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<span>「第2の森林」</span>とは 木材活用で<span>炭素</span>を貯蔵

「第2の森林」とは 木材活用で炭素を貯蔵

2022年12月12日

お話を聞いた方:遠藤 稔(大建工業株式会社 執行職 エコ事業部長)
※役職は撮影当時のものです。
インタビュアー:こにわ(サンミュージック)

☆本インタビューのダイジェスト映像はこちら

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“「建築資材の総合企業」DAIKEN”として、住宅・建築業界ではおなじみの大建工業株式会社(本社:大阪府/本店:富山県)。幅広い分野で活躍している大建工業の事業に対する取り組み姿勢や魅力を伝えていくWEBマガジン「DAIKEN魂!」。
第3弾は、炭素に関する社会課題をテーマにインタビューしました!!

こにわ:みなさん、こんにちは! こにわです。
私は今、大建工業さんの岡山テクニカルスペースにお邪魔しています。
今回は“炭素”の社会課題に迫っていきますが、実はこの炭素、木と深い関わりがあるということなので、大建工業さんではどんな取り組みをしているのかお話を聞いてみましょう。

今回お話をうかがうのは、エコ事業部長の遠藤稔さんです。よろしくお願いします!!

遠藤:よろしくお願いします。

木は温室効果ガスを減らす「炭素の貯蔵庫」

こにわ

こにわ:まず、大建工業さんのエコ事業ではどのようなことをしているのか教えていただけますか。

遠藤:木質資源と未利用の鉱物資源を原料として有効利用した素材を、私たちはエコ素材と呼んでいます。エコ事業部では、その素材を使ったエコ製品の開発・製造に、積極的に取り組んでいます。エコ製品には断熱、吸音、調湿、消臭、耐震性など、いろいろな機能を持たせています。そういう製品を広く使っていただくことで地球環境への配慮と快適な暮らしを両立してもらう、簡単にいえば地球にも人にも優しいモノづくりをしているということです。

こにわ:なるほど、非常に幅広い事業なんですね。地球にも人にも優しい、だけどこれ、どちらかひとつならまだいいかもしれませんが、両方を考えなきゃいけないというのは相当大変じゃないですか?

遠藤:そうですね。ただ、大建工業に地球と人のどちらかという考えはないですね。
この岡山工場は1958年にできたのですが、そもそも工場をつくることになった経緯が「木材を何とか有効に、100%に近い形で使い切りたい」という思いから始まっています。地球に優しい資源を有効に使っていくことが、人にも快適で優しいモノづくりにもつながっていくと思っています。

こにわ:地球にも人にも優しい大建工業ですね。だって遠藤さんのしゃべり方が、もうすでに優しいですから、ものすごく(笑)

それでは、そのエコ事業に関わる内容として、今回のテーマでもある炭素についてお聞きしたいと思います。なぜ今、炭素が地球の問題になっているのか教えていただけますか?

遠藤 稔

遠藤:地球温暖化という話を聞いたことがあると思いますが、この原因の一つとして考えられているのが大気中に含まれる二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスです。二酸化炭素は人間の活動が活発になればなるほど大気中の量が増えてしまうんです。この影響による世界的な気候の変動が懸念されていて、生態系の変化が私たちの生活にも影響を及ぼすといわれています。
この温室効果ガスをできるだけ抑えて地球の環境を安定化させていくという気候変動対策がグローバルな課題として挙がっていて、一つの方法として私たちが使用するエネルギーを再生可能エネルギーに転換させることや、そもそも排出される二酸化炭素を減らしていくといった様々な取り組みが行われています。

こにわ:なるほど。それで木材はそのこととどのように関わっているんですか?

遠藤:実は、二酸化炭素を吸収して炭素を貯蔵するという役割が木にはあるんです。
その機能を持つ森林を守りながら育てて、炭素を貯蔵した木質資源をマテリアルとして活用していくことの重要性が高まってきています。

こにわ:木が炭素を貯蔵するんですか!? それはどういうことなのか教えていただけますか?

遠藤:一般的に、木は人間の呼吸とは全く逆に、光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込んだ際に酸素を生み出し、炭素を自らの骨格に活用することで成長しています。取り込まれた炭素は骨格として固定され続けるため、木は炭素の貯蔵庫ともいわれています。つまり、木が増えるほど大気中の二酸化炭素が減ることになるわけです。
そのためには森林を育てて有効に伐採して使い、植林してまた育てるという、森林を守って活かし続けるサイクルが重要です。

木をリサイクルして、街中に「第2の森林」を

こにわ:木の力はすごいんですね。でも遠藤さん、やっぱり森林伐採というと環境破壊につながるんじゃないかと思う人も結構いると思うんですよ。その辺はどうなんでしょうか?

遠藤:実は森林でも若いものと高齢のものがあって、若い森林は成長するためにより多くの二酸化炭素を吸収する働きがあります。一方、高齢の森林は二酸化炭素を吸収する力が衰えていますので、地球温暖化という観点で考えれば、森林の成長サイクルに合わせて一定のレベルまで成長した木は伐採して、もう一度植林をして育てることで循環させていく。そういう考え方がこれからは求められることになります。そうすることで森林が持つ二酸化炭素吸収機能を最大限に引き出すことができるんです。もちろん保護すべき希少な天然林もありますので、そこは分けて考える必要があるかと思います。

こにわ:木を育てていくことがとても大事なのは誰でもわかると思いますけど、適切に伐採をして新たに木を植えて育てていくサイクルが大事だということですね。

遠藤:そうですね。ただ、それだけでは蓄えられる炭素量に限りがありますので、伐採した木を活用することも重要なんです。木は伐採して木材になっても取り込んだ炭素を固定し続けます。例えば公共の空間や住空間などの建築物にマテリアルとして木材を使えるシーンを広げることで、人々の生活空間を豊かにしながら炭素をより多く貯蔵する「第2の森林」を街中に形成することもできるんです。木質資源のマテリアル利用による炭素貯蔵の長期化という重要な考え方ですね。

第2の森林

こにわ:なるほど、第2の森林ですか! 面白い考え方ですね。ということは、住宅に木材を使えば使うほど、大気中の二酸化炭素の量を減らしていくことにつながるんですね。

遠藤:はい。しかも木材は長く使うほど長期に渡って炭素を固定し続けます。そのため、私たちは本来の役目を終えた後の木材をさらに長く使うためのリサイクルにも力を入れています。具体的には建築物などがその役目を終えて解体された後に残る建築解体木材、それを原料にしてエコ素材をつくっています。

こにわ:いや、遠藤さん、ちょっと待ってください。建築物を解体した木材というと、私でも役目を終えたのかなと思うんですけど、そこからさらに炭素固定をしたまま再活用していくということですか?

遠藤:そうですね。この岡山工場でつくっている製品は、伐採した丸太をそのまま原料としているわけではなく、木材をリサイクルしたチップを主な材料にしています。

こにわ:木質資源を余すところなく使い切る精神、素晴らしいですね。チップを原料にしてどのような製品をつくっているのですか?

遠藤:例えば私どものメイン製品になるんですが、チップを木質の繊維状にして『インシュレーションボード』という、緩衝材や芯材などに適したクッション性・軽量性に優れている木質繊維板をつくっています。これは畳床とか床下地材、壁下地、屋根下地、養生ボードなど、非常に多数の製品に活用されています。また、それらが古くなったら再度リサイクルして新たなインシュレーションボードをつくって循環させるという取り組みも始めています。このサイクルによってさらなる長期の炭素貯蔵が可能となるわけです。
実際にインシュレーションボードの原料となるチップなどを見てみましょうか。

こにわ:生で見られるんですか! 楽しみです。

DAIKEN岡山工場内の施設に潜入!

こにわ:こにわ:いやー、広いですね。DAIKENの岡山工場、なんと敷地面積が東京ドーム5個分もあるということで移動するのも一苦労です。あ、あれは何ですか?

遠藤:あれは工場で使用する熱源を再生可能エネルギーへと転換のために設置した木質バイオマスボイラーです。これを導入することで、岡山工場における乾燥工程に必要なエネルギー源を再生可能エネルギーで賄うことができて、温室効果ガスの排出量を年間8000トンも削減することが可能になったんですよ。

バイオマスボイラー

こにわ:うわー、でっかいなぁこれ! 私の声まで自然とでかくなってしまうぐらいでかいです。こんなすごい設備をつくって工場でも再生可能エネルギーを活用しているとは、さすが大建さん、徹底していますね!

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遠藤:そして、こちらがエコ素材の材料となる木質チップを保管しているチップヤードです。皆さんから見て左側が製材の背板などから作られたバージンチップ、右側が建築解体木材を木材チップにしたものです。

チップヤード

こにわ:これが先ほど説明していただいたチップですか。まさしく山のようにたくさんありますね! これがインシュレーションボードになっていくんですか? いや、面白いですねぇ。

結果として地球に優しく、人にも優しいモノづくりを

こにわ

こにわ:いやー、工場の施設めぐり楽しかったです。ありがとうございました。
先ほどチップヤードで見せていただいたバージンチップと建築解体木材の木材チップ、2種類のチップにはどのような違いがあるんですか?

遠藤:まずバージンチップですが、木を丸太から四角い柱や梁に製材すると、どうしても背板と呼ばれている余ってしまう部分が出てくるんですね。他にも、柱にするには適さない林地残材という木材があるんですが、それらのような材料をチップ化したものを、私たちはバージンチップとして扱っています。

もう一つは建築物を解体する際に発生する木材、いわゆる建築解体木材と呼ばれるものをチップ化したものです。寿命が来て建築物を解体することになっても、柱や梁などに使われていた木材はそのまま捨てず、チップにして製品の原料としてもう一度使っています。

木材チップ

こにわ:すごいですね。今、ちょっとイメージが湧いたんですけど、例えば私が家を建てて、それが自分の子どもや孫の世代まで引き継がれて古くなったとします。そして家を建て替えることになった時、元の家を解体した木材がインシュレーションボードになって、形を変えて製品としてさらに使われていく。またそれがリサイクルして製品として繰り返し使われて、というように大建工業さんの製品が循環していくという、そういうことですよね?

遠藤:ええ。そのように長く使ってもらいたいと思っています。ただ環境に良いだけではなく、使うことによって快適さを感じたり、安全性が高まったりといった機能性と結びつく製品を提供していきたいと考えています。機能性で建材を選んだら実は環境にも良かった、と思ってもらえるような形にしていきたいですね。

こにわ:そうなると、「大建工業の建材を使った家に住むだけでも環境にいいことをしている」という気持ちになれますね。

遠藤:そうですね。製品を気に入って長く使ってもらい、結果として炭素を固定し続けて、地球に優しく、人にも優しい。そういうモノづくりを目指しています。

こにわ:素晴らしいですね。大建工業さんが取り組まれているサイクルによって炭素が製品に取り込まれているんですけど、その量に関して何か具体的な数値などは示されているんでしょうか?

木材チップ

遠藤:はい。先ほどご紹介したインシュレーションボードの分だけを例に挙げますと、2021年度の調べでは年間約12万トン、その他にMDFといった別の木質繊維板や建材の床材などを含めると、数値化できているものだけで年間約100万トンになるとのことです。

こにわ:いや、数字だけ聞いてもものすごい量だなと思います。ただ、100万トンってちょっとイメージがわかないんですけど、どういった数字になるんでしょうか?

遠藤:日本人1人が年間に排出する二酸化炭素の量は約2トンといわれています。ですので、年間で約50万人分の炭素が固定されているということになります。

こにわ:うわー、すごいな(笑) いやー、今日は遠藤部長のおかげで炭素についてすごくきちんとした知識を聞くことができて非常にありがたかったです。遠藤部長はエコ事業部に所属していらっしゃいますので、これから大建工業さんが目指す未来や展望などについて教えてもらえませんか。

遠藤:エコ事業はもちろん、大建工業としては、やはり設立時から私たちがつくるモノによって世の中の役に立ちたいという思いで事業活動を進めています。世の中にはまだ廃棄物の問題とか、使い道がなくて困っているものがいっぱいあると思うんです。そういったものを何とかもう一回、建築資材としての機能を付けて世に出していきたいです。このような時代だからこそ、さらなる未利用資源や注目されていない素材を使って、こんなに機能のある製品がつくれるんだ、と思ってもらえるようなモノづくりに取り組み続けたいと思います。
私たちが製造販売しているエコ素材は、木材や未利用資源を原料として使っています。そこから生まれる製品を生活のいろいろな場面や場所に使用していただくことが快適な生活を実現し、なおかつ環境への配慮につながると考えています。ですので、これからもエコ素材の利用を世の中に増やしていくことを目指していきます。
「素材で笑顔あふれる豊かな未来を実現する」これに挑戦し続けたいですね。

こにわ:たくさんの貴重なお話をありがとうございました。今回も大建工業さんの熱い魂を感じさせていただきました。最後に決め台詞、行きますよ!

こにわ・遠藤:『DAIKEN魂!』

DAIKEN魂!