2024年12月27日
お話を聞いた方:亀田 忠(大建工業株式会社 コンフォート事業統轄部 快適空間部 部長)
インタビュアー:こにわ(サンミュージック)
☆本インタビューのダイジェスト映像はこちら
“「建築資材の総合企業」DAIKEN”として、住宅・建築業界ではおなじみの大建工業株式会社(本社:大阪府/本店:富山県)。幅広い分野で活躍している大建工業の事業に取り組む姿勢や魅力を伝えていくWEBマガジン「DAIKEN魂!」。
第14弾は、「理想的な室内環境」をテーマにインタビューしました!!
こにわ:みなさん、こんにちは。こにわでございます。
今回は、東京上野御徒町にあります大建工業の『ユカリラ』体感ショールームにお邪魔しています。
理想の温熱環境を実現するために輻射・伝導・対流をミックス!
こにわ:お話をしてくださるのは、亀田さんです。本日はよろしくお願いします。
亀田:よろしくお願いいたします。
こにわ:早速ですが、亀田さんがいらっしゃるのはどういった部署なのかお教えいただけますか?
亀田:私の部署は名前を“快適空間部”といいまして。
こにわ:えぇっ!?
亀田:これはね、私もすごい名前だと思うんですけれども。
こにわ:私、高校にそんな名前の部活があったら絶対に入ってましたね(笑)
亀田:世間の皆様に快適な空間を届けるという謎の仕事をしています(笑)
こにわ:(笑) 大建工業さんは快適な空間づくりのためにどのようなことをされているんですか?
亀田:大建工業の企業理念のひとつに「安全・安心・健康・快適にこだわります」という文言がある通り、我々はいつも安全で快適な空間づくりを意識しています。ただ、今までの製品でいうと防音や吸音、湿度を調整する調湿建材などはありましたが、それらは建材として受け身の機能だったと思うんです。快適空間部ではエアコンと一緒に空調を考えるということで、もう少し踏み込んだ事業だと考えています。
こにわ:私たちは電源をピッと入れておしまい、あとは空調の性能まかせということが多いと思うのですが、「空調を考える」というのは大建工業さんの技術を使って一緒にタッグを組むって感覚なんでしょうか?
亀田:そうですね。空調機と我々の技術を足して、より良くしていこうといったイメージです。
日々、様々な空間の快適性向上を目指して室内の空気質や温熱環境などの基礎研究に取り組みつつ、その研究成果をもとに課題解決に役立つ機能を備えた製品の開発・販売を行っています。
こにわ:めちゃくちゃ革新的ですよね。やりがいがありそうです。
ところで、今のお話に出てきた温熱環境とはどのようなものでしょうか?
亀田:温熱環境というのは、暑くもなく寒くもない、人が快適と感じる環境のことですね。
日本は四季がはっきりしていて、夏は暑くて湿度が高く、冬は寒くて乾燥しやすいなど、気候の変動が激しい国なんです。その影響でストレスを感じたり、健康を害したりすることもあるので、室内の温熱環境を快適に保つことは非常に重要だと考えています。
こにわ:確かに日本の四季は素晴らしい面もあるのですが、気候の変化が大きくて体調を崩すこともありますし、一年を通して快適に過ごすのは難しいかもしれませんね。夏はジメジメしていて湿気がすごいですし、冬は寒いのになかなか部屋が暖まらなかったり、乾燥や肌荒れが気になったりしますね。
亀田:日本の住宅の空調はほとんどがエアコンですよね。足元が暖まりづらいとか不満はあるけど、こんなもんだと思って皆さん使っているのではないでしょうか。それで、温度を上げたり下げたりする程度で調整されていますが、我々はその潜在的な不満を解決できればいいなと考えています。
こにわ:イメージとしてはエアコンの機能を後押しする感じなのか、エアコンの効果を増大させるものなのか、その辺はどっちに近いんですかね。
亀田:増大ではないですけど、もう少し上手に使ってあげたいといったイメージです。
こにわ:いいコーチングみたいな感じですよね。
亀田:そう、そう、いいコーチング。
こにわ:選手をほっぽり出すんじゃなくて、選手にはいいコーチを。
亀田:選手の能力は一緒なんですよ。一緒なんですけど、その使い方をコーチングしてあげるということなんです。
こにわ:それ、めちゃくちゃ面白いですね(笑) そんないいコーチがいるなら絶対使いたいぞって思いました。
亀田:普通にエアコンを使うと、室内に吹き出す風だけで空調しようとしますが、我々はまず床の下に空気を吹き出してやることで、7割を風の力、残りの3割を輻射の力として使うようにしてあげる、といったイメージでうまくコーチングしています。
こにわ:今、輻射という言葉が出ましたけど、コーチの役割もいくつかあると思うんですね。輻射以外にはどういうものがあるんですか?
