【前編】「Less is more」を体現した『ieria(イエリア)』シリーズの開発

2026.5.29

DAIKENでは2025年6月に内装建材シリーズ『ieria(イエリア)』を発売しました。『hapia(ハピア)』の後継として、12年ぶりにリニューアルを行っています。

今回は『ieria』の開発方針や新色開発の裏側について、担当者にインタビューしました。

マーケティング部:森川、内海、石塚
住機製品事業部:山田

※本文中の所属・役職は取材当時のものです。現在とは異なる場合があります。

「Less is more」を基幹コンセプトに開発を推進

『ieria』は「ここちいい暮らしを、ともに。」をコンセプトに展開されていますが、どのような背景から開発に至ったのでしょうか。

森川:

昨年、弊社は80周年を迎え、DAIKEN株式会社へ社名変更を行い、タグラインも新しく「ずっと ここちいいね」に刷新しました。

『ieria』の開発は80周年記念商品という位置づけで、新たな基幹シリーズとして展開していきたいという考えがありました。前身の『hapia』は2013年発売から年月が経ち、色柄やデザインなどの商品力低下の課題が生じていました。競合メーカーのリニューアルも進む中、新しい切り口を取り入れたいと考えました。

『ieria』シリーズの基幹コンセプト「Less is more」に基づく開発方針について教えてください。

森川:

実は2022年に「Less is more」を基幹コンセプトとして、社内で経営層などに対してコンセプト発表会を行っています。「Less is more」は、近代建築の巨匠ミース・ファン・デルローエによる言葉で、引き算の美学によるシンプルな空間を目指しました。

「Less is more」の思想に基づいた「自然との共生を目指して」「より暮らしの満足度を上げる」「シンプルさと向き合う」「素材の魅力を引き出す」「分かりやすく、選びやすく」の5つのコンセプトが、『ieria』シリーズの基本になっています。

実際に『ieria』の開発では、そのコンセプトがどのように活かされましたか。

森川:

例として「分かりやすく、選びやすく」を取り上げると、『hapia』では5つのグレードがありましたが、『ieria』では「ieriaスタンダード」と「ieriaセレクト」の2つに集約し、お客様が分かりやすく、選びやすいように配慮しました。トレンドに合わせて色柄の改廃も行っています。

山田:

カラー・グレード展開の見直しでは、「ieriaスタンダード」と「ieriaセレクト」において、扉1枚の価格差を「+1万5,000円」と明確にしたことで提案のしやすさと選びやすさを強化しています。

また、『hapia』では上位グレードの「トレンドウッド柄」については、建具枠が単色のホワイトのみでした。そこで、お客様から数多くいただいていた「枠も扉と同色にしたい」というご要望に応え、今回の「ieriaセレクト」ではブラックと同系色の枠を追加して、「ieriaスタンダード」の新色「モスブラック」では同系色の枠を展開するなど、扉と枠のコーディネート提案を拡大し、より幅広い空間デザインに対応できるようにしています。

環境配慮の観点では、無駄のないシンプルな見た目が好まれる近年のデザイントレンドに合わせて、建具枠をスリム化し、当時の業界最薄クラスの18.5mm厚としました。天井高いっぱいの二方枠フルハイトドアや下レールレス吊戸など、新たな開閉形態も盛り込んでいます。

山田:

さらに枠や丁番、戸当たりなどのディテールも小型化・スリム化し、材料使用量の減少による省資源化と、CO₂削減による環境負荷軽減も訴求できる仕様としています。

昨今のトレンドを基にして『ieria』シリーズが目指したものについて教えてください。

内海:

『ieria』は2つの方向性を軸としました。1つ目は、コロナ禍以降のトレンドとして、「豪華・ラグジュアリー」というよりも、「シンプルで居心地の良い」空間が求められており、エコロジーの考え方から良いものを長く使うというトレンドもあったため、空間に馴染んで長く使ってもらえるような普遍的な意匠を目指すということです。2つ目としてはライフスタイルや趣味の多様化から、カスタマイズ性をどんどん拡大し、個性や世界観を重視するトレンドを実現することです。

そこで、『ieria』では普遍的な柄から個性的な世界観を演出できる柄まで幅広くラインアップしました。

「ieriaでつくる 4つの世界」と「6つのインテリアテイスト」による空間提案

『ieria』の空間提案では、「ieriaでつくる 4つの世界」と「6つのインテリアテイスト」を展開していますが、それぞれの目的にはどのような違いがありますか。

石塚:

「ieriaでつくる 4つの世界」は、ミラノ等の海外トレンドを意識したDAIKENが新柄に合わせて推していきたいコーディネートです。「6つのインテリアテイスト」は、『ieria』の普遍的な空間提案という位置づけです。

「ieriaでつくる 4つの世界」の空間提案について特徴などを教えてください。

石塚:

「ieriaスタンダード」は「シンプルで居心地の良い」を体現した空間を8柄で仕上げています。普遍的でありながらもトレンドを意識したブラック系のジャパンディスタイル(モスブラック柄)や、韓国風インテリアスタイル(ネオホワイト柄)などを新たに作りました。

石塚:

「ieriaセレクト」では「precious time な空間」と「material plus な空間」「Mindful lifeな空間」の3つの空間を設定しました

「precious time な空間」は新色のバームブラウン柄を中心に、上質な木質感が味わえる空間に仕上げました。『hapia』では建具枠の色はホワイトしか選択できませんでしたが、パームブラウン柄・コットンベージュ柄・スモーキーグレー柄の扉と枠が同系色で設定できるのがポイントです。

「material plus な空間」は新色の墨を流したような木目柄のスロウベージュ柄を中心に、エッジの効いた素材を取り入れてモードなマテリアルミックス空間に仕上げています。石目やアイアンなどの異素材ともコーディネートしやすく、洋風でも和風でも合わせやすい個性的な空間づくりを訴求しています。

「Mindful lifeな空間」は新色のテラゾホワイト柄を中心に、新しさと懐かしさを兼ね備えたニューレトロな空間に仕上げました。トレンドのマテリアルミックスのバリエーションとして、テラゾホワイト柄をレトロな空間にマッチさせています。

『hapia』は11テイストありましたが、『ieria』はどのような理由から「6つのインテリアテイスト」に絞って展開したのでしょうか。

石塚:

従来の『hapia』の11テイストは社内外ともに浸透度が低く、色柄やコーディネートの度重なる追加により統一感が薄いという課題があったため、わかりやすい名称で集約しました。

内海:

コーディネートの多様化により、新しく生まれるものすべてに対応することは難しく、テイストが複雑化していく要因になっていました。そこで、『ieria』では原点に立ち戻り、お客様がコーディネートをする時の軸となるように、6テイストという大きな枠組みで打ち出しました。トレンドを踏まえたコーディネートを設定し、お客様が選びやすいようにサポートできる工夫をしました。

調査結果を基に若手中心の体制で新柄を開発

『ieria』の新色(新柄)開発ではどのような調査や分析を行ったのでしょうか。

石塚:

まず、社内外のレポートを基にミラノサローネ調査(イタリア・ミラノで開催される国際的な家具・インテリアの見本市におけるトレンドの分析)を行いました。単色系では明るい爽やかな色からグレー系まで幅広く展開されているものの、国内におけるトレンドのボリュームはベーシックな色にとどまりそうだと感じました。木目についても、木質そのものの質感を活かした仕上げのほか、節やキャラクターが入らないきれいな木目が増加していることなどから、材料と色の差があるグレー系の塗装仕上げや、ラスティック(素朴で荒々しい)な木目は国内でも減少すると推測しました。

次に、競合メーカー調査を実施した後、首都圏を中心とした社内の営業担当者にリニューアル後の製品体系や、色柄のラインアップについてヒアリングをしました。その結果、「木目はオーク・アッシュなど、木目の抑揚がきれいで単調になりすぎないグレージュカラーを投入する」「ホワイト系はクロスのトレンドを意識し、クール系のホワイトを投入する」「ブラック系は木目ありにシフトし、枠は柄を抑えて単色にも見えるように調整する」という方向性が導き出されました。

これに基づいて試作品の改良を行い、ハウスメーカーやビルダーなどのお客様にヒアリングを実施し、方向性についての合意を形成していきました。

『ieria』の開発はどのような体制で進められたのでしょうか。

石塚:

『ieria』の開発はデザインやプロモーションを担当するマーケティング部と、住機製品事業部の開発担当や井波工場(富山)の製造部門、営業部門と連携して進めました。

マーケティング部では、テーマアップして本格的な開発に移る段階から、上司と当時入社3年目の私と入社2年目の社員が、色柄の企画・検討から試作まで担当しました。『ieria』は若手メンバーが活躍したリニューアルだったと感じています。

『ieria』の開発にあたって苦労された点はありますか。

石塚:

今回は新たな柄を6点開発していますが、候補としては5倍ぐらいの数がありました。半年ぐらいかけて同時並行でブラッシュアップを進め、どのように絞り込むかは直前まで迷いました。新色の各柄が持つイメージや条件を基に、どの柄が相応しいのか、この色で良いのかと精査していく作業は本当に大変でした。

森川:

さらには1つの柄に対して、何種類もの部材ごとにシートの仕様が異なるため、作業がその分の柄に対して発生します。時間的な制約もある中、同時並行で行う大変さがありました。「Less is more」を実現するための開発は、様々な苦労もあったのです。

後編では、『ieria』シリーズのプロモーションや80周年記念展示、富山プロダクツの選定について担当者にインタビューします。

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