2020.12.8
福谷 優作:大建工業株式会社 商品企画部 音響製品部兼務 「KIN TONE(キントーン)」開発を担当。
※所属・役職名などは取材時点のものです。
幼稚園や保育園では、音が響くことによって先生や保育士の声が子どもたちに届きにくいという課題がありました。
そこで、そうした状況を改善するため、DAIKENでは2019年8月に天井用吸音パネル『KIN TONE(キントーン)』を発売。
「KIN TONE」は未利用空間である天井の直下を利用したことや、デザイン性をプラスしたことが評価され、「第15 回キッズデザイン賞」を受賞しました。
『KIN TONE』の開発を始める2年ほど前に、オフィス向けの壁に後付けできる『OFF TONE(オフトーン)』という吸音パネルを発売しました。オフィス以外にも営業活動をしていたところ、引き合いが多かったのが幼稚園や保育園でした。
しかし、実際に幼稚園や保育園を訪ねてみると、壁には展示物や掲示物が貼ってあるため、『OFF TONE』を取り付けることはできません。天井は空いていますが、DAIKEN の既存の天井用の吸音材では張り替えが必要になり、大掛かりな工事になってしまいます。そこで、後付けできる天井用吸音パネルとして開発したのが『KIN TONE』です。
天井材:『KIN TONE(キントーン)』
『KIN TONE』は天井に吊り下げて施工する吸音パネルです。商品名は、「Kindergarten(幼稚園)」と「Tone(調子を整える)」の意味を持たせました。標準品は『KIN TONE スクエア』と『KIN TONE サークル』の2種類で、5色展開となっています。
幼稚園や保育園に設置するため、様々な形や色にできるように、特注対応が可能な仕様にしました。例えば雲や飛行機など、図面で指定した形状に1 枚1 枚カットすることができます。
特注対応にて、鳥型にデザインされた『KIN TONE』
厚みは変えられませんが、基本的に600mm×600mm以内であれば、自由な形状で製作できます。PANTONカラーによる指定が可能で、幅広いカラーにも対応しています。
特注対応はCADやイラストレーターのデータを作成していただくようになりますが、飛行機などよく使われるものについてはテンプレートも用意しています。
※PANTONE カラー…アメリカ合衆国のPantone 社が開発した、世界共通の色見本帳の名称。
天井に『KIN TONE』を施工することによって、空間の音の響きを調整することができます。音が響きすぎると声が聞こえにくくなり、例えばメインターゲットの幼稚園や保育園では、先生や保育士さんは反響している中でも聞こえるように声を張り上げなければならず、負担が大きくなります。そういった状況を改善することができます。
形状が異なっても、理論的に表面積あたりの音響の効果は変わりません。標準品以外の形状の場合も、表面積を元に特注品の性能を予測することができるため、必要枚数を簡易的に算出できます。
幼稚園や保育園ではホールなどの広い空間に使用されることが多いですが、教室に使われることもあります。そのほかには、ショールームや飲食店、オフィスの天井などにも利用されていて、音が響いて声が届きにくい、音響を調整したい商業空間にも対応できます。
例えば、ショールームの天井には二等辺三角形と正方形を組み合わせた形状のパネル、天井がコンクリート現し(構造を見える状態にした仕上げ)の飲食店には薄いグレーのスクエアパネルを設置したケースがあります。
施工事例:株式会社エーワンオートイワセ 本社ショールーム 『KIN TONE』特注品
施工事例:FIVE TREES(飲食店) 『KIN TONE』特注色
内装材の音響製品は市場がニッチなため、爆発的に売れるものではありませんが、『KIN TONE』は発売以来、常にある程度の売上を確保できている商品です。
通常、音響製品は、音響の効果をもとに提案して採用されるかどうかといったところですが、『KIN TONE』はそうした提案を行わなくても、カタログを見てもらうことで売れていく傾向があります。それは音響の改善だけではなく、デザイン面で評価されていることによるものと考えています。
今は導入いただいたお客様からのフィードバックを集めている状況です。これをもとに、音響製品の今後の商品展開を考えていけたらと思います。
幼保施設をはじめとした公共・商業施設で、音の響きに関するお悩みがあれば、天井に「KIN TONE」を設置することをご検討ください。
特注対応も可能な「KIN TONE」は、音環境もデザイン性も向上させることができます。