私たちはどう暮らすか、住まうか。
リノベーションを通して見えてきたこれから

2021.3.8

(左)高木 亮:株式会社ブルースタジオ マネージャー、一級建築士
(右)岸田 康弘:デザイン部 プロダクトチーム

2020 年、コロナ禍という事態を受け、「どう暮らし、どう住まうか」について、
改めて考えを巡らせた人も多かったのではないでしょうか?
その選択肢のひとつとして、近年急速に浸透してきているのが「リノベーション」というスタイル。
DAIKENでは、2018 年にリノベーション向け建材を開発し、『STYLE SWITCH』を展開しました。
その際タッグを組んだのが、リノベーション業界の最前線にいる「株式会社ブルースタジオ」です。
同い年で意気投合したという担当者同士が、当時の開発の過程を振り返りながら、
これからの暮らしについて、語り合いました。

※撮影時のみマスクを外しております。対談中はスタッフ全員がマスクを着用し、コロナウイルス感染症防止対策をとった上で取材を実施しております。

「リノベーション」をもっと身近に感じてもらいたい

岸田

『STