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トップインタビュー

トップインタビュー 代表取締役 社長執行役員 億田正則

前中期経営計画を終えて

Question前中期経営計画「GP25 1st Stage」の成果と課題について総括をお願いします。

前中期経営計画「GP25 1st Stage」は、創立70周年を機に10年後のありたい姿を描いた長期ビジョン「GP25」実現を目指して踏み出した最初の3年間でした。定量的な目標については届かなかった項目もありますが、3年平均でROEが10%台、営業利益率も4%台に高まり、収益が出せる体質になりました。その結果として、初年度に営業利益、経常利益、純利益それぞれで、連結以来の過去最高益を達成し、最終年度には、売上高、純利益の経営目標が達成できたことは一つの成果だと思います。さらに、素材事業の中核であるMDFの存在感を高めるM&A、新たな用途展開につながる積極投資、公共・商業建築分野向け製品ラインアップの拡充、R&Dセンター開設など、“長期ビジョンで目指す企業像「建築資材の総合企業」に向けた第一歩を踏み出す”という位置付けのとおり、今後の飛躍につながる基礎固めができた3年間だったとみています。
一方で、最終年度に原材料調達や受発注システムにおいて弱さが顕在化し、お客様に多大なご迷惑をおかけする形になってしまったことは最大の課題です。営業利益70億円、経常利益70億円、ROE8%という目標には届かず、全経営目標達成とならなかったのは、この影響が大きかったといえます。事態を真摯に受けとめ、課題を強さに変革する取り組みを進めなければなりません。そこで、4月からの新体制を待たず、2019年2月にITシステムと物流を所管する部門を統合的に管理するIT・物流本部を立ち上げ、組織体制を強化しました。短期的な是正・改善対応は当然のこと、中長期視点で根本的に仕組みを見直し、受発注システムから物流を含めた、供給体制の最適化を図っていきたいと考えています。

重点3市場での取り組み

Question国内新設住宅着工に依存しない経営体質に変革するために取り組んでいる重点3市場の手応えを聞かせてください。

公共・商業建築分野

これまで主力であった国内の新築住宅市場の縮小が想定される中、重点市場と位置付けて力を入れてきたのが公共・商業建築分野です。結果的に目標は達成できませんでしたが、この3年間で売上は着実に増加しています。新築住宅市場が比較的堅調だったことで、営業面でのシフトが遅れたことも加味すれば、一定の成果を出すことができたと考えています。
また首都圏では、プロユーザーのお客様を対象としたテクニカルスペースをオープンし、市場開発チームがお客様の悩み事やニーズにお応えする提案活動の流れができたこと、さらに高齢者、幼稚園・保育施設向けのドアや地域材を活用した床材に加え、当社独自の不燃素材「ダイライト」を活用した意匠性の高い壁材のフラッグシップ製品を発売するなど、新製品を積極的に投入することで、各施設に提案できる機能建材シリーズが出揃ったことも今後の拡大につながる成果だと捉えています。

海外市場

海外市場については、数字だけを捉えれば1st Stageの計画どおりに進んでいることは確かです。ただ、順調に運んでいる面と、課題が残る面の両方があるのも事実です。順調な面としては、MDFを中心として力を入れてきた素材事業が挙げられます。MDFは、新たにニュージーランドの工場をグループ化したことにより、マレーシア2工場、ニュージーランド2工場の計4工場体制となり、生産量が3割増え、海外での販路も拡大しました。また日本向けの販売も増加したため、提携先のホクシン(株)を含めた国内シェアが約50%となり、業界No.1の地位を確固たるものにすることができました。
一方、課題としては、インドネシアと中国での事業展開の遅れが挙げられます。インドネシアに関しては、利益面はまだこれからですが、工場でのものづくりは確立でき、着実に増産に動いています。今後は利益につなげる体制を確立するとともに、現地企業との連携により、受注拡大につなげていきたいと考えています。中国に関しては、中国国内経済の動向を注視しながら、今後も慎重な対応は必要ですが、引き続き日系企業への製品供給と代理店での販売拡大に注力していく考えです。2018年9月に資本業務提携した伊藤忠商事(株)のネットワークも活かし、こうした課題に対応しながら、海外市場全体を伸ばしていきたいと考えています。

住宅リフォーム市場

住宅リフォーム市場に関しては、これまで新築住宅市場の落ち込みをカバーする役割と捉えられてきましたが、実はさまざまなデータが示すように、二つの市場は相関関係にあります。その意味で、リフォーム市場については少し切り口を変えた取り組みを進めてきました。
一つは、現在、TOTO(株)、YKK AP(株)と3社で共同運営するコラボレーションショールームを全国8拠点で展開していますが、ここでの提案を「モノ」ではなく住まい方、すなわち「コト」が訴求できる提案方法に変えてきたことです。この「モノ」から「コト」への訴求点の変更は、新しい提案の形として定着しつつあります。ただ、工務店の後継者問題など、直接のお客様が減少傾向にある中で、「モノ」の販売だけを捉えれば、伸び幅が鈍化してきたことは否めません。そこでもう一つの取り組みとして、「モノ」だけでなく施工・工事で拡大を図るため、2016年10月から首都圏を中心としたマンションリノベーション事業に乗り出しました。エンジニアリング事業の拡大だけでなく、メーカー機能と連携した短工期・省施工の製品開発も推進中です。こうした取り組みが、徐々に実りつつあります。
市場別の取り組み以外でも、中長期の成長戦略に欠かせない研究開発の強化とスピードアップのためのR&Dセンター開設、ESGの視点では、木質バイオマスボイラーの積極活用によるCO2の排出削減、働き方改革、女性活躍をはじめとするダイバーシティ推進の取り組みなどが着実に進んだことも、成果であるといえます。
また財務面では、収益力向上により高めてきたキャッシュ創出力を背景に、M&Aや新規設備などの投資が拡大する中でも、財務健全性を高め、さらなる成長のために必要な投資余力も備えることができました。ここ十数年で、もっとも強い財務体質になったことも、評価に値すると考えています。

新中期経営計画の位置付け

Question新中期経営計画「GP25 2nd Stage」をどのような3年間にしたいとお考えでしょうか。
位置付けとポイントについてお聞かせください。

「GP25 2nd Stage」の初年度、2019年10月に予定されている消費増税以降、本格的に新設住宅着工減の時代に突入すると想定されます。この最大のリスクをチャンスに変えるため、2nd Stageを、成長戦略を加速させる3カ年と位置付け、売上高2,250億円、営業利益120億円の目標に挑みます。利益については創業以来の最高額に、売上高もそれに匹敵する規模へのチャレンジであり、長期ビジョンの最終目標である2,500億円達成に向けて、一気にステージを引き上げます。
そのためにまず、1st Stageで高めたキャッシュ創出力を活かし、事業規模拡大や収益力強化につながる投資を積極的に行います。
一方で、これまでもCSRやESGを意識した事業活動を行ってきましたが、2nd Stageでは“事業を通じた社会課題解決の追求”をさらに進め、企業価値の向上につなげていきます。
その意味で「社会課題のグローバル・スタンダード」であるSDGsと事業の関連を明確にし、グループ従業員それぞれが、そのつながりを意識した活動を進めます。

成長戦略の加速

Question海外市場と国内市場それぞれでどのような成長戦略を描いていますか。

海外市場

長戦略の中核となるのが海外市場、特に北米における素材事業の拡大です。今回投資した北米でのLVL・単板の事業は、過去に伊藤忠商事(株)が立ち上げ、現地でのポジションを確立し、成果を上げてきた事業です。ここに創業から木材にこだわり、さまざまな用途展開を追求してきた当社が関わることで、メーカーとしての効率化の追求だけでなく、新製品開発などこれまでにない事業展開の可能性が生まれると考えています。米国の住宅市場は、直近で年間約120万戸を供給する世界最大の住宅市場であり、一戸当たりの床面積を加味すると、実質的には、2~3倍近い市場規模になると考えられます。また、先進国では珍しく、人口が年間約200万人増加することが見込まれています。LVLの需要は、米国の住宅着工件数とほぼ連動し、米国の景気や住宅ローンの指標となる長期金利の影響を受けることから、足元の動向には不透明感が残るものの、中長期では安定した需要が見込める市場です。さらにほとんどが木造住宅であり、当社がこれまで日本で展開してきた素材、建材事業との親和性が高いという特徴もあります。素材に技術を注入し、付加価値を高めることで拡大してきたビジネスモデルを北米市場でも展開することにより、拡大の可能性があると考えています。また、素材を軸に市場を捉えることにより、建材事業への展開も期待できる市場です。
MDF事業についても、引き続き拡大の機会を狙うため、必要な投資枠を設定するとともに、こちらも北米市場での拡大を視野に入れています。これらの取り組みを推進することで、現状11%の海外売上を23%程度まで引き上げ、国内偏重の売上を、グローバルにも広げていきたいと考えています。

国内市場

国内市場では、新築住宅市場の縮小に対して、トップシェアを持つ床材など競争力のある製品によるシェアアップでカバーしながら、公共・商業建築分野や住宅リフォーム市場で拡大し、国内市場全体として増収を確保していきます。国内市場の中でも注力ポイントは、公共・商業建築分野です。1st Stageで拡充してきた製品ラインアップを軸として、高齢化で安定した需要が見込める「高齢者・医療施設」、建て替え時期が到来する「公共・文教・幼保施設」、インバウンドで活性化する「宿泊・商業施設」、都市部で開発が続く「ビル・オフィス」の4つに分類し、各施設で求められる床・壁・天井・ドアなどの機能建材を提案することで拡大を図っていきたいと考えています。

代表取締役 社長執行役員 億田 正則

また、(株)テーオーホールディングスとの合弁会社「(株)テーオーフローリング」の本格展開により、これまで手掛けていなかった無垢床材の商材もラインアップに取り込み、提案の幅を広げていきます。特に文教施設では、無垢床材への根強いニーズがあることから、当社のビジネスチャンスが広がるとみています。これらの拡大にあたっては、スピードを重視し、自前主義にこだわることなく、M&Aや他社との連携も含め、外部リソースも積極的に活用していきます。

経営基盤の強化

Question事業インフラ、財務、ESGの3つの視点で経営基盤を強化することを方針として掲げています。
それぞれの観点から考えをお聞かせください。

事業インフラの再構築

これについては、やはり昨年度、原材料調達と受発注システムのほころびから、お客様にご迷惑をおかけした反省から取り組むべき課題として方針に掲げています。この事案を通じて、我々は普段当たり前のように動いているIT・物流などの供給の仕組みが、いかに重要かを再認識させられました。これを教訓に2nd Stageでは“選ばれ続けるための基盤”を再構築したいと考えています。
内容としては、お客様の利便性にもつながるシステムを構築することです。これまでもお客様が使いやすいシステムを目指してきましたが、より便利なものにするためには、まだまだレベルアップが必要であり、こうしたシステムができれば、お客様との関係強化につながる強力なツールとなります。すべての課題を明らかにし、IT・物流機能から、ものづくりのあり方を含めた最適な仕組み、本質的な事業インフラの仕組みを構築することで、中長期の競争力強化につなげていきます。一方で、社内の定型業務に関しては、AIやIoTなど先進技術の活用を積極化することで省人化を図り、新事業・新市場での展開で新たに必要となるポジションに、人財を投入していきたいと考えています。

財務基盤の最適化

1st Stageでは、大型M&Aや新製品への投資、R&Dセンター開設など次の成長につながる投資を行い、株主還元も配当性向30%以上をキープしながら、自己資本比率、D/Eレシオも改善し、財務体質が強化できました。
2nd Stageでは、もう一段収益力を高め、さらにキャッシュ創出力を高めたいと考えています。こうした取り組みによって得たキャッシュを原資に、通常の維持更新投資の年平均50億円に、北米素材事業などへの戦略投資400億円を加えた総額550億円の投資を行い、さらなる成長と基盤の強化を図ります。計画では、これらの投資を実施しても、目標どおりに収益力を高め、資産効率化を進めれば、従来どおりの配当性向30%以上を確保しながら、D/Eレシオも0.5倍程度、自己資本比率も40%程度をキープできる見通しです。最大規模で投資した場合は、営業キャッシュフローを超える水準になりますが、社債や借入金など良質な資金調達を財務レバレッジとして有効に活用していきます。

ESG経営の実践

ESGに対しては、当社はこれまでも積極的に取り組んできました。特に環境面については、当社の生い立ちを振り返っても、CO2の削減や木材リサイクル、木材カスケード利用など、これまで行ってきた事業活動そのものが環境に貢献するものだと考えています。その意味で、新たに取り組むのではなく、これまでやって来たことを一つ上のステージに上げるという考えで進めていきます。
具体的な取り組みとしては、最重要の気候変動リスクへの貢献として、パリ協定に対応して日本政府が掲げるCO2削減目標「2030年までに2013年度比26%削減」に対して、当社として、2nd Stageの最終年度となる2021年度に前倒しで達成するという目標を掲げました。また、水資源、化学物質、廃棄物、環境法令遵守など社外からの注目度の高いテーマだけでなく、木質素材事業による炭素固定量や、床材の基材における国産木材の利用比率向上など、当社の事業特性を活かした環境への貢献もテーマとして取り上げています。
社会面でのポイントとしては、メーカーの生命線である「品質」と「人財」の2点に重点を置きたいと考えています。メーカーの社会に対する責任として、お客様に対しては、まず品質の担保が挙げられます。公共・商業建築分野や海外市場といった新市場でも信頼に応え続ける体制を強化していきます。
人財については、ダイバーシティ、働き方改革、人財育成、労働安全衛生の4テーマを設定しました。特に人財育成については、成長戦略の実現に向けた、重点市場に対応するためのスキルアップだけでなく、中長期の経営を支えるマネジメント層を育成するための研修プログラムを大幅に拡充する予定です。またダイバーシティについては、1st Stageに引き続き、もっとも身近な女性活躍を最優先で進めますが、2nd Stageでは、取り組みに偏りがないよう介護との両立や熟練社員の活躍なども含めた多角的な視点で目標を設定し、バランスをとりながら進めていきます。
ガバナンスについては、コンプライアンスやリスクマネジメントに加え、グループ企業理念の浸透をテーマに設定しました。当社は現在、これまで主力としてきた国内新築住宅市場が縮小に向かう歴史的な転換期を迎えています。この厳しい市場環境を、長期ビジョンや中期経営計画で描く成長戦略を実現することで乗り越えていかなければなりません。そのためには、グループ全従業員の参画、活躍が不可欠です。グループ企業理念のミッションは「私たちは、技術と発想と情熱で、笑顔があふれる未来に貢献します」であり、ここで言うところの未来への貢献は「持続可能な社会の実現」、すなわち社会課題となっているSDGsへの貢献にもつながります。従業員一人ひとりへのグループ企業理念の浸透は、こうした社会課題解決への貢献のベースとなり、ひいては事業の成功につながるでしょう。残念ながら1st Stageでは、全社にこの理念が浸透したとはいえません。2nd Stageでさらに浸透を図ることによって、言葉そのものではなく、言葉の裏にある真の意味を従業員が理解し、その上で、グループ企業理念が実践された行動が自然に表れるところまで、定着させていきたいと考えています。

新中期経営計画の達成に向けて

Question新中期経営計画「GP25 2nd Stage」にかける想いを聞かせてください。

2nd Stageは、長期ビジョンを実現するための、もっとも重要なステージだと思っています。まず、1st Stageで築いてきたものをさらに成長させ、2nd Stageの目標は必ず達成しなければなりません。ただ、当社が最終的に実現しなければならないのは2025年度に目指す姿、長期ビジョン「GP25」です。これを実現させるためには、総仕上げとなる2022年度からの3rd Stageでもう一段の飛躍が求められます。その意味で2nd Stageは、目標を達成しながら、次なる飛躍につながる3rd Stageへの種まきも着実に行う必要があります。
そのために必要な課題の一つが、素材・建材・エンジニアリングに次ぐ第4の柱を見いだすことです。現在当社は、国内の新築住宅・リフォーム、公共・商業建築分野、海外市場で素材、建材を中心に事業を展開しています。新たな事業の可能性は、隣接しているところに存在するとみています。当社が培ってきた70余年の経験と強みが発揮できる分野を軸に、3年間の中で、その方向性を必ず見いだしたいと思っています。その上で売上・利益ともに創業以来の最高水準を達成し、長期ビジョンで目指す姿を実現したいと考えています。