2025年5月19日
※記事内容は撮影当時のものです。
お話を聞いた方:億田 正則(大建工業株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO)
インタビュアー:こにわ(サンミュージック)
☆本インタビューのダイジェスト映像はこちら

“「ずっと ここちいいね」を実現する企業 DAIKEN”として、住宅・建築業界ではおなじみの大建工業株式会社(本社:大阪府/本店:富山県)。幅広い分野で活躍している大建工業の事業に取り組む姿勢や魅力を伝えていくWEBマガジン「DAIKEN魂!」。
第15弾は、「創立80周年を迎えるDAIKENの新たな試み」をテーマにインタビューしました!!
こにわ:みなさん、こんにちは! こにわでございます。
今回は、大建工業さんが何やら新たなことをたくさん始めるということで、スペシャルな方にお話をうかがいたいと思います。
代表取締役 社長執行役員 CEOの億田正則さんです。本日はよろしくお願いします。
億田:よろしくお願いします。
3つのTRYに挑戦!

こにわ:それではさっそくですが、大建工業さんが始めようとしている新たなことについてお聞きしてもいいですか?
億田:はい。まず、私ども大建工業は本年9月26日に創立80周年を迎えます。そして、この節目の年に、将来に向けて3つのことにTRYしたいと思っております。
こにわ:おおー、創立80周年ですか、おめでとうございます! 80年ってすごいですね、歴史の重みを感じます。
億田:ありがとうございます。大建の80年は先人の方々が積み重ねてきた歴史と、弊社を長年ご愛顧いただいているお客様のおかげと思っております。
こにわ: 先ほどのお話にありました、3つのことにTRYしたいということですが、それは一体どんなことなのですか?
億田:はい。まず1つ目のTRYは社名の変更です。
こにわ:えええ!! 今、さらっと仰いましたが、社名変更ってめちゃくちゃ大ニュースじゃないですか!

億田:そうですね。この節目の年に新たなイメージで出発したいと考えておりまして、創立記念日の2025年9月26日より、現在の「大建工業株式会社」から「工業」を外し、「大建」をアルファベットで表記した「DAIKEN株式会社」という社名に変更します。

こにわ:1つ目の内容からもうビックリしちゃっているんですが、なぜ「工業」がなくなったのか、また、社名が漢字からアルファベットに変わっていますが、それらを変更することになった想いについてお聞かせください。
億田:現在、われわれを取り巻く環境が大きく変わって いて、大建の会社そのもの、社員、業界が変わらないといけない状況にあります。その1つの区切り、決意の表れとして社名を変更することにしました。
社名から「工業」がなくなったのは、これまでメーカーとして長年モノづくりを続けてきて、もちろん今後も大切にしていくわけですが、今後はそれだけにとらわれず、提供価値を「モノ」から「コト」へ変えていく姿勢を見せるためです。コロナ禍を経て、お客様がより住み心地の良い空間を求められていることに対して「コト」提案を行っていくことが理由の1つです。
また、アルファベット表記にしたのは、海外から認知される社名にすることで、これまで以上にグローバル展開を加速させて、次のステージへと飛躍するという意思表示です。今現在でも海外ではDAIKEN CORPORATIONという表記を使っているので、それを国内外とも一緒にしたというところです。
こにわ:なるほど、様々な想いが込められているんですね、納得しました。社名変更は今回が初めてですか?
億田:実は私どもの会社ができた1945年当時は「大建木材工業株式会社」という名前でした。それが1967年に「木材」の文字が抜けて「大建工業株式会社」となり、以後57年間にわたって「大建工業」として事業を進めてきました。
こにわ:57年間も使っていた社名を変えるというのですから、1つ目からこれはかなり大きなTRYですね! 私も今後は“DAIKENさん”と呼ばせていただきます。文字にしないと違いがわからないと思いますが(笑)。
次に2つ目のTRYをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
億田:2つ目のTRYはコーポレートメッセージとタグラインの変更です。
こにわ:おおー……といいたいところなのですが、すみません。ちょっと聞き慣れないタグラインというものについて教えていただけますか。
億田:タグラインというのは一般的に企業の想いを短くまとめたメッセージのことです。会社やブランドのトップページやロゴマークの近くに、短い文章が表記されているのを見たことがありませんか?
こにわ:あーっ、なるほど、よく見ます。あれがタグラインなんですね。
億田:そうです。私どもは今現在「キノウを超える、ミライへ。」というタグラインを使用しています。これは2025年に向けた10年間の長期ビジョン「GP25」で目指した企業像、「建築資材の総合企業」を表現したもので、2016年から使用していました。
今後はタグラインを「ずっと ここちいいね」に変更します。

こにわ:へえ〜、前のタグラインも良いと思っていたのですが、またガラッと雰囲気が柔らかい感じに変わりましたね。この言葉に込められた想いなどはありますか?
億田:そうですね。「ずっと」には、お客様をはじめとするステークホルダーや社会に対して持続可能な関係を大切にする気持ちと、住空間を越えたあらゆる生活空間に新しい価値を届けたいという想いを。
「ここちいい」には、Well-beingな空間を実現して、環境・社会・人すべてのここちよさを追求したいという想いを。
「いいね」には、あらゆる人に愛され、選ばれる企業でありながら、互いに共感し、いいねと言い合える社内風土をつくりたいという想いを込めています。
人が生活するすべての空間で、あらゆる人が「ここちいい」と感じられることを目指し、DAIKENから社会に「いい循環」、すなわちWell-Cycle(ウェルサイクル)を届けたいと考えています。
こにわ:Well-Cycleとは聞きなれない言葉ですが、一体どういう意味ですか?
億田:Well-Cycleは弊社の独自用語です。

この言葉には、「サステナブルなモノづくりによる資源循環」「ウェルビーイングにつながる五感の快適性」「共感と称賛による良い相互作用」という3つの意味が含まれています。それぞれが「環境」「生活環境」「人間関係」における好循環につながっており、弊社が掲げる「ずっと ここちいいね」を一言で表すキーワードです。
こにわ:なるほど、この短いメッセージにいろいろな想いが込められているんですね。快適性を追求し続けているDAIKENさんらしいコーポレートメッセージだと思います。
それでは、最後に3つ目のTRYをお聞かせいただけますか?
億田:3つ目のTRYは、新ビジョンの始動です。
現在、弊社は2016年を初年度とした長期ビジョン「GP25」の最終年度を迎えています。そのため、今年度は「GP25」仕上げの年となる1年であると同時に、来年からの10年で目指す企業像を描いた新しい長期ビジョンの助走期間という位置づけと考えています。
こにわ:その新しいビジョンはどのような名称ですか?
億田:「TryAngle 2035(トライアングル にいぜろさんご)」といいます。

こにわ:なぜその名称になったのでしょうか? 何かイメージなどありましたら教えていただけますか?
億田:「トライアングル」というのはご存知の通り三角形のことです。私は滋賀県出身なのですが、3つの頂点で三角形がバランス良く成り立っているさまは、近江商人の経営哲学である売り手・買い手・世間(社会)が、すべて満足できる状態になることを目指した「三方良し」の精神に通じるところもあります。
この単語の前半部分である「トライ」は「挑戦」、後半の「アングル(角度)」は「成長に向けた新たな視点や右肩上がり」を意味します。また、T・R・Yそれぞれの頭文字から連想される単語から、弊社の未来をイメージさせるものをピックアップすることで、色々な意味合いを持たせています。
次期長期ビジョンのタイトルとロゴには、2035年に弊社が目指す姿が凝縮されています。

こにわ:まさに色々な想いやイメージが重なることで、10年後に目指す姿を表しているといった感じでしょうか。
億田:そうですね。
10年後にありたい姿 「ずっと ここちいいね」を叶える企業へ

こにわ:社名にコーポレートメッセージに新長期ビジョンと、時代が大きく変わるようなTRYが盛り沢山ですね。
「TryAngle 2035」は10年後を見据えた長期ビジョンで、「ずっと ここちいいね」という新しいメッセージも乗せながら会社は進んでいくわけですが、 10年後の姿についてもう少しお聞きしてもよろしいでしょうか。
億田:私どもの会社はこれまで住宅用の建材が中心でしたが、環境が大きく変わってきています。これはだいぶ先の話となりますが、ある研究ではこのままいくと700年後には日本の15歳以下の子どもが1人になるといわれています。それほど日本の人口減少は深刻なんですね。「人口≒住宅」という部分もあるかと思いますので、住宅だけではなく、徐々に商業建築分野や海外に軸足を移していく必要もあります。
今回の「TryAngle 2035」にはそのような想いや目標を入れながら、10年後、さらにその先も見据えて進めていこうと考えています。
こにわ:なるほど。それではDAIKENさんは10年後に社会課題解決なども含めて、どのような姿になっていると思いますか?
億田:1つはやはり環境に対するDAIKENとしての姿勢を示していくことです。DAIKENは色々な サステナブル素材(※)を持っています。

これらを使った建材を提供することで皆様にご愛顧いただいているわけですが、このサステナブル素材において国内外で圧倒的な影響力を持ちたいと考えております。弊社が長年培ってきた素材の力を国内だけでなく海外にも展開し、安定調達・安定供給することで取引先から信頼される企業になりたいですね。
また、廃材を単に捨てる、燃やすのではなく、もう一度原材料として使うというそれこそサステナブルな展開もさらに進めていきたいと考えています。
※【サステナブル素材の定義】
・地球環境に配慮した原料(低環境負荷・枯渇懸念が僅少、未利用材・再生材料 etc.)を使用していること
・安定的に調達・供給が行え、価格変動が少ないこと
こにわ:DAIKENさんは今でもグローバルな展開をされていますが、さらに上を目指すというわけですね、素晴らしいです。

億田:また、生活空間をアップグレードし、選ばれる「新スタンダード」をつくっていきたいと思います。省エネや耐震、抗ウイルスなどの暮らしに求められる“普通”は、時代の流れでどんどん変わります。
今は住宅だけでなく、オフィスや学校といった「家の外」においても、快適な環境で過ごしたいというニーズがどんどん高まっています。先程もいいました「モノ」から「コト」への変革は、五感に応える住空間づくりに貢献できるものを提供していくことも含まれると考えています。
例えば、現在は夫婦共働き世帯が増えていますが、忙しくてなかなか洗濯物を外に干せないので、部屋干し用の洗剤が売れていたりしますよね。でも、部屋干しをする住空間の湿気対策はどこまでやっているのかという問題が出てきます。
そこで“調湿”性能がある建材を持っている弊社の出番となります。

他にも自宅内で音の反響が気になったり、隣の部屋の音が気になったりする場合があります。音が心地良く響く空間をつくる“音響”や、部屋からの音漏れを抑える“防音”も五感の1つですが、DAIKENなら建材などでそれらを実現して、五感に対する「ずっと ここちいい」空間を提供できます。そのような点を今後ももっともっと深掘りをしていく必要があると考えています。
特に音環境の快適性は40年以上にわたって音響製品の開発・製造・販売を続けているこだわりの分野で、2025年の10月には新たな開発拠点『音環境ラボラトリー(音ラボ)』が竣工されるなど、今後も「音」の研究開発を追求し続けるための体制を整えています。

弊社は「音・光・温度・湿度・におい」といった五感で感じる価値に重きを置き、これらの困りごとが解決できる製品を通じて人々の暮らしを支えていきます。
こにわ:まさに、いつでもどこでもDAIKEN製品が生活に寄り添ってくれているという感じですね。他にもありますか?
億田:社会課題の解決に向け、共創を通じて様々な新規領域への挑戦・進出を進めていきたいと考えています。1つの会社でできることには限りがあります。環境の変化に負けないためには、業界の垣根を超えて手を取り合い、新しい道を切り拓き、山積する社会課題の解決に向けたチャレンジを続けていかなければなりません。
こにわ:おおー、素晴らしい。共創で社会課題の解決ですか。10年後の大きく成長したDAIKENさんの姿が見えるようです。
DAIKENが10年後にありたい姿を実現する4つのKEYとは?

億田:そして、DAIKENが2035年にありたい姿を達成するためには、新たな道を切り拓く4つのKEYがあると考えています。
こにわ:4つのKEYですか。それはどんなものですか?
億田:1つ目は、素材・建材・エンジニアリングの技術力を核とする「VALUE CHAIN(バリューチェーン)」の構築です。
原材料の調達から使用後の製品回収・再生利用まで視野に入れた開発・モノづくり体制を確立することにより、流通全体を活性化するとともに、弊社の取引先が一丸となってサステナビリティへの意識を高めていくきっかけになると考えています。
また、人手不足や高齢化が進む建築・建設業界に対しても、省施工化やデジタル化の推進などにより、業界の活性化にも貢献したいと思います。
こにわ:さすが、素材・建材・エンジニアリング、すべてに秀でたDAIKENさんならではのKEYですね。
2つ目のKEYはいかがでしょう。
億田:2つ目は、DAIKENの企業価値を向上させる「BRANDING(ブランディング)」です。
製品・施工・サービスによる機能や環境貢献度を、価値としてお届けできるような仕組みを構築することで、弊社の製品を使いたいと思っていただけるきっかけを作っていければと考えています。
また、先述の社名、コーポレートメッセージの変更などは、従業員をはじめとするステークホルダーの皆様に、弊社へのさらなる愛着を持っていただくという狙いもあります。
こにわ:社名変更にはビックリしましたが、ブランディングも大事ですよね。それでは3つ目のKEYをお聞かせください。
億田:3つ目は、グループネットワークを中心とした共創力を生み出す「CO-CREATION(コ・クリエーション)」です。弊社は元々、1945年に伊藤忠商事を核とする大建産業から独立した会社でしたが、また2023年より伊藤忠商事グループの一員となりました。世界中にネットワークを有する伊藤忠商事と共に事業を進めていけることは、他社に真似できない大きな強みです。また、同業・異業種を問わず他の企業とも手を取り合い、共創によってお互いに良いシナジーを生み出し、成長していきたいと考えています。
こにわ:グループネットワークや共創でできることが広がるのは素晴らしいですよね。大きな企業同士が手を組むことで、10年後のこうありたいという姿に向かって、ドキドキしながら近づいていけそうな予感がします。
最後の4つ目のKEYは何でしょうか?
億田:4つ目は、多様な人財が働きがいを持てる組織づくりをする「ORGANIZATION(オーガナイゼーション)」です。
仕事に対して熱意を持った社員が活躍しやすく、ちゃんと評価される環境の整備はもちろんのこと、社員のキャリア自律に向けたサポートの提供をより充実していきます。また、年齢・性別を問わず多様な人財が挑戦を恐れず、自己の成長を実感できる仕組みをつくっていきたいと思います。
まとめると、バリューチェーン、ブランディング、共創力、組織づくりの4つが、DAIKENの10年後にありたい姿を実現するためのKEYになるでしょう。

こにわ:いやー、しっかりと目標が立てられていて凄いですね。DAIKENさんなら4つのKEYを活用して、10年後のありたい姿になれると信じています!
それでは、最後にステークホルダーの方へ、何かメッセージなどがありましたらお聞かせください。
億田:世の中は大きく変わろうとしています。ただ、そこで「変わった、変わった」と第三者的にいっているだけじゃなく、その変化に対して自らも能動的に変わっていかないと、環境の変化についていけず押しつぶされてしまうかもしれません。
そのため、DAIKENも変わります。
DAIKENをご愛顧していただいている皆さまと一緒に、今こそ会社も社員も大きく変化する時だと思っていますので、私自身も色々な新しいことに挑戦していきたいです。共にその変化に対してWin-Winの状態になるようにしていきたいですね。
2025年からは社名とコーポレートメッセージが変わり、2026年からは新長期ビジョンも始動します。DAIKENはあらゆる場所、あらゆる人に「ここちいいね」と思ってもらえる空間づくりを目指して邁進していきますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
こにわ:本日は貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。
それでは締めのセリフいきますよ、DAIKEN〜
こにわ・億田:『魂!』
