mori-age.0
~企業の森林活動・木材利用を繋ぎ、森をモリアゲる~

2022.11.28

mori-age.0

9月16日、オンラインイベント「mori-age.0 企業の森林活動・木材利用を繋ぎ、森をモリアゲる」を当社主催で開催しました。当社が2021年4月から参画している他社共創型コンソーシアムpoint0 では、業界の垣根を越えて様々な情報交換が行われています。そうした中、当社がコワーキングスペースpoint0 marunouchiで内装木質化や『グロウアース』を用いた栽培実験など「木材」をキーワードとした取り組みを行っていたところ、他の企業でも社有林等の森林保全や木材利用の取り組みをしていることが分かりました。

そこで、アサヒグループやJT、ライオンのように、社有林・協定林を持ち、森林の保全に取り組む企業と、大建工業のように木材利用に取り組む企業が、企業間のつながりを強化し、共創の可能性を探り、森について幅広い取り組みを「point0」から発信したいと考えました。こうした経緯から、今回、森林事業の官と民を繋ぐ活動を行う株式会社モリアゲ代表の長野さんをファシリテーターに呼び、社有林や協定林を持つ3 社と当社オンラインイベントを開催することとなりました。

大建工業の取り組み

DAIKENでは「DAIKENサステナビリティ基本方針」として、「持続可能な社会・地球環境・経済の実現への貢献」「企業としての持続可能性の追求」「持続可能な企業価値の向上に努める」の3つを掲げ、これが国産材利用を進める考え方のベースとなっています。
そして、事業を通じた価値の創造として、「木質資源の活用によるカーボンニュートラルへの貢献」「 国産木材の活用促進」「未利用資源の有効活用」などを行っています。

mori-age.0

当社では、国産材活用のひとつとして“防腐防蟻性能を持つLVL”を製造しています。具体的には、当社の設備によって単板に防腐防蟻薬剤を含浸し、この単板を用いて、協力会社でLVLを製造するというものです。また、それ以外にも木材繊維で作る土壌改良材『DWファイバー』や『グロウアース』も製造しています。「point0」でも『グロウアース』を活用した植物栽培検証を実施しました。

さらに『グロウアース』を使った菜園システムを提供する取り組みとして、都市部のオープンスペースにおける新たな活用として『プチまち菜園』を設置し、街なかで菜園の開設を支援する取り組みの準備を行っている段階です。これはコンテナを利用した屋上の緑化という形で、野菜や花を育てていただく取り組みになります。この他にも木材の循環利用に関連する取り組みとして、飲料系の企業が保有する社有林からチップを調達して、『グロウアース』として加工し、苗木生産関連会社に培地として販売。最終的には苗木を一般消費者に使っていただくといった取り組みも行っています。
こうした紹介した取り組みを通じ、木材を余すことなくマテリアル利用することによって、CO2の固定化に貢献していければと考えています。

mori-age.0

各企業の取り組み

■ アサヒグループジャパン株式会社:アサヒの森

アサヒグループでは、80年以上にわたって社員の手でアサヒの森を守る取り組みが行われています。2021年にはアサヒの森で、国内のビール工場で使用する100%以上の水を涵養することができました。

アサヒの森HPはこちら

■ 日本たばこ産業株式会社(JT):JTの森

2005年に民営化20周年記念事業として「JTの森」の活動をスタートし、現在では全国9か所にて展開。全国各地の森では年に2回程度、JTグループの従業員や家族、地域の皆様が参加する「森づくりの日」というイベントを設け、環境教育や地域交流の場としています。

JTの森HPはこちら

■ ライオン株式会社:ライオン山梨の森

ライオンでは、2006年から山梨市などと協定を結び、ライオンの森として山梨市有林で森林保全活動を行っています。間伐材の活用の試みも行っており、賀詞交換会で振舞われる升やオフィスのベンチ、定年退職者向けの記念品のフォトフレームを製作しているほか、昨年はSDGsバッチも作っています。

