2024年8月19日
お話を聞いた方:駒倉 昌和(大建工業株式会社 R&Dセンター 音技術研究室 室長)
インタビュアー:こにわ(サンミュージック)
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“「建築資材の総合企業」DAIKEN”として、住宅・建築業界ではおなじみの大建工業株式会社(本社:大阪府/本店:富山県)。幅広い分野で活躍している大建工業の事業に取り組む姿勢や魅力を伝えていくWEBマガジン「DAIKEN魂!」。
第13弾は、「Well-Being(ウェルビーイング)」をテーマにインタビューしました!!
こにわ:みなさん、こんにちは。こにわでございます。
今回は久々の訪問でございます、岡山県にあります「DAIKEN R&Dセンター」に来ています。今回は最近よく耳にする「Well-Being(ウェルビーイング)」について、同社R&Dセンター音技術研究室室長の駒倉さんにうかがいたいと思います。駒倉さん、よろしくお願いします。
駒倉:よろしくお願いします。

DAIKEN R&Dセンター エントランスにて
価値観の多様化により、心の豊かさが求められる時代に
こにわ:さっそくですが、「Well-Being」の話をうかがう前に……、すみません、Well-Beingってどういう意味なんでしょうか(笑)?
駒倉:「Well-Being」の定義なんですけども、「身体的、精神的、社会的に良好で、持続的に幸福な状態」を指すと言われています。 いま現在注目されている考え方で、各企業でもホットワードになっていますし、実際に取り入れる企業も増えています。これからもっと話題になっていく言葉ではあるかなと思うんですけども。

こにわ:そのWell-Beingが注目されるようになったきっかけはなんでしょうか。
駒倉:今の時代、働き方改革やSDGs、ダイバーシティといった考えが浸透してきて、人々の価値観も多様化してきたと思います。そこでお金のためだけに働くというよりも、健康や心の豊かさが重視される時代になってきたというふうには感じますね。
例えば、国連の関連団体が毎年調査している世界幸福度ランキング(『世界幸福度報告書』2024年版)では、日本は143ヵ国中51位で、主要7ヵ国(G7)中では最下位という結果が出ています。
また厚生労働省の「労働安全衛生調査」では、8割を超える労働者が仕事や職業生活に関するストレスを感じていることがわかっています。
これは現状の日本において、自分の置かれた環境に満足していない人が多いということだと思うんです。企業においてもまだまだ改善の余地があるということではないでしょうか。
こにわ:心の豊かさって目に見えないものなんで、誰もが満足できるようにするってのは難しいところだなと思うんですよね。例えば目の前にニンジンをぶら下げられて働く、それを幸せと思う人もいる。その辺の価値観も時代とともに自分の中で変化して、あることは少し削られていったり、別なことが加えられたりして……、駒倉さん自身にもそういう多様化の面で変化があったりしますか。

駒倉:ありますね。私の部署にも後輩がどんどん入ってきているのですが、やっぱり考え方が全然違うんですよね。それを時代のせいにしたりする面もあると思うんですけど、先ほど言ったような価値観を多様化させていくためにも、後輩たちの考え方も共有して理解していきたいと思っています。それをどう受容してどんな新たな価値をつけて返すかのような、そういったところが今後重要になってくると思いますね。
こにわ: 先ほど、企業において環境改善の余地があるとおっしゃってましたが、実際に企業がWell-Beingに取り組むことでどのような効果が期待できるとお考えですか?
駒倉:そうですね。企業としては従業員が健康的かつ心豊かに働ける環境をつくることができれば、その職場で働き続けたいと考える従業員も増えるでしょう。そうなることで、いま問題になっている離職率を低下させることができるかもしれませんし、やる気をもって働いてもらうことで生産性の向上にもつながります。
さらに、その取り組みをしていることが企業のイメージアップになって、採用面でも優秀な人財を採りやすくなったり、投資家に評価されたりするなど、多くの良い影響が期待できると思いますね。
こにわ:なるほど。ただ、離職率を下げるためだけに取り組むのではなく、先ほど駒倉さんがおっしゃっていた通り従業員それぞれの価値を認めて、小さいことだろうが大きいことだろうが、成功したら価値観を受け入れることも大事なんだと思います。
駒倉:そうですね。環境改善も大切ですが、結局働くのは人間なので。
コミュニケーションは大切ですし、片方だけの意見じゃなくて相互に会話しなきゃいけない。そういったところも改善していくことで、先ほど言ったような生産性が上がって企業としてもよりよくなっていくのかなと思いますね。

こにわ:コミュニケーションという部分でいうと、建物ってすごく壁をつくりやすいなと思うんです。特にコロナ禍では多くの壁がつくられましたが、それによってコミュニケーションがとりづらくなる面もありました。建物の壁ってWell-Beingな働き方に大きな影響をもたらすと思うんですが、いかがですか。
駒倉:そういった意味ではこの「DAIKEN R&Dセンター」ですけども、研究施設でありながら研究者同士のコミュニケーションを大事にしていまして、いわゆるワンプレートオフィス、仕切りのないような執務室になっています。

DAIKEN R&Dセンター 外観

DAIKEN R&Dセンター 執務室
正直、以前の研究室は壁だらけ、仕切りだらけだったんですね。その頃から比べると明るくなりましたし、オープンでコミュニケーションがとりやすくなったという点は非常に良かったと思っています。
こにわ:確かに、この建物に入って室内が明るいなと思いました。壁とか床の素材の効果もあると思うのですが、窓が大きくて効率的に光が入ってきているのを感じます。
駒倉:五感を刺激するっていう意味では、日常的に感じる光であったり、壁や床の素材であったり、そういったところに配慮することも非常に大事なことかなと思いますね。
R&DセンターがWell-Beingな空間としての認証を国内初取得!

こにわ:何か「これって結構小さいことじゃん」って思ってる方も多いと思うんですけど、この小さいことの積み重ねが実は大きなWell-Beingにつながってるんだと思います。
お話をうかがっているとWell-Beingは企業にとってはいいこと尽くめだと感じているのですが、大建工業さんでは何か特に取り組まれていることはありますか?
駒倉:大建工業のWell-Beingへの取り組みのきっかけは、2021年に「point 0 committee(ポイントゼロコミッティ)」という他社共創型コンソーシアムに参画したことです。
近年ワークスタイルが多様化したことで、オフィス空間が従来の業務を行うだけの場所というだけでなく、生産性の向上につながるような働きやすい環境にすることが求められるようになりました。弊社では市場の変化なども捉えて、先進的な取り組みを実施している企業との連携によるイノベーションが必要だと考えたことが参画の理由となります。
こにわ:その「point 0」では具体的にはどのようなことを行っているのですか?
駒倉:メインは東京の丸の内に「point 0 marunouchi」という会員制のコワーキングスペースがありまして、そこが会員企業さんとの共創の場となっていて、一緒にいろいろな実証実験をしています。

共創の場となるコワーキングスペース「point 0 marunouchi」
例えば職務環境における音環境の改善であったり、安全・安心な空間づくりをするためにどういったことができるかであったり、また最近ではオフィスの内装木質化がワーカーの快適性に与える影響などを実証実験して、新たなソリューション開発や商品開発につなげようと取り組んでいます。
関連ページ⇒「DAIKENのオフィスへの取り組み」
この事業への参画が、弊社のWell-Beingへの取り組みの第一歩となっていますね。
こにわ:なるほど。いま大建工業さんのWell-Beingへの取り組みのきっかけについてお話をうかがいましたが、私がこれまで何度も取材をさせていただいたうえで感じているのは、今まで大建工業さんがいろいろなことを丁寧にやってきたことが既にもうWell-Beingだったということが結構あるんじゃないかと。
駒倉:そうですね。いろいろ取り組みをしている中で人財を資本として捉える「人的資本経営」、これに長年取り組んでおりまして、弊社の中につきましても従業員一人ひとりのパフォーマンス、そういったところを最大限に発揮できるような環境づくりに昔からずっと取り組んできています。
こにわ:何か最近、国内初の認証を受けたともお聞きしているんですが、どういった評価か教えてもらえますか。
駒倉:はい。本日お越しいただいたこの「DAIKEN R&Dセンター」という研究施設なんですが、アメリカの公益企業であるIWBI(国際WELLビルディング協会=International WELL Building Institute)が実施している、人の健康やWell-Beingに関わる視点からオフィス空間を評価するWELL認証の「WELL Performance Rating(ウェルパフォーマンスレイティング)」を2024年4月に国内初取得することができました。

「WELL Performance Rating」認証書
これは建物の室内環境において、光・音・空気・水・温熱・満足感の性能を評価するもので、実地評価やセンサー技術による測定で33項目の認証条件の内の21項目以上クリアする必要があります。
この「WELL Performance Rating」の取得は先ほど申し上げましたとおり国内初で、海外を含めても9例目の事例となるそうです。
こにわ:ちょっと待ってください。おめでとう(立ち上がって拍手)! いや、でも、これを受けるって国内初めてですか。すごくないですか?
駒倉:ちょっと僕もびっくりしました。
こにわ:(笑) いや、でもやっぱりそれって、ここ数年の努力だけじゃなくて、長年培ってきたものがあって、それが最終的に花として咲いたみたいな感覚が私にはあるんですが、その辺、いかがですか。
駒倉:そうですね、この「DAIKEN R&Dセンター」は2018年10月に開所したんですけども、実はオフィス環境自体はその時からずっとそのままなんですよ。だから、開所当時からWell-Beingな環境だったと証明されたことになるんですね。
こにわ:灯台下暗しっていう言い方が合ってるかわかりませんけど、実は自分たちが働いていた環境がもう既にWell-Beingだったんだって、改めてこの認証で気づいたわけですよね。
駒倉:はい。

こにわ:もう一つ言わせてもらっていいですか。よく気付いた! おめでとう(拍手)(笑)。いや、でも何か、こういう評価を取得できたことを 誇りに思いませんか?
駒倉:そうですね。正直、国内初はほんとにびっくりしましたし、世界でも9例目って聞きまして、なかなかレアな評価をいただいたなって思っています。
快適性を追求した、Well-Beingな施設空間づくりを提案
こにわ:従業員の働きやすさを考えて自主的にやってきたことが、そのままWell-Beingにつながり、海外の機関にあらためて評価されたというのは素晴らしいですよね。
ちなみに「DAIKEN R&Dセンター」の設計のこだわりはどのあたりなんでしょうか。
駒倉:そうですね。この「DAIKEN R&Dセンター」は、弊社の建材や様々な知見を用いて設計されていまして、例えばですが、先程もチラッと話に出た仕切りのないワンプレートオフィスであったり、いま取材していただいているこの場所もそうなのですが、別の場所にある階段踊り場にはコミュニケーションスタジアムというものもあります。

階段踊り場に設置された交流スポット「コミュニケーションスタジアム」
こにわ:スタジアムっていいですね。自分もスポーツをやってるから(笑)。
駒倉:当然、階段の踊り場なので、そこにどんどん研究員も通りがかりますよね。例えば何かしらディスカッションしている中で、知見がある人が通ったらちょっとおしゃべりしましょうよ、と誘って参加してもらったりもできます。
こにわ:えー、面白い。
駒倉:たくさんの研究員同士の偶発的なコミュニケーション、そういったことが自然に、活発に生まれるような設計を心がけました。
こにわ:偶然を誘発するような動線をこうやって建物でつくれるって、これ大建工業さんならではですよね。さすがです。
駒倉:ありがとうございます。
こにわ:今回、「DAIKEN R&Dセンター」という研究施設が「WELLパフォーマンスレイティング」を取得したことや、その設計のこだわりをお聞きしましたが、大建工業さんが開発・製造してる製品にも当然、Well-Beingに貢献できるものがありますよね?
駒倉:もちろんそうです。こにわさんには、これまでの取材を通じて弊社の製品についていろいろと話を聞いていただいたように、Well-Beingな空間づくりに貢献できるような高機能な建材は創業以来多く開発してきまして、それぞれ好評をいただいています。
そして今回の「WELL Performance Rating」取得を受けて、今後、お客様のオフィスや商業施設などの施設環境に関してどういったアプローチができるかというところで、新たに「SOUND(おと)&MIND(こころ)」というソリューションでWell-Beingな空間づくりを提案させていただいています。

こにわ:おお、それはどういったものなのか教えてもらっていいですか。
駒倉:はい。例えばですが、「音漏れの心配なく安心」であったり「空間ごとに適した音配慮」であったり「声がはっきり聞こえて快適」といった『SOUND(おと)』に関する環境づくりに加えて、「自然とのつながりを感じる」であったり「くつろぎ感がある」「木目に癒やされる」といった『MIND(こころ)』を豊かにする演出にも配慮しようということで、オフィスや商業施設などの快適性を追求した提案になっております。
従業員や施設利用者の心身の健康、生産性向上などを考えた施設環境づくりで、これは素材・建材・エンジニアリングなど多岐にわたる事業を展開している大建工業だからできる提案だと自負しています。

オフィス|反響音を抑えて会議中の声を聞きとりやすく。木質意匠の自然を感じる空間の中で会議の活性化をサポート。
関連ページ⇒「DAIKENとつくるWell-Beingな施設空間」
こにわ:いやー、特にSOUNDの提案は、40年以上音響事業に力を入れてきた大建工業さんならではですね。今まで培ってきた技術が自然にWell-Beingな空間づくりにつながっていたわけで、まさに時代を先取りしていた感じがして、さすがだなぁと思いました。
昨今Well-Beingっていう言葉が注目されてきましたけど、大建工業さんを取材し続けてきたことで、「あっ、何だ。もうWell-Beingやってたんじゃん」と思わせてくれるのが、あらためてすごいと感じました。
駒倉:ありがとうございます。
こにわ:それでは最後に今後の展望や目標などありましたらお聞かせください。
駒倉:そうですね。私たちはもともと建築音響が得意な分野の一つですが、やはり最終的には空間環境全体、光とか空気とか温熱といったところも含めてトータルでご提案できるようにしていきたいと思います。
今後も、Well-Beingな職場環境整備によって人財のエンゲージメント向上を図り、安全・安心・健康・快適な空間を創出する研究開発力を高めることで、笑顔あふれる未来に貢献できるような製品・サービスの創出に努めてまいります。
こにわ:国内初の評価をもらった施設であるこの「DAIKEN R&Dセンター」で仕事できるんですから、意欲を掻き立ててくれますよね?
駒倉:そうですね。やっぱりこの執務環境が素晴らしいので、ここで私たちスタッフを含めて全員でどれだけいいものを研究開発できるかという点が、大建工業の未来にとって大事になってくると思います。
こにわ:そうですよね。ちなみに今後「DAIKEN R&Dセンター」で他にやってみたいことや考えていることとか、何かありますか?
駒倉:ぶっちゃけですけども、いま進んでいる計画がございまして……。
こにわ:おっ、来た!
駒倉:2025年10月には、この「DAIKEN R&Dセンター」の裏手に、音響設計の開発拠点となる「音環境ラボラトリー(愛称:音ラボ)」が完成する予定です。

こにわ:うわっ、すごいなあ。そこでまたいっぱい実験して……。
駒倉:そうですね、それらも活用して、今後も最先端の技術を開発・活用してさらにWell-Beingな空間づくりに貢献していきたいと考えています。
こにわ:本日は本当にありがとうございました。
快適な環境づくりを目指すWell-Beingへの取り組み、素晴らしいと思います。自社の施設で「WELL Performance Rating」を取得されている大建工業さんですから、Well-Beingな施設空間づくりの提案にも説得力がありますよね。今後も期待大です!
それでは締めのセリフいきますね。心のWell-Beingに!
こにわ・駒倉:『DAIKEN魂!』