亀田:輻射・伝導・対流という3つの熱の伝え方があります。
こにわ:じゃあ3人のコーチがいるわけですね。バッティング、守備……
亀田:走塁。
こにわ:(笑) 野球の話にするとめちゃくちゃわかりやすくないですか、まさにそういうことですよね。
ひとつずつ解説していただきたいのですが、まず輻射とはどういうものですか?
亀田:輻射は太陽光などの遠赤外線(電磁波)によって離れたところにも熱が伝わる現象です。例えば、こたつやパネルヒーターが輻射の一例です。風を発生させず自然に部屋全体を暖めることができますが、温まるまでに時間がかかることがあります。
真夏にトンネルの中に入った時、風もないのに何となくひんやりするのも輻射の効果ですね。
こにわ:なるほどね。体感でちょっとひんやりと。
亀田:体温を吸い取られているという、そんな感じですね。
こにわ:そういう感覚が輻射では起きているってことなんですね。
亀田:それが輻射の伝わり方だと思います。
こにわ:面白い。あと2つですよね。
亀田:伝導は物質を通して熱が伝わる現象です。例えば、ホットカーペットは直に接触している部分を暖めます。特定の場所に集中して熱を伝えることができますが、接触していない部分には熱が伝わりません。
こにわ:輻射、伝導ときてあと1つ。
亀田:対流は空気や液体の流れによって熱が伝わる現象です。エアコンの温風や冷風が対流の一例なので一番わかりやすいですね。
部屋の温度を素早く変えることができますが、風が体に直接当たることで温まったり冷えたりしますので、風を不快に感じることが結構あります。他にホコリを舞い上げたりするデメリットもあり、これを解決するのは対流だけだとなかなか難しい。
そうしたことでお悩みの方々の課題を解決するために、大建工業では「対流」「伝導」「輻射」の良いところをバランスよく取り入れた理想的な冷暖房システム『ユカリラ』を提案しています。
こにわ:うわぁ〜、全部入りって感じでなんか贅沢ですね! 理想的な冷暖房システムとは何ともすごそうです。
部屋のどこにいても「安全・安心・健康・快適」な冷暖房システム
こにわ:それでは、その『ユカリラ』について教えていただけますか?
亀田:はい。『ユカリラ』はエアコンの風を直接部屋の中に入れるのではなく、床下空間や輻射パネルに送り込んで床部分を暖めたり冷やしたりします。そうすることで暖気や冷気だけでなく、輻射や伝導の効果も活用できるため、快適で理想的な温熱環境を生み出すことができるのです。
こにわ:えぇっ!? エアコンの風をそんな形で活用しているんですか!? もっともっと『ユカリラ』の特徴 を教えていただけますか?
亀田:はい。『ユカリラ』の特徴としては、「快適」「健康・安心」「省エネ」という3つのポイントを追求していまして、それによって理想的な室内環境を実現できる次世代の冷暖房システムだと思っています。
こにわ:おお、何かその3つのポイントの字面だけでもう心地良いですね。それぞれ詳しくお聞きしたいんですが、では、まず1つ目の「快適」について教えていただけますか。
亀田:冷暖房を入れている時に、室内で温度ムラや強い気流を感じてしまうと、居心地の良い空間とは言いにくいですよね。快適な空間の条件というのは、どこにいても同じ室温で、冬は暖かく、夏は涼しく感じられることだと思います。
『ユカリラ』であれば、部屋のどの場所にいても温度が均一で、なおかつ冷暖房の存在を忘れてしまうほど気流感が少ない、まさに快適な空間が実現できます。
【計算条件】2階建て住戸の1階角部屋を想定 / 建物断熱性能:平成28年度省エネ基準準拠 / 換気回数:0.5回/h / 外気条件:7℃
こにわ:確かに壁掛けエアコンで暖房を入れた場合、部屋の天井の方は暖かいのに、下の方はなかなか暖まらないということがよくありますね。部屋のどこにいても心地良いというのはありがたい話ですよ。
亀田:水平面でも上下でも温度差がほとんどありません。冬は足元が冷たくて頭は暑いというのが普通の空調だと思うんですが、ここは上から下までほとんど温度が変わらない。
この部屋の壁には床に近いところから人の頭ぐらいの高さまで複数の温度計を設置しているんですが、下から上までほぼ一緒の温度になっていますよね。
こにわ:ほんとだ、全部同じぐらいの温度ですね。
亀田:いつも温度がほとんど変わらず、足元が冷えないというのは、冬場にはとてもいい環境だと思います。
また、このシステムの良いところは、風がほとんどないということです。このショールームに入られた時から 気づかれていたかと思うのですが、風をほとんど感じないのに冷房や暖房の効果を実感できるというのが大きなメリットです。
【計算条件】部屋サイズ:4.55m×5.46m×天井高2.6m吹き出し風量:540m3/h
こにわ:確かに、風を感じないのに部屋全体がとても快適な温度になっていますよね。
亀田:快適性能をはかるものさしに「PMV(Predicted Mean Vote:平均予想温冷感申告)」という指標があるんですが、これは数値が0だと暑くも寒くもない中立状態で、95%の人が快適と感じる環境を表します。
『ユカリラ』はPMV±0.5、90%の人が心地良いと感じる環境を目指しています。
こにわ:9割の人が心地良いと感じるなら、それはまさに「快適」といっても過言ではないですね!
2つ目の「健康・安心」はどのような内容なんでしょうか。
亀田:高齢者の方が利用する建物で配慮したいのが部屋間の温度差です。部屋が暖かくても廊下やトイレ、脱衣所などは寒いという状況は結構あると思います。この温度差が血圧変動に大きく影響するため、注意しなければいけません。
『ユカリラ』なら個別空調と違って複数の部屋をまとめて冷暖房できるので、それぞれの部屋の温度差を小さくすることができます。
部屋間の温度差が小さい、健やかな温熱環境
【測定条件】 場所:東京都23 区内/間取り:3LDK(約80m2)/階数:20階以上/ユカリラ:YFP タイプを導入/測定時期:暖房2023年2月下旬・冷房2023年7月下旬/エアコン定格能力 ユカリラ:暖房 8.0kW 冷房 7.1kW/対流空調: LDK、主寝室に各1台 暖房11.0kW 冷房10.0kW 居室に各1台 暖房 2.2kW 冷房 2.2kW/測定高さ 各居室:床上0.6m 非居室:床上1.1m/空調設定 ユカリラ:暖房25℃ 冷房26.5℃ 風量自動 対流空調:暖房・冷房26〜28℃ 風量自動
亀田:加えて、床の表面温度も電気式の床暖房は30℃を超えますが、『ユカリラ』の表面温度は24℃前後です。低温やけどが起こりにくく、子どもが過ごす建物でも安心して採用できるのがメリットです。
床の熱による、低温やけどが起こりにくい
こにわ:なるほど、子どもから高齢者まで安心して利用できるというのが素晴らしいです。特に健康への配慮が求められそうな幼稚園や高齢者施設などに導入されていたら嬉しいですよね。
3つ目の「省エネ」に関してはどうでしょうか。
亀田:天井が高い空間で壁掛けエアコンを使用した場合、冷暖房に無駄なエネルギーを使いがちです。特に暖房時は暖かい空気が天井付近に集まり、人が活動するエリアを暖めるのに余計なエネルギーが必要になります。
一方、『ユカリラ』は人が活動するエリアを中心とする効率的な空調が可能です。『ユカリラ』には床面近くで最も効果を発揮し、夏は涼しく、冬は暖かくするという特性があります。これにより、従来の対流空調と同等から10%程度のエネルギーを削減できます。
こにわ:なるほど、人がいるところを狙って冷暖房できるというのがすごいですね。快適空間がつくれて省エネにもつながるとは。そこまで考えているとは、さすが大建工業さんですね。
ちなみに『ユカリラ』を採用しやすい建物はあるんでしょうか?
亀田:小さいお子様やご高齢の方には優しいシステムですので、幼稚園、保育園のような建物や老健施設みたいなところには多数ご採用いただいています。
こにわ:やっぱりそうなんですね。
亀田:風が小さく床暖房に比べて温度もそんなに上がらないので低温やけどの心配をしなくていい点などを評価していただいていると思います。
あと、今一番要望が多いのは体育館なんです。
体育館は避難所などにも利用されることがあるので空調はとても重視されます。近年は夏もものすごく暑くなりましたので、体育館に冷房を入れたい、なおかつ避難所としても快適に使いたいという要望を数多くいただいています。
バドミントンなどの風を嫌う競技もあるので、風を感じない体育館にしたいという要望もたくさんいただいています。それらの要望に『ユカリラ』はとても適していますので、現行ではこれが一番必要とされていますね。
こにわ:まさにうってつけですよね。本当に色々な建物で活用できそうですね。
亀田:『ユカリラ』は公共・商業施設から住宅まで、様々な建物でご利用いただけるように幼稚園や高齢者施設、マンションや住宅向けに2タイプ、体育館やアリーナなどの大規模施設向けに1タイプ、店舗や工場などの施設向けに1タイプと、建物の構造や空間形状に合わせて3シリーズ4タイプをご用意しています。
こにわ:へえぇ、体育館だけでなく工場やアリーナといった大規模な施設にも対応可能なんですか、すごいですね! 大規模施設が快適空間になったら行くのも楽しみになりそうです。
特に健康に過ごしてもらいたいお子さんや高齢者の方が利用する施設には、ぜひ『ユカリラ』を採用していただきたいですね。
『ユカリラ』の良さを知るためには体感ショールームへ!
亀田:では、こにわさん。実際に『ユカリラ』を体感してみてもらえますか。
こにわ:はい! ……というか、この取材中にずっと体感していたんですが(笑)、本当に快適な温度が保たれていますよね。今日は12月上旬ということで外もかなり寒かったんですが、部屋のどこに行っても寒いところがないのがいいです。
まず、システムについて解説しているパネルの前に来ましたけれども。
亀田:この図で『ユカリラ』全体の概要について説明しますね。
まず、天井にエアコンがありますが、ここから直接室内に風は出てきません。
エアコンから出た風はダクトを通って床下に入ります。その風は床下にある流路を通り、ユカリラ輻射パネルの中に空気が送り込まれることで熱が床材に伝えられます。
熱を伝え終えた空気は、還流口から室内にそっと戻されて、エアコンがその空気を吸い込む、というのが一連の流れとなります。
この循環によって部屋の上も下も、どこにいても同じぐらいの温度になるんですよ。
こにわ:これ、図で簡単に解説されていますけど、このシステムが完成するまでに相当な労力をかけてここまでたどり着いていますよね。すごすぎますよ。
亀田:そこに還流口があるんですが、手をかざしてみてもらえますか? 柔らかい風が出ていると思います。
こにわ:なるほど、ほとんど風を感じません。最後は優しくなって帰って来るわけですね。
亀田:次は実際にダクトの前に行ってみましょう。
こにわ:ダクトの前に来ました。これが『ユカリラ』の内部構造の一部ですか。この管の中を風が通っているんですよね。これ、実際は壁に隠れてしまうものなんですか?
亀田:そうですね、このショールームでしか見られない内部構造となります。エアコンの風はこのダクトを通って床下に送られるんですが、一番初めの風の強さをここで感じることができます。ここの床下を開けてみますので、手をかざしてみてください。
こにわ:うわっ、さっきとぜんぜん違う。めちゃくちゃ風強いですね。
亀田:はい、このぐらい強い風じゃないとパネルの中に風が入っていかないので、相当強い風を送っています。
こにわ:でも、還流口では優しくなって帰ってくると。何か20代の時に尖っていた人間が、45歳ぐらいで穏やかになって帰ってきたみたいな。成長した人間のように帰ってくるんですね。
亀田:そういうことです。
こにわ:しかし、本当に『ユカリラ』は静かですねぇ。エアコンの風に当たるのが苦手な人も結構いると思いますが、『ユカリラ』は風がほとんど発生しないので、肌荒れとかを気にする人にもいいですよね。快適すぎてずっとここにいたくなっちゃいますよ。
それでは最後に、直近の展望や目標について何か思い描いていることはあったりしますか?
亀田:冷暖房システムとしては、 快適ということすら意識しない、一切不満が出ないことが一番だと思います。それを当たり前にしたいですね。
こにわ:うわぁ、無意識の快適ってすごいことですよね。
亀田:あと、まだ『ユカリラ』の認知度が低いという点もありますので、知っていただいて良さをわかっていただけたら、もっと世間に普及させることができるのかな、と思っています。
こにわ:この『ユカリラ』に興味がでてきたという人が実際に体感することはできるんですか?
亀田:プロユーザー様向け限定となりますが、今お話をしております、この『ユカリラ』体感ショールームをご用意しております。完全予約制ですので、見学をご希望の方は弊社営業担当を通じてご予約いただければと思います。
※『ユカリラ』に関するお問い合わせや、ショールームの予約については下記のフォームよりお問い合わせください。
(ショールームについては、プロユーザー様向けのショールームの為、一般のお客様のご予約は受け付けておりません。ご了承ください)
こにわ:いやぁ、自分も実際に体感してみたら、なるほどこれは快適だ!と納得しちゃいましたからね。興味のあるプロユーザーの方にはぜひ体感してほしいですね。
亀田:大建工業としては、今後も誰もが健康で心地良く、安全で安心して過ごせる環境づくりを目指し、『ユカリラ』をはじめとする快適空間の普及に向けた製品開発やご提案を進めていきますので、ぜひよろしくお願いします。
こにわ:いいコーチがついていますから、『ユカリラ』には。もっと皆さんに知ってもらいたいなと思いますね。 今日はほんとに素晴らしい冷暖房システムのお話を聞かせていただきました。亀田さん、ほんとに素晴らしい話でした。ありがとうございました。
それでは締めのセリフいきますよ、DAIKEN〜
こにわ・亀田:『魂!』