ライオン山梨の森HPはこちら

パネルディスカッション

ここからは株式会社モリアゲの長野麻子氏をファシリテーターに迎えて行われたパネルディスカッションの様子をまとめています。

ファシリテーター:

株式会社モリアゲ 長野 麻子 氏
東京大学文学部フランス文学科卒業後、農林水産省入省。フランス留学やバイオマス・ニッポン総合戦略検討チーム、(株)電通出向等を経て、林野庁林政部木材利用課長を務め「ウッド・チェンジ」を合言葉に木材利用の促進に尽力。2022年6月には同省を早期退職し、2022年8月より現職となる、日本の森をモリアゲる会社、株式会社モリアゲを起業。

株式会社モリアゲHPはこちら

パネリスト:

アサヒグループジャパン株式会社 コーポレートコミュニケーション戦略部 南雲 裕司 氏
日本たばこ産業株式会社 渉外企画室 コミュニティインベストメントチーム 宮村 香也子 氏
ライオン株式会社 サステナビリティ推進部 島崎 博子 氏
大建工業株式会社 エコ事業部 日南大建株式会社 福知 義久 氏

mori-age.0

社内での森に対する課題とは?

長野

アサヒグループの南雲さんは森を担当したのが最近だと思いますが、実際に担当されてみていかがですか。

南雲

子供の頃は、森林伐採は悪として捉えていましたが、間伐をして光を入れるような意味のある伐採もあることがわかりました。ちょうど3日前にアサヒの森に研修に行ってきたのですが、研修後は皆さんすっきりして帰るなど、森にはリラックスする効果があると感じています。
担当者として、森に触れる機会を社内から広げていくことが使命だと思っています。アサヒグループでは80年以上もアサヒの森を所有していますが、そのことを知っている社員が少なく、先日の研修でも入社から30年を経て初めて来たという人がいました。森の価値を一般に広めていく前に、まずはアサヒの森を社内に広げていきたいと考えています。社内でも、森の取り組みに「どんな意味があるの?」と言う人もいますが、一度来てもらうと価値をわかってもらえます。

島崎

ライオンの森がある山梨市には100回以上行っていますが、毎回、電車を降りた瞬間に空気のきれいなことに感動しています。こうした価値をみなさんにもわかっていただきたいですね。
当社でも企業の森を担当していると、「事業にどう関係があるんだ」と言われることがあります。しかし、事業には水が必要です。それが事業にどう影響するのか数値化してロジカルに説明できれば良いのでしょうけれど、計算しにくい難しさがあると思います。

宮村

JTの森は約17年という長期にわたる施策で、やっているうちに視野が狭くなってきています。運営のスキームやイベントの内容も固定的になってしまっていますので、今回を機会に他の企業の取り組みを知りたいと思っています。

研修センターの製材へ活用!?社有林・協定林の間伐材の活用方法とは

長野

これまでは間伐を中心として取り組まれてきたと思いますが、大建工業の福知さん、利用に関するアイデアはありますか。

福知

まとまった量の木材がないと難しい部分もありますが、参加企業各社の研修センターを新築や改修する時に、製材して床材などに加工して提供することはできると思います。針葉樹や広葉樹なといった山に生える木の種類や規模などがわかればご提案もできます。

長野

「point0」からそうしたイノベーションが生まれるといいですね。協定林では難しいかもしれませんが、社有林は計画的な利用がしやすそうです。JTの宮村さん、いかがですか。

宮村

「JTの森」は協定林が主のため、一度市場に出た間伐材を買い取っています。過去には木の育ち具合が安定していなかったり、割高になったりしたことから、継続的な使用は難しかったという話も聞いています。大きいものを作る方が良いかもしれませんね。

長野

大きなものを作る時には計画的かつ安定的に調達をしていくことになります。JTの森が育てた木材でできた喫煙所とか、おもしろいですね。

森の福利厚生としての可能性

長野

森の福利厚生としての可能性について考えていきたいと思います。新入社員で全員が森に行っているのはライオンさんだけでしょうか。

島崎

新入社員研修では、ライオンの森に行った翌日、人事部門主催のグループワークを行っています。社内報でも積極的にPR した結果、今ではライオンの森が社内で最も知られている社会貢献活動になりました。

長野

社内に対しても社外に対しても情報を発信するのは大事ですね。JTの森が実施するイベントにはボランティアで参加するのでしょうか。

宮村

JTの森では土曜日にイベントを行うことが多いです。バスを出して、間伐等の森林整備活動後に、地元のおいしいお弁当を食べて近くの温泉に行くので、旅行感覚で楽しめ、リピーターも多いです。実際に森に行くことで広報が進むと感じていますので、社員が行ける機会を増やすことは大事ですね。

長野

これからやってみたいことを聞いてみたいと思いますが、大建工業ではカスケード利用の取り組みで、何か他の企業の社有林と協業などはできますか。

福知

森林は小規模な山主さんが多く、森林組合の手が回らず高齢化が進んでいるといった課題があります。社有林のようにまとまった規模の森であれば何かできると思いますので、モデルケースを作っていけたらと思います。現状では当社が直接丸太を買っているわけではありませんが、いろいろな企業と組んで循環型の林産業を進めていきたいと考えています。

長野

企業の社有林をきっかけにした利用と再造林に向けた流れができたらおもしろいと思います。島崎さん、社有林の可能性はいかがですか。

島崎

「木を売って」という視点ではなく、ライオンの森を企業価値を上げるツールとして使えないかなと考えています。例えばお取引先の研修に使ってもらうなど、営業のツールとして使ってもらえたらいいなと考えています。

mori-age.0

これからの社有林・協定林の活用に向けて

長野

企業の森を持つ会社同士がつながり、利用を進めていきたいですね。最後に一言ずつお願いします。

南雲

アサヒグループは食品を扱っているため、森や自然とは高い親和性があります。今は社内でもアサヒの森を知っている人が少ないですが、最終的にはアサヒの森を起点に、全国に森に関心を持つ人を増やす取り組みをしていけたらと思います。

島崎

今まで社内で試行錯誤してきたのですが、「point0」という場もありますし、今後はもっと外部の方とも接点を持って、そこから化学反応が生まれたらいいなと考えています。

宮村

本日、島崎さんから学んだことですが、活動を継続していくためには、企業が森林保全活動を進める価値を数字で示すことが大切だと思いましたので、持ち帰って検討していきたいと思います。

福知

サステナビリティ基本方針に掲げているように、国内の林業が抱える課題に対してはまだまだ取り組みが浅いため、地元の企業や森林組合と協力して取り組んでいかなければと考えています。SDGsの「使う責任」として、長期的な視点から目を向けて行きたいと思っています。

長野

山を誰が守るのかということから企業の森が始まりましたが、プラネタリーバウンダリー(惑星限界)といった地球の制約に私たちの経済活動、人間活動をどうやって合わせていくかという中で、また森がクローズアップされてくるんじゃないかと考えています。これまで社有林や企業の森を持っていた企業があるからこそ、これからのサステナビリティ時代に森を持とうという企業の参考になるのではないかと思います。丸の内から社有林から「一社一山」を広めて森をモリアゲていきましょう。

DAIKENは森林資源と適切に循環していくために、アサヒグループ、ライオン、JTのように、社有林・協定林を持ち、森林保全を通して水源涵養や物質生産、地域貢献などを行う企業と、大建工業のように木材利用に取り組む企業が、それぞれの役割を担いながら共に考えて活動することで、さらに森林に関する取り組みをモリアゲられるのではないかと考えております。

DAIKENの内装木質化についての取り組みはこちら

DAIKENの内装木質化についての取り組み

DAIKENのサスティナビリティへの取り組みはこちら

DAIKENのサスティナビリティへの取り組み