどねぇ。

伊藤:だから、今『グロウアース』を採用してもらっている企業の1社では、贈答用の胡蝶蘭用に使って下さっているんですよね。軽いから運びやすいし、運賃も安く済む。さらに育て終わったあとの処分もしやすいと。

こにわ:胡蝶蘭なんてでかければでかいほど見栄えがいいですから、軽いのは助かりますね。これが水を含んだ黒土だったら運ぶのも大変だし、そう考えたらすごいですね、発明として素晴らしい、本当に。

伊藤:でも、この『グロウアース』を研究しはじめた時点では、軽くて喜ばれることを想定していたわけではないんですよね。

こにわ:確かに、まったく違うゴールではありますよね。

伊藤:だから、具体的に何に使われるかをイメージして、そのゴールに近づくために試行錯誤するという考え方も必要ですけど、何が生まれるかわからないけどとりあえずやってみよう、という精神が研究開発にはものすごく重要なんですよね。
そこで、このR&Dセンターの中では研究開発理念として「未踏への先駆け」という言葉を掲げているんです。未だ誰も踏み込んだことのない領域に、まず我先に踏み込みましょうと。それを心に刻みながらやっていくっていうのがすごく大切なことだと思います。

こにわ:それを許してもらえる環境だからこそ、みんなが未踏の地へ行こうとする姿勢があるってことですよね、これは。

伊藤:そうです。昔ありましたよね。1位じゃないと駄目なんですか?というのが。研究開発に2位狙いはないですから。

こにわ:そうですよね(笑)

伊藤:1位じゃないと駄目なんですよ。1位だからこそ、その先にあるさらなる未来が見えるんです。技術で何か革新を起こそうとしても、2位を狙っていたら何も起きないですから、何も変わらない。技術というのは世の中を良い方向に変えるためにあるので、そのために未踏の地を目指して頑張っています。

こにわ:私はスポーツ関係の仕事に携わっているんですが、そこで「この負けは次の勝ちにつながる意味のある負けだ」というような表現をすることがよくあります。失敗を100回重ねたその先の101回目に成功が待っている、といった姿勢のスタッフが多そうですね。

伊藤:そうですね。でもやっぱり一開発者なので、個人レベルでいうとやっぱり失敗は恐れるし、失敗したら次はないんじゃないかという不安は皆抱えているんですよね。ですので、『グロウアース』にしても一人の開発者が一貫して担当しているわけではなく、10人以上の人間が関わりながら、入れ替わり立ち替わりバトンを渡しながらゴールを目指しています。その中で誰かが失敗したとしても、「そうやると失敗することがわかった、そこは避けて通りましょう」といった感じで、失敗も成果になるということは常に言っていますね。失敗がなければ成功もないですから。

こにわ:なるほど、理想的な開発環境ですね。大建工業さんがこのような形で開発を進めていく中、根底に芯のようなものはありますか?

伊藤:やっぱり、根底には環境に対する想いが常にありますね。大建工業の歴史を考えた時に、未利用の材料を積極的に使いましょう、世の中に貢献するものをつくりましょう、そういったDNAが、入社した時からすべての従業員にずーっと息づいています。

こにわ:なるほどねぇ。インタビューさせていただいている場所のすぐ横にもたくさんの植物が植えられた畑がありますし、こういうのも含めてR&Dセンターには環境への配慮も考えた研究がすぐにできるシステムが多く備わっているようですしね。
皆さん毎日どのように研究開発を進めているんですか?

伊藤:開発者一人一人が抱えているテーマは必ずしも1個ではなくて、いろいろな複数のテーマを研究しているんですよ。もちろん関連しているテーマもありますが、全然違うテーマもありますので、それらを研究するうちに知識や経験が広がっていきます。そうすると1つの研究で行き詰まっても、違う経験があると「あっ、これってこうなんじゃないの?」という閃きで乗り越えられることがあるんですよね。そのような個人で習得する幅広いスキルや、様々な人とのコミュニケーション、新しい技術を積極的に取り入れるといったところも含めて、日々いろいろなことに挑戦していくように努めています。

こにわ:年齢と経験を重ねた人と、若い人とのコミュニケーションもめちゃくちゃ大事なのかなぁと思うんですけど、その辺はいかがですか?

伊藤:それはすごく大切です。ただ、皆さん「若い人の方が発想は柔軟でしょ?」とよく言われるんですけど、決してそうだとは限らないんですよね。ベテランはベテランでやっぱり多くの経験を積み重ねているので懐が深くて、いろいろな引き出しを持っていて、「それがだめなら、こんなことができるんじゃないの?」といった対処が何度もできるわけです。凝り固まらずにいろいろな経験を蓄えたベテランの存在がものすごく重要で、ベテランだからこそ新しい発想が生まれることもたくさんあるわけです。だから、ベテランと若手、これをミックスすることで、さらに発想の幅が広がると思うんです。

こにわ:新しい発想というと、大建工業さんは創業当時から木材の有効活用という、時代の先を行く取り組みをされてきたわけですから、今のお話のように新しい発想を生み出す方法について、もっと目が行くようになったという感じもありませんか?

伊藤:そうですね、その通りだと思います。

業界の垣根を越えて循環を可能にする技術をつくっていく

こにわ:今回は国産材を活用した『グロウアース』と、それを開発したR&Dセンターの取り組み姿勢などをお聞きしたんですが、R&Dセンターの現在の目標はどのような感じでしょうか?

伊藤 圭

伊藤:大建工業では2021年の10月に「DAIKEN地球環境ビジョン2050」というものを策定していまして、温室効果ガスの排出量を削減するだけでなく、本当の意味でのカーボンニュートラルとして2050年までに実質ゼロ、さらには廃棄物の最終埋立処分量ゼロ、東南アジアに生育する天然木のラワン材使用ゼロという、3つのゼロの達成を目指すことを宣言しているんです。大建工業としては、この目標達成に向けて取り組みを続けつつ、さらに何ができるのかということを考えています。

あと、世の中には実に様々な製品が存在しますが、それらが寿命を迎えた場合、その大半は最終的に破棄されてしまいます。でも、そこは破棄せずにそれをまた何かに使えるように循環させていく、そういう世の中をつくっていきたいですよね。 世の中の製品は、それぞれがいろいろな材料を使ってつくられているので、それを分離してさらに再資源化するために加工する……そのようなことを積み重ねることで、ようやく世の中全体が回っていくと考えています。これは大建工業一社では実現できないことだと思いますので、それこそ業界を挙げて企業同士が出会う場を設けたり、業界の垣根を越えていろいろな人・会社とコラボレーションしたりしながら、循環を可能にする技術をつくっていかないといけないんですね。そこに関わるような研究・技術開発が一番の重点テーマとなっていますね。

こにわ:住居でいうと、長い年月を経た建物をリノベーションという形でまた同じように住めるようにすることが注目されていたりしますけど、大建工業さんならこのような事例も含めて、国産材の活用やカーボンニュートラル、リサイクルなどの取り組みを続けていく中で、また何か面白いことが起こせそうですよね。

伊藤:そうですね。そのためにも我々みたいな建材メーカーだけじゃなくて、建物を建てるハウスメーカーさんであったり、ゼネコンさんであったり、そういうところとも一緒にいろいろなことを考えながらやっていきたいですよね。

こにわ:いや、今日はほんとに貴重なお話をお聞かせいただいて本当にありがとうございました。今回も大建工業さんの熱い魂を感じたので、最後に二人で決め台詞をよろしいですか。

こにわ・伊藤:『DAIKEN魂!』

DAIKEN魂!