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DAIKENとSDGs:SDGs特別対談「SDGsを活用し、新たな価値創造に挑戦」

SDGs特別対談「SDGsを活用し、新たな価値創造に挑戦」大建工業株式会社 代表取締役 社長執行役員 億田正則 × 社会情報大学院大学客員教授 CSR/SDGコンサルタント 笹谷秀光氏
代表取締役
社長執行役員
億田 正則
社会情報大学院大学客員教授
CSR/SDGコンサルタント
笹谷 秀光 氏

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年伊藤園入社、2010〜2014年取締役、2014〜2018年常務執行役員、2018年〜顧問を経て2019年4月退社。2019年4月より現職

「SDGs(持続可能な開発目標)」が2015年に国連で採択されて以来、環境問題などの地球規模の社会課題解決に、企業が事業活動を通じて貢献することへの期待がますます高まっています。SDGsに知見のあるコンサルタントの笹谷秀光氏(以下、敬称略)を、2018年10月に開設した研究開発施設・DAIKEN R&Dセンターにお招きし、代表取締役社長執行役員の億田正則と、今後、SDGsに対して事業活動でどのように貢献し、企業価値向上につなげていくかについて、対談を行いました。

創業時から続く、社会課題と向き合う意識

億田:当社は終戦直後の1945年9月、富山の地で創業しました。当時不足していた鉄に代わる物資として、木材を活かし、荒廃した日本の戦後復興に貢献したいという志のもと、木材加工業からスタートしました。創業当時から、木材を貴重な資源として無駄なく使い尽くすという発想を持ち、解体古材や端材を有効活用して、新たな付加価値を創造する技術開発に取り組んできました。ですから、当社は源流の段階から、知らず知らずのうちにSDGsが示すゴールに向かって進んできたように感じます。

笹谷:SDGsは深刻化する地球規模の課題分析を踏まえた、持続可能な世界を実現するための国際目標で、17のゴールから成り立っています。人を大切にする、地球環境を守るなどのテーマをパートナーシップの中で実行するという狙いが、17のゴールで明確に示されていますが、これらは、ある日突然でき上がったものではなく、長い歴史の集大成として明文化されたものです。大建工業が創業時から長い年月をかけて、さまざまな社会課題解決に取り組んできた歩みと重なりますね。

億田:当社が最初に手掛けた事業は合板でした。車両や船舶などに使うために耐水性や耐久性を高める技術を開発し、木材の弱点を克服した特殊合板を主としていたのです。その後、新たな事業展開を目指して1958年、未利用資源を活用するための工場を、このR&Dセンターのある岡山市に建設しました。ここでつくってきた木質繊維板・IB(インシュレーションボード)は解体古材や端材をマテリアルとして利用し、炭素の固定期間を長期化するもので、SDGsの17のゴールの中の12番「つくる責任つかう責任」、13番「気候変動に具体的な対策を」に貢献しています。製鉄時の副産物であるスラグを活かす「ダイロートン」も12番、火山灰のシラスを原料とした「ダイライト」は住宅の耐震化に貢献する側面から11番「住み続けられるまちづくりを」につながるなど、現在の事業・製品の中でSDGsのゴールに結びつくものがたくさんあります。

笹谷:もともとSDGs的な素地があったところに、分かりやすく整ったSDGsの17のゴールが示された形ですね。大建工業の事業とSDGsのゴールのつながりを見れば、事業の価値を再認識することができ、ステークホルダーも大建工業のポテンシャルを知るきっかけになるでしょう。

億田:それぞれの事業が始まった当時、SDGsはありませんでしたが、持続可能性を目指して社会課題の解決に貢献するSDGsの考え方は、当社のこれまでの取り組みや目指す姿とリンクしていると感じます。グループ企業理念として「笑顔があふれる未来に貢献」し、「豊かな社会と環境の調和を第一に考え」、「あらゆる人に愛される企業であり続ける」ことを目指すとしていますから、まさに持続可能な社会に貢献し、信頼を高める努力を続けていく必要があります。改めてSDGsを意識することで、今、そして未来へ向けて、当社が何に取り組んでいくべきかが明らかになりますね。

笹谷:社会的理念のもとで行われてきた事業と、SDGsとの間に接点があるのは当然のことです。大建工業は「今頃SDGsができたのか」という思いを持っても、おかしくないくらいだと思います。

R&Dセンターからイノベーション創発を

笹谷:事業活動にはSustainability(サステナビリティ)、つまり持続可能性がとても大切ですが、もう一つ大切な「S」があります。それはScaling(スケーリング)。よいことは展開していくことが必要です。日本には「売り手よし、買い手よし、世間よし」を説く「三方よし」という考え方がありますが、私はこれらに「発信」を加えた「発信型三方よし」を提唱しています。発信すれば、共感する仲間が集まり、それらがつながってイノベーションが起こります。
R&Dセンターには、オープンイノベーションをコンセプトとした展示スペースが設けられており、製品や技術力について発信を始めていますね。

億田:R&Dセンター開所時には、全国の大学から専門家をお招きし、施設内をご覧いただきました。これからは学生に来てもらったり、逆に当社の研究者を大学に派遣したりして、交流を深め、産官学連携で新たな価値を生む技術革新をしていきたいと考えています。

笹谷:R&Dセンターがある岡山市は、SDGs達成に向けた取り組みを進める「SDGs未来都市」に選定されています。外国からも関係者が頻繁に訪れますから、そういう方々にもアピールをすれば、大建工業の技術力の高さを実感してもらえるでしょう。大建工業は発信力を加えたことで、オープンイノベーションが創発される環境が整ってきていると思います。

DAIKEN R&Dセンター 外観

DAIKEN R&Dセンター

億田:イノベーションという点では、SDGsで示されるゴールに対して、具体的な解決策を示せる研究開発や事業が生まれていくことに期待をしています。研究開発・事業部門には、当社の強みを活かせるゴールを見定め、従来の枠にとらわれずに新たな発想を膨らませたり、チャレンジ精神を持って開発に取り組んだりしてほしいと考えています。また、開発担当者には開発テーマのアイデア出しや、パートナーとのビジョンの共有、ビジネスモデルの持続可能性検証など、多様な側面でSDGsを活用してほしいですね。

研究環境の整備と人財価値の最大化

笹谷:お話を聞いていると、大建工業は、R&Dセンターを設立して研究開発の環境を整え、技術開発陣のモチベーションを高めていると感じました。センターの研究者一人ひとりが未来の理想を書いたボードが、センター内にありました。全員参加型で未来を志向し、モチベーションを高める努力をされているのは素晴らしい。技術力を駆使し、高付加価値のビジネスモデルを生み出すためには、人財の活用が不可欠です。それは働きやすい環境の整備やガバナンスなどもあってこそだと思いますから、引き続き、基盤を整備していっていただきたいと思います。

億田:SDGsを活用し、イノベーションを起こしていくとき、中心となるのは「人財」だと私も考えています。私は従業員に対して、社会とのつながりを深め、多様な知識を吸収した上で社会参画につながる開発を進めてほしいと伝えています。R&Dセンターをつくり、環境を整え、マイルストーンを設けました。開発チームはその目標めがけて取り組んでいます。但し、そこは通過点であり、そこでとどまることなく、さらに先へ進むチャレンジ精神に期待しています。

代表取締役 社長執行役員 億田 正則

笹谷:大建工業は人財力の高い会社だと思います。億田社長の思いを「見える化」して、価値創造の流れをつくり、各部署に浸透させていくプロセスを大切にしてください。最新の調査によれば、SDGsは企業経営層の6割に浸透している一方で、中間管理職や社員レベルでは2割程度にとどまります。これからはSDGsが主流化していきますから、大建工業では是非、社長自らが発信し、企業全体でさらに理解を深めていただきたいものです。

億田:事業活動を進めていくのは、兎にも角にも「人」。当社も人に対して投資をし、人財価値の最大化を図りながら、会社として社会課題解決に貢献することで、結果的に企業価値向上につながると思っています。

笹谷:SDGsの17番で示されているパートナーシップ、和の精神があれば、多様な課題と自分とをつないで考えることができ、仕事へのモチベーションが生まれるでしょう。

億田:是非とも全員に意識してもらって、一緒に歩んでいきたいですね。

SDGsを開発テーマに未来志向の事業を展開

笹谷:大建工業は既に、SDGsを通じて社会的な課題とのリンクを張っていますから、それをどう拡大するかという段階にきていると思います。大建工業が進めている海外展開の際には、SDGsをうまく活用して「見える化」するとよいでしょう。SDGsは世界の共通言語ですから、海外のパートナーともビジョンを共有しやすくなりますし、SDGsを積極的に活用する企業として受け入れられる可能性が高まります。

億田:海外での展開でいえば、ニュージーランドに木質繊維板MDFを製造する工場が二つあります。現地の限りある木材資源をいかに使うかを考えています。また、木材を燃やさずに木質繊維板として使い続ければ、炭素の固定期間を長くすることにつながりますから、この事業を拡大することで温暖化防止に貢献できると思っています。こうした木質素材事業は海外でもさらに拡大していく方針です。

笹谷:大建工業が長い歴史の中で培った技術力と、それを活かした高付加価値産業のビジネスモデルは、必ず世界で通用するはずです。そしてまた、開催が来年に迫る東京五輪・パラリンピックは「SDGs五輪」といわれるほど持続可能性が重要視され、使用するエネルギーや資材で持続可能性が求められています。これを機に、一般の方々を含めてSDGsへの関心は大いに高まっていくでしょう。2025年の大阪・関西万博も含め、国際イベントを通じてSDGsと絡めた事業展開を国内外へPRする良い機会です。

社会情報大学院大学客員教授 CSR/SDGコンサルタント 笹谷 秀光氏

億田:SDGsは2030年に向けての目標ですが、私はそれがゴールではないと思っています。当社は大阪・関西万博が開催される2025年に創立80周年を迎え、その先には100周年という大きな節目があります。そこを見据えて、目指す姿を描いていかなくてはならないと考えています。国内では、新設住宅着工戸数が減少傾向にあるなど、市場環境が大きく変化する中では、次の成長へ向けての戦略が必要です。現状は素材から建材への展開が中心ですが、新たな市場を目指すときは「素材」という原点に立ち返り、新しい時代に求められる社会課題やニーズと向き合い続けていきたいですね。もしかしたら、建材にとどまらず全く違う事業が当社のコア事業になっているかもしれません。

笹谷:大建工業には、培ってきた技術に基づいて、新たなものをつくり出す技術革新力があります。コーポレートメッセージである「キノウを超える、ミライへ。」というフレーズに、それが表れていますね。“昨日”までの歴史と、“機能”を高めるという両方の意味を踏まえている。昨日までの社会課題を新たな機能で解決に導いていく。SDGsと大建工業には同じ未来志向性を感じます。

億田:未来へ向けた具体的な取り組みの例としては、木材加工技術を応用した培土の開発を進めています。木質繊維板の原料である木材チップを、植物を育てるための土の代替にしようというものです。将来的には、作物が育たない砂漠の緑化などで活用できれば、SDGsの2番「飢餓をゼロに」に貢献できるでしょう。さらに、畳おもてに使っている和紙を加工するような発想が、他にも応用できれば、脱プラスチック化の提案にもつながり、14番「海の豊かさを守ろう」に貢献できる可能性もあります。

笹谷:SDGsには、複数の課題解決につながる「レバレッジ・ポイント(テコの力点)」というものがあり、大建工業の場合は9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」と17番「パートナーシップで目標を達成しよう」がそれに当たります。9番で生み出すイノベーションでさまざまなゴールへの解決策につなげると同時に、17番のパートナーシップでどんどん拡散をしていき、ますます世界レベルでの「建築資材の総合企業」に向かっていくことを期待します。

億田:これからはまさに、SDGsが開発のテーマになってくると思っています。その社会課題・ニーズをいかに捉え、活かしていくかは、トップである私を含め、役員、部門長からグループ従業員まで、一人ひとりの発想や情熱に委ねられています。現状の技術をより深めるとともに、世の中の役に立つような開発を進めて、社会課題の解決につなげることで、企業価値を高めていきたいと考えています。
本日はありがとうございました。