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トップインタビュー

トップインタビュー 代表取締役 社長執行役員 億田正則

Question中期経営計画2年目を終えて

2017年度で3カ年の中期経営計画「GP25 1st Stage」の2年目が終了しました。
これまでの手応えと今後の課題について聞かせてください。

2年目までを終えた成果としては、各種合理化、コストダウン、新製品の投入が奏功し、収益性が大きく改善した点が挙げられます。これにより、中期経営計画「GP25 1st Stage」の経営目標のうち、営業利益、経常利益、純利益、ROEの4つの項目について、初年度から達成することができました。この点は一つの成果が出たといえると思います。一方で、経営目標の数値達成だけでなく、今後、新設住宅着工戸数の減少が見込まれる中、その減少をカバーするため「公共・商業建築分野」「海外市場」「住宅リフォーム市場」を重点3市場と位置付けて、軸足を移していくことも重要視しています。

公共・商業建築分野

まず公共・商業建築分野では、1.当社独自のWPC技術により耐傷性を高めた国産木材の床材の提案、2.高齢者施設、幼稚園・保育施設向けの安全性や使いやすさに配慮したドアの受注拡大、3.宿泊施設向けのメンテナンス性に優れた機械すき和紙を利用した畳の採用増、4.首都圏を中心に内装工事の受注拡大、の4点が図れたことには手応えを感じています。
一方で課題としては、1.社会課題・ニーズに対して当社の強みが活かせる領域の見極め、2.提案商材のアイテム数の不足、3.施工領域の拡大、の3点が挙げられます。
一口に公共・商業建築分野といっても範囲が広く、どのジャンルに注力するかによって製品開発や提案方法が大きく変わってきます。そういう点で難しさを感じています。その際に参考になるのが、これまでに手応えを得ているテーマです。

代表取締役 社長執行役員 億田 正則

振り返って整理してみると、「国産木材の活用促進」「超高齢社会への対応」「少子化対策・女性活躍推進のための環境整備、待機児童問題解消」「インバウンド増加による宿泊施設の不足」など、いずれも社会課題・ニーズに着目し、市場の声に耳を傾け、当社の技術を活かした新たな価値の提案が、成果にこれらの成功事例を参考に、当社の強みが活かせる領域を見極め、経営資源を集中的に投入していきたいと考えています。スペックイン活動に取り組む市場開発部門による設計士・オーナーの声の収集、事業部門による製品開発、マーケティング部門による効果的な価値の訴求・プロモーション、全国支店営業部門での地域に根差した提案活動といった社内の好連携を増やしていきたいと思います。その上で具体的に提案できる商材を増やさなければならないと感じています。
当社が手掛けるエンジニアリング事業は、オフィスビル等の天井工事が中心ですが、多様な工事案件に対応できるよう施工領域を広げることで、さらなる拡大が期待できると考えています。

海外市場

海外市場のうち、まず素材事業では、マレーシア、ニュージーランドに生産拠点を持つMDFの販売が東南アジアや北米向けなどで堅調に推移しています。
建材事業では、中国向けに高機能床材の輸出が伸びています。現地工場で生産する製品と合わせ、高級品から普及タイプまでのラインアップで提案の幅が広がっています。
また、2016年8月には、今後拡大が期待できる新興国市場に対する取り組みとして、インドネシアで新たに内装ドアの工場を立ち上げました。
今後の課題としては、1.MDF以外の素材事業の可能性の追求、2.中国、インドネシアでの建材事業の基盤強化と拡大、の2点です。
海外市場での素材事業の展開は、一部天井材の輸出などがありますが、ほぼMDFに集中している状況です。さらなる拡大に向け、国・地域ごとのニーズや原材料の確保などを総合的に判断し、他の素材の事業化も検討していきたいと考えています。
建材事業では、中国は規模・収益性という観点で道半ばの状況です。主要都市での共同ショールームの運営など各地の代理店との連携をさらに強化し、メイド・イン・ジャパンのブランドを活かした日本からの輸出も織り交ぜながら、拡大を図りたいと思います。
インドネシアのドア工場は、立ち上げにあたり生産面で苦労しましたが、軌道に乗りつつあります。現地デベロッパーや日系企業の案件での受注拡大や、インドネシア以外への輸出も視野に入れながら、拡大を目指していきたいと考えています。

住宅リフォーム市場

住宅リフォーム市場の展開については、TOTO(株)、YKK AP(株)とのアライアンスが基軸になりますが、2016年4月以降、金沢、高松、2017年7月の札幌までコラボレーションショールームの展開を加速させ、全国主要都市をカバーする8拠点体制が整いました。
その他、製品面では既存の床の上から貼るだけの床材、既存の壁を壊すことなく取付工事ができるアウトセットドアなど省施工製品を拡充するための取り組みを進めています。
また、新たな事業展開として、2016年10月にはマンションリノベーション会社をグループ化しました。建材メーカーがリノベーション事業を手掛けることで、工期短縮につながる製品開発にもつなげることができます。但し、住宅リフォーム市場全体で見れば、新たに手掛けたリノベーション事業を除く製品の売上は、伸び悩んでいる状況です。技能工不足にも対応し、手軽にリフォームできる製品を拡充するとともに、TDYアライアンスの連携を強化しながら、リフォーム需要を掘り起こすことが必要だと感じています。

Question中期経営計画最終年度の仕上げ

2018年度は中期経営計画「GP25 1st Stage」の最終年度です。
足元では、新設住宅着工戸数の減速感に加え、コストアップ要因が各方面で見られますが、最終年度をどのように仕上げるお考えですか。

新設住宅着工戸数の減速感と原材料価格の高騰

市場環境としては、2017年度の新設住宅着工戸数が7月以降、前年比マイナスに転じ、2018年3月まで9カ月連続で前年割れが続くなど、減速感が強まっています。
またさらに、下半期以降、当社の業績に影響を及ぼすエネルギー、接着剤、輸入合板、運賃などのコスト面で厳しさが増しています。2018年度もこのコストアップの傾向が続き、さらに厳しさが増すことが見込まれています。
これまで工場を中心とした合理化・コストダウンで対応してきましたが、自助努力では吸収不可能なレベルになっています。このような状況から、苦渋の決断ではありますが、得意先に対して、一部の製品で販売価格への転嫁をお願いしている状況です。

大規模な新製品投入による新たな価値の提案

一方でメーカーとして、お客様に新しい価値を提供していくことがもっとも重要だと考えています。具体的な提案の一つとして、2018年6月に新製品を大規模に投入しました。既存カタログ製品の7割を総入れ替えし、さらに品揃えを3割増やし、住宅向け、公共・商業建築向けの両方で提案力を強化しました。
これらの新製品を軸に新築住宅市場でのシェアを高めながら、公共・商業建築分野でも提案の幅を広げていきたいと考えています。
特に当社独自の不燃素材「ダイライト」を活用した深彫調不燃壁材「グラビオ エッジ」は、従来、内装空間の中で手薄だった壁面の提案を強化する戦略商品の位置付けです。
住宅向けには玄関、リビング、主寝室などのアクセントウォールとして、床材や内装ドアなどと合わせた上質空間として提案の幅を広げ、非住宅向けには、エントランスホールなどの空間で高級感を演出する高い意匠性を訴求していきます。
本製品は、意匠面だけでなく、ダイライト基材ならではの特長により、軽量かつ加工がしやすいため、技能工不足に直面する建築業界の省施工にも貢献できる製品だと自負しています。

買収したニュージーランドMDF工場とのシナジー効果を早期に最大化

また、2018年4月に買収手続きが完了したニュージーランドMDF工場とのグループ連携を深めていきます。今回の買収でニュージーランド2工場、マレーシア2工場、日本国内の提携先ホクシン(株)を含め、従来比約3割増の年間約80万㎥のMDFの生産体制を確立することができます。各工場の特性を活かした生産品目の最適化により、グループ全体でのシナジー効果を早期に最大化したいと考えています。
買収後も海外向けの販売ルートを引き継ぐため、海外市場での販路が拡大します。また、約4分の1は日本向け販売であるため、日本のMDF市場でのシェアが約50%に高まり、日本国内MDF No.1の地位が確固たるものになり、当社のMDF事業の存在感を高めることができました。
これらの取り組みにより、中期経営計画の売上高目標1,800億円を含む、営業利益、経常利益、純利益、ROEの5項目すべての経営目標をなんとしても達成し、最高の形で次期中期経営計画につなげたいと考えています。

QuestionESG・CSRの捉え方

ESG投資の機運が高まっています。
ESG・CSRの取り組みについて教えてください。

環境(E)

当社では、木材加工業を祖業としている歴史的経緯もあり、木材を貴重な資源として無駄なく使い尽くすという考えがDNAとして根付いています。この考え方のもと1950年代から製材端材や間伐材を活用した木材チップを原料とする「インシュレーションボード」を手掛けており、今では住宅を解体するときに発生する建築古材の利用率を高めることで、さらに木質資源の有効活用につなげています。
これら限りある資源を有効利用するという発想は、鉄鉱石の鉄を取り出した後の副産物を利用した天井材「ダイロートン」、地域に土石流などの災害をもたらすこともある鹿児島のシラス台地の火山灰を利用した「ダイライト」などにも活かされています。当社はこれら素材事業をコア事業の一つとしており、創業以来とりわけ環境には強いこだわりがあります。
ものづくりのプロセスでも環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。原材料に使用できないチップや、加工工程で発生する木くずを燃料に利用する木質バイオマスボイラーを国内グループ9工場に設置し、国内生産拠点で使用する全エネルギーの約半分を再生可能エネルギーでまかなえる体制を整えています。これによりCO2の排出量削減に大きく寄与しています。

代表取締役 社長執行役員 億田 正則

また昨今、世界的に注目度の高い水資源問題に対しても、インシュレーションボードを製造する工場を中心に水を使用していますが、古くから循環・浄化設備を整備し、汚染防止はもちろんのこと使用量を最小限に抑える取り組みも進めています。2017年度は新たに最新の浄化装置を導入し、さらに強化を図ったところです。こういったお客様に見えにくいところの環境にもこだわっていく必要があると考えています。

社会(S)

社会については、中期CSR活動計画において、「品質」「人財活用」「公正な取引」「地域社会との共生」「人権」等の重点課題を設定して取り組んでいます。
まずメーカーとしての原点ともいうべき品質。お客様に提供する製品・サービスの品質・安全性を確実なものとすることを徹底しています。また特に、中期経営計画の基本方針にも掲げている「社員が活き活きと活躍できる職場環境」を整備するための「働き方改革」や、多様な人財の活躍を当社の成長につなげるための「ダイバーシティ推進」に力を入れています。
もっとも身近な存在である女性活躍も重視しています。社外から注目される女性管理職比率はまだまだ低い状況ですが、性急に数値だけを求めても本人、会社両方にとって良い結果にはなりません。
そのため、まず女性が活躍できる基盤づくりを優先して取り組んでいるところです。社外講師を招いた講演会、女性交流会、新規採用時の女性比率の向上、女性管理職候補者研修、また、特に変革の時代においては、新たな価値を生み出す「知の源泉」としての人財の活躍が不可欠です。そういう視点で将来のスキルアップを具体的にイメージできる中長期プランの共有化など、意識を変え、裾野を広げる取り組みを重視していきたいと考えています。2018年6月の株主総会で女性の社外監査役、勝尾裕子氏を招聘しました。今後、従業員との交流の場を積極的に設けることで、社内に新しい風が吹くことも期待しています。

ガバナンス(G)

ガバナンスについては、より経営の透明性を確保するため、任意の諮問委員会として、委員長およびその過半数を独立役員で構成するコーポレートガバナンス委員会や指名・報酬委員会を設置しており、社外の声を取り入れた活発な議論がなされています。また、会議体での議論だけでなく、それ以外の情報提供や意見交換の機会も増えており、より実効性の高いものになっていると感じています。
これら一連のESGの取り組みは、事業活動を支える一体不可分の基盤です。財務情報だけでなく、何を目指す企業なのかという理念から、ESGなどの非財務情報までを含めて、総合的に企業価値が評価される流れは、これまで当社が大事にしてきたものをあらためて評価してもらえるということで歓迎しています。
ESG投資の機運の高まりを捉え、事業活動とESG、CSRの融合を意識しながら、これまで以上に取り組みを加速させていきたいと考えています。

QuestionSDGsへの取り組み

グローバルな社会課題として、SDGsへの対応が求められています。
これらに対する考え方を聞かせてください。

企業の究極の存在意義は、事業を通じて社会課題を解決することだと考えています。
その中でSDGsは、国連主導で策定された、いわば“解決すべき社会課題のグローバルスタンダード”といえるのではないでしょうか。そうした意味からも、持続可能な社会を目指す上で避けて通れないテーマです。
当社ではまず、現在の事業活動やさまざまな取り組みがSDGsとどうつながるのかを整理するところから始めています。
そして、社長である私をはじめ取締役会メンバー、執行役員といった経営層が、グローバルに起きている潮流の変化、企業に何が求められるかをしっかり認識することが肝心だと思います。
その上で、部門長から管理職へ、管理職から各職場の従業員へと身近なテーマや自身に関係のある業務と関連付けながら展開していく必要があります。そのための取り組みとして、CSR委員会での方向性の議論や、全国の部門長が集まる会議体での情報共有からスタートしています。
具体的な会社としての取り組みについては、現在策定中の次期中期経営計画、連動する次期中期CSR活動計画、中期環境計画の中で、関連するテーマを設定し、必要に応じて方針や推進体制などを明確にして、取り組みを前に進めていきたいと考えています。
今後は社内の現場レベルにまで根付かせるため、若手の開発担当者が、SDGsを中長期の研究開発テーマに取り入れるきっかけになる活動を行っていきたいと考えています。

Question次期中期経営計画策定について

2019年度からスタートする中期経営計画「GP25 2nd Stage」にかける想いを聞かせてください。

まず、1st Stage をしっかりと仕上げることが最重要です。また、現在策定中のため詳細についてはいえませんが、次期中期経営計画である2nd Stageは、2025年度を見据えた長期ビジョン「GP25」が実現できるかどうかが試されるステージになると考えています。
1st Stageは、ある意味で現有の経営資源を活かしながら、新市場での開拓を進めてきた面がありますが、2nd Stageは既存の柱となる素材・建材・エンジニアリングの3つの事業をベースにした拡大はもとより、特に第4の柱となる新事業立ち上げにこだわりたいと考えています。
その際、現有の経営資源の延長線上だけでなく、大型の投資案件を決断する必要があると思います。
こうした想いを込めて、2018年4月から新規事業やM&Aに戦略的に取り組む専門組織「経営戦略室」を新たに設置しました。2nd Stageの3年間の間には、第4の柱が確立できている状況にすることにこだわりたいと思います。
その際にまず財務面で重視すべきはキャッシュフローをどう有効活用し最大化するか、そして資本コストに対するリターンが適切かという観点です。
そのため、次期中期経営計画では、売上、利益、ROEの目標だけでなく、バランスシートやキャッシュ活用方針についても明確にしたいと考えています。
また、同時に新たに柱となる事業を拡大することが、社会課題・ニーズを捉え、当社の企業理念や長期ビジョンで目指す姿を実現することにつながるのかということをしっかりとイメージしながら取り組んでいきたいと思います。それが社会にとっても、当社の事業活動にとっても持続可能なものにつながると思います。

代表取締役 社長執行役員 億田 正則