片付けヘルパー流シニアの片付け

シニアにとって「捨てる」は大変!?
シニア世代のお宅の片付けは、娘さんなど離れて暮らす家族から依頼されることが多いのですが、たいてい「部屋
が物でいっぱいなので何とかしてください」というものです。
家族にしてみれば、親が元気で何でもできた姿を記憶しているので、どうして散らかってしまった
のか分からない。
「片付けてね」と言うばかりで、やってあげなければできないとは気が付かないのです。
そんな中でいかにシニアに寄り添ったお片付けをしていくか、ポイントをいくつかお伝えしていきます。
シニアの片付け実践!
シニアの片付けは「すっきり」じゃない
シニアのお宅では、整理収納の理論を用いながら、「その人らしく」整理の幅を広げて、見た目より使いやすさを第
一に考えていくことが大切です。
例えば、寝具の横に洋服をきれいに畳んで並べる「見せる収納」にした方がいます。
起きて、座って、並んだ服を見ながら今日何を着ようかと考えるのが楽しいというのです。
見た感じは整然としていないかもしれませんが、シニアにとっては暮らしやすく満足することが一番大切。
何でもきれいに片付けて見栄えを良くするのではなく、使いやすさを優先するなら、多少は出しっぱなしもアリではないでしょうか。
また、シニアにとって使いやすい棚の高さは限られてきますから、つい使用頻度を優先してしまいますが、楽しめるものは別。
節句人形など年に一度しか飾らないものでも、本人が大切にしているなら、あえて押入れの下段など使いやすい場所にしまってもいいと思います。
手元もバリアフリーに!
シニアにとっては、足元だけでなく手元のバリアフリーも大切です。
キッチンでは、高さと奥行きをそろえることがポイント。
シニアにとっては、手元にほんの数センチの段差があっても、お味噌汁などが入った器を持ち上げる動作が難しく、
こぼしてしまいがちです。
写真はキッチンのシンク80cmに合わせた棚に替えることで、食器を載せたトレーをスライドさせて移動できるようにし
ました。
汁をこぼすこともなくなり、シンクと棚にまたがってまな板を置いても安定しています。
トレーをテーブルへ、下げる移動は難しくなく、食べて軽くなった食器も簡単に
運べますから、自分で食事の用意をし、片付けまでできるようになりました。

病気による行動制限には
例えば心機能が落ちて入院していた人が家に戻った場合など、持てる物の重さや移動距離などに制限がでることがあります。
最初は本人も病気になったことが辛く受け止められない気持ちもあるでしょう。
そんな時に生活面での注意点までは考えられませんし、家族にとっては見た目が変わらないので、何ができて、何ができ
ないのか分かりません。
家族がそれまでと変わらない感覚で物をしまっていたら、本人が必要な時に取り出せないこともあります。
手を挙げる・背伸びをするのが辛くなった場合、普段使うものは取り出しやすい高さに集約し、タンスの上段など、取り出しづらい所は使わないようにします。
使わなくなったスペースには、オフシーズンの衣類や冠婚葬祭の物をしまうのもいいでしょう。
目の高さから腰の高さは体にも負担が少ないので、布団は押入れの中段に入れると良いとしていますが、シニアの場合は一番下に布団を入れます。
端を持って引っ張ればそのまま敷くことができ、押し込めば畳めます。

シニアが見やすい収納術
シニアにとっては、色と形をきれいにそろえた統一収納は区別がしにくいだけでなく、白色の物などは光が反射して見にくいという問題があります。例えば、シニアの目から見ると、食器戸棚に透明のグラスが並んでいても存在そのものが見えないことがあります。
鏡面仕上げの扉などに貼ったラベルでは白地に黒ペンで書いた文字でも反射して見えにくく、黒地に白で書いたほうがよく見えます。

家族がずっと寄り添うために
シニア本人の使いやすさを徹底的に考えた収納や配置にすることで、行動範囲が広がり、自分でできることが増えるのは 楽しいことです。
また、状態を保つために家族が定期的に見ていくことも大切です。
私は片付けた後の環境を維持するために、家族の方に声掛けをお願いしています。
その人が言われたら嬉しい「喜びポイント」を見つけて、寄り添えるように。
例えば「大丈夫」という言葉を、家族、シニア両方に掛けてみましょう。
シニアの方は、生きてきた分だけこだわりもあるでしょう。
子が親の生き方や老いた今の姿を認めた上で、話し合い、
寄り添って、これからを考えていく。
片付けが、そのきっかけになればと思います。