複合施設とは? 公共施設における複合化のメリットや防災拠点・フェーズフリーとしての施設設計

複合施設

これまで複合施設といえば一般的にショッピングモールが主流でしたが、近年は政府の推奨もあり、公共施設の複合化が進んでいます。スポーツと文化施設、図書館と駅、幼保施設と高齢者施設など、公的サービス施設を複合化するメリットが注目されているのです。

複合施設の種類や、異なる機能・目的を持つ公共施設を複合化するメリット、そして公共複合施設が災害時に求められる防災拠点としての役割について解説します。あわせて災害時を視野に入れた、公共複合施設の設計に適した建材もご紹介します。

複合施設の種類

複合施設

複合施設とは、ショッピングモールなどの商業施設をはじめスポーツ施設や文化施設など、複数の機能を持った公共施設や民間施設を一つに統合した施設です。多種多様な種類があり、施設の規模や運営内容によって、主に次の5つに分けられます。

・複合商業施設

小売店や飲食店、映画館、劇場、遊技場、オフィスなどの複数の商業施設を備えた大型の施設です。広い敷地に多くの店舗を集約させることで、顧客の集客を図ります。買い物や食事もできるといった利便性の高さや多種多様なニーズに応えられるため、集客力を向上できるのが複合商業施設の魅力です。

・図書館複合施設

図書館が他の施設と同一の建物内にある複合施設。近年は、公共図書館と学校、駅、店舗など、多様な公的・民間施設を併設する事例が増加しています。買い物帰りに図書館に立ち寄る、本を返却してから併設されたカフェで休むというように、図書館は地域住民にとって、より身近な存在となっています。

・幼老複合施設

保育所や学校などの子ども向け施設と、老人ホームやデイサービスなどの高齢者施設を併設している複合施設。幅広い世代の利用者や地域住民などが食事や季節の行事を一緒に楽しみ交流を深めることで、地域コミュニティが形成されます。

・高齢者複合施設

種類が異なる複数の高齢者施設や介護サービス事業所を併設している複合施設。高齢者の健康状態が変化・悪化した場合、従来であれば体の状態に対応した施設を探す必要がありました。ところが、施設内に複数の施設や事業所がある高齢者複合施設であればあらためて施設を探す必要がなく、同じ場所で異なるサービスを受けられます。高齢者が安心して同じ場所に長く住み続けられるのです。

・スポーツ複合施設

多様なスポーツ施設を併設している複合施設。健康増進や地域商店街の消費拡大、交流人口の増加、若年層の定住など、地域活性化の一翼を担っています。防災拠点としての機能を持たせれば、災害時に大いに役立ちます。

公共施設の複合化とそのメリットは?

これまで、大型施設といえばショッピングモールを指すケースがほとんどでしたが、近年は公共施設の複合化が急速に進み、新しい形の公共空間が生まれています。複数の機能や異なる目的を持つ施設を1カ所に集約させ、複合化・多機能化した大型複合施設をつくることで、住民の利便性が向上。その結果、施設の賑わいが増し、施設間で多様な人々の交流が促進されるなど、相乗効果が生まれているのです。

また、複合化には経済的なメリットもあります。限られた予算内で土地と建物を最大限に活用でき、管理・運営のためのランニングコストを効果的に削減できるのです。そのため、国や自治体も「インフラ長寿命計画」にもとづき、公共施設の複合化を推進 (※)しています。

※参照:文部科学省「社会教育施設の複合化・集約化
内閣府「公共施設等の集約・複合化による 経済・財政効果について

ただし、複合化のメリットを最大限に引き出すには、戦略的なプランと設計が不可欠です。どのような施設を組み合わせれば最良の相乗効果を生み出すのか、十分に検討する必要があるでしょう。

防災時に公共複合施設に求められること

複合施設

公共複合施設は、平常時と災害時のどちらのフェーズ(局面)でも利用できる「フェーズフリー施設」としての役割に期待が寄せられています。

●フェーズフリーとは

フェーズフリーとは、普段から利用している施設や製品、サービスなどを非常時にも役立てるという考え方です。
フェーズフリー型の複合施設は、平常時は地域住民の生活と活動をサポートし、災害時には安全でスムーズに生活できる避難所として機能する必要があります。

たとえば「フィットネスジムのスタジオを一時避難所にする」「カフェやコミュニティスペースは食料の配給や食料・飲料などを備蓄する」「ランドリーを飲料水の確保と衛生状態の維持に役立てる」「温泉熱を利用した床暖房で停電時でも暖かく過ごせる」など、各スペースが災害時に機能するように、適切な活用計画を立てなければなりません。また、避難者へ必要な情報が迅速に提供できるように、円滑なコミュニケーションツールを整備することも大切です。
いつも利用している場所が、いざというときに避難者の安全を守る施設として機能することが重要なのです。

フェーズフリー施設としての建物づくり

フェーズフリーに対応できる施設づくりでは、突発的な災害に耐え、さらに発災後も安全な避難所として機能するように設計しなければなりません。
そこで大切なのが、建物の耐震性や、耐火性の高い材料選びです。フェーズフリー施設としての役割を果たすためには、とくに天井の耐震化が重要です。天井が落下すると、人命に直接被害が及ぶほか、避難経路が遮断され避難や救助活動に支障が出る可能性があります。他にも照明・空調機器等の損失により施設機能が失われる場合も考えられるため、地震の大きな揺れでも落下しない安全性の高い天井が求められるのです。

近年の災害の増加により日本国内での防災意識は高まっていますが、災害の規模は大きくなり、より深刻化しています。耐震性能に優れた天井材を採用して、いつ訪れるかわからない災害時に備えて施設利用者や避難者の安全を確保できる施設づくりを進めましょう。

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