トップメッセージ

変えてはならないもの
DAIKENの誇る「技術」と「誠実さ」

私が初めてDAIKENという会社に深く関わったのは、2018年に社外取締役として着任した時のことです。その時に抱いた第一印象は、理屈抜きに「素晴らしい会社だ」というものでした。長年、商社でビジネスの最前線に立ってきた身として、社員一人ひとりに根付いている「ものづくり」に対する真伨な姿勢は、何にも代えがたい強みとして非常に魅力的に映ったのです。
企業経営には、時代が変わっても変えてはならないものと、成長のために変えていくべきものがあります。DAIKENにとって絶対に守り抜くべきもの、それはものづくりに対する技術力と誠実な姿勢です。
例えば、当社が長年培ってきた「音」に関する技術。この度、業界でもトップクラスの音の研究施設『音環境ラボラトリー(音ラボ)』を立ち上げました。ここでは、天井や床、壁を伝う音漏れまでを緻密に研究し数値化するだけでなく、人間の感覚として理解できるレベルにまで昇華させています。リモートワークの普及などにより、住まいに求められる音環境の質はかつてなく高まっています。都市部における住環境の過密化や、ライフスタイルの多様化による音のストレスという現代の社会課題に対し、当社の技術は確かな解決策を提示できます。また、木質資源を有効活用する技術においても、軽量化や強度向上といった機能的価値の追求に留まりません。未利用資源を新たな価値ある素材へと生まれ変わらせる技術は、単なるリサイクルを超え、サーキュラーエコノミー(資源循環)の実現という地球規模トップメッセージの課題に直結する力を持っています。これらは一朝一夕に真似できるものではありません。先人たちが知恵を絞り、汗を流して築き上げてきた、DAIKENの揺るぎない財産です。
私の責務はDAIKENが培ってきたDNAを継承しつつ、次の成長につなげていくこと。市場が目まぐるしく変わる中、私がこれまで培ってきた経験・スキルをDAIKENの強みと掛け合わせることで、市場ニーズにスピーディーに応えられる会社に変えていきたい。そのためにも、顧客課題起点で市場の変化を先読みした、DAIKENにしかできない商品・サービス開発を進め、お客様・業界の課題解決に貢献していきます。

「マーケットインの感性」で、
新たな市場を創り出す

次の10年で最大の脅威となるのは国内市場の縮小です。この環境下で、これまでと同じように作って売るだけのビジネスを続けていれば、待っているのは厳しい価格競争と市場の縮小に伴う衰退しかありません。だからこそ、変えていくべきものに果敢に挑む覚悟が求められます。その決意の表れの一つが、昨年の「大建工業」から「DAIKEN」への社名変更です。あえて「工業」という言葉を外すことで、従来の製造業という枠組みから脱却し、新たな価値の創造へと舵を切る。同時に、アルファベット表記に刷新することで、私たちの技術力をグローバル市場へと展開していく。DAIKENというブランドを、世界で通用する信頼の証へと昇華させていきます。
これからのDAIKENが提供すべきは、建材そのものではなく、その先にある「空間」、そしてそこで人々が過ごす体験や経験です。社会に「ここちよさ」を提供する企業へと進化を遂げなければなりません。しかし、人によって「ここちよさ」の定義は異なります。例えば、家族が自然と笑顔になれる暖かなリビング、仕事や趣味に深く没頭できる静かなプライベート空間、あるいは健やかに深呼吸できる空気環境など、求められる価値は千差万別です。だからこそ、自分たちの技術を押し付けるのではなく、お客様の些細なニーズや困りごとに気づくマーケットインの感性を研ぎ澄ませる必要があります。
私たちが目指すのは、お客様一人ひとりに寄り添い、理想の空間をともに創り上げるパートナーとなることです。お客様が求める「ここちよさ」のアイデアを集め、私たちの技術で形にしていく。建材という枠を超えた用途の拡大や、エンジニアリング事業を結びつけることで、DAIKENにしかできないソリューションを提供する。それがDAIKENの目指す次代のビジネスモデルの一つです。

新長期ビジョン「TryAngle 2035」が始動
多様な視点で挑戦し、確かな「信頼」を築く

社会に価値を提供し続けていくためには、企業として持続的に成長し、強靭な経営基盤を築く必要があります。その道標となるのが、長期ビジョン「TryAngle 2035」です。
このビジョンには、建材メーカーの枠を超え、空間や体験を提供する企業へと進化していくという決意が込められています。「Try」は挑戦を、「Angle」は多様な視点を持つことを意味します。社員一人ひとりが好奇心を持ち、多様な視点から社会の課題を見つめ、新しい世界に飛び込んでいく。その挑戦の積み重ねが、会社の成長と社会への貢献に直結していくはずです。
そして、この長期ビジョンに向けた初年度となる今期、もっとも大切にしたいのは、信頼の輪を広げることです。企業経営の根幹は、お客様、お取引先様、そして社会からの信頼にほかなりません。掲げた計画を一つひとつ着実に形にしていくこと。そして、日々の業務において誠実さを貫き、透明性の高い組織風土を築いていくこと。こうした当たり前の積み重ねこそが、DAIKENの次なる成長を支える揺るぎない礎になると確信しています。

組織の壁を越え、「知の融合」で
グループの総合力を最大化する

こうしたビジネスモデルの変革を進めるには、何よりも組織の力を進化させる必要があります。DAIKENには営業部門や製造部門がそれぞれに誇りを持ち、独立して高いパフォーマンスを発揮してきた歴史があります。しかしビジネスが複雑化・高度化する時代において、個別の部門の力だけでは限界があります。グループ全体で多くの子会社を抱える中で、営業、製造、そして管理部門が持つ多様な専門性をフラットに結集し、全社一丸となった「総合力」を発揮しなければ新たな価値は生み出せません。
2024年度の専務執行役員着任以降、注力してきたのが組織同士の連携による「知の融合」です。管理部門の専門性を今まで以上に経営の意思決定に反映させ、グループ全体を俯瞰する仕組みを整えてきました。異なる視点が交わる時こそ、組織は最大の力を発揮します。異なるバックグラウンドを持つ人財が意見をぶつけ合うことで、これまでにない斬新なアイデアが生まれ、変化の激しい市場にも迅速に対応できる組織へと進化していくのです。
私自身、若い頃に営業部門から突然管理部門へ異動した際、最初は戸惑いの連続でした。しかし、そこで出会った管理部門のプロフェッショナルたちの視点に触れたことで、自分の見えていた世界がいかに限定的だったかを痛感しました。数字の裏にある現場の動きを読み解き、会社全体を俯瞰する彼らのアプローチは、営業しか知らなかった私にとって新鮮な驚きであり、経営の視座を養う大きな転機となったのです。だからこそ、社員一人ひとりが変化を恐れず、部門間の壁を越えてコミュニケーションを図れる環境をつくりたい。その組織基盤の強化として、2026年4月より新たな人事制度をスタートさせました。職種を大きく5つにわけ、社員一人ひとりのキャリアに応じた選択肢を拡充しています。加えて、社員が自らのキャリアを主体的に描けるよう、社内公募も継続しています。また、上司が部下のキャリアプランに寄り添い、人事が個々のスキルやポテンシャルをデータベース化することで、適材適所の配置や戦略的なジョブローテーションを可能にしています。こうした取り組みを通じて、人的資本経営で掲げる挑戦志向の風土をさらに推進し、当社が求める自律型人財を強化していきます。

培ってきた技術力で、北米市場に挑む

国内市場が縮小する中で、DAIKENが成長する機会となり得るのが海外市場です。為替環境が大きく変化する中、これからは、海外の製造拠点でつくったものを日本に持ち込むという従来型だけでなく、海外を巨大なマーケットと捉え新たなビジネスモデルにも挑戦していきたい。その試金石となるのが、現在、カナダで進行中のプロジェクト、DAIKEN North AmericaLtd.(DNAL社)での新木質ボード『DIO woodcore』です。北米市場における環境意識の高まりや高品質な木質素材へのニーズに対し、当社の技術は高い競争力を持っており、現地では大きな期待を受けています。これが成功すれば、次なるグローバル戦略の扉が開きます。伊藤忠グループが持つ海外での知見やネットワークとの協業も視野に入れ、DAIKENの技術力を世界に展開していきます。

こうした変革を牽引するのは、
ほかでもない「人」です

若手時代から海外に赴任して得た経験は、今でも大きな財産です。文化や価値観、さらにはビジネスの常識すら全く異なる環境に身を投じたことで、自らの固定観念が打ち砕かれ、多様性を受け入れることの真の価値を肌で学びました。ゼロから市場を開拓する泥臭さと、多様性への深い理解。これらの経験を通じた私の信念は、「人は変化がある時にこそ成長する」ということです。
社員が自らその変化の機会を掴み取れるよう、当社でも成長の場を提供しており、挑戦する自律型人財を後押しする環境が着実に整いつつあります。カナダのプロジェクトでも社内公募を行い、自ら手を挙げた熱意のある社員を送り出しました。こうした自律的な挑戦をさらに加速させるためには、制度を整えるだけでなく、挑戦にお互いが共感し、称賛しあえる社内風土を育むことが不可欠です。社員が多様な視点を持ち、好奇心に駆られて躊躇なく新しい世界に飛び込んでいけるような組織を、全社で体現していきます。

「ここちよさ」をともに創り上げる存在として、
次なる成長へ

DAIKENは今、創業以来培ってきた「ものづくり」のDNAを進化させ、新たな次元の成長に向けて踏み出す重要な局面にあります。これまでのキャリアを通じて私が学んだのは、いかに優れた技術や製品であっても、それが社会の課題解決や人々の豊かさに直結しなければ、持続的な価値を生み出すことはできないということです。DAIKENが持つ確かな技術力に、市場の変化を先読みする視点や、伊藤忠グループをはじめとする多様なパートナーとの協創を掛け合わせることで、私たちが社会に提供できる価値はまだまだ大きく広がると確信しています。
これまで培ってきた歴史と技術を誇りに、建材という枠を超え、空間と体験の「ここちよさ」を創造する企業へ。すべてのステークホルダーの皆様にとって、豊かな空間と体験を支えるなくてはならない存在として、愛され、選ばれ続けるために、DAIKENはさらなる挑戦を続けてまいります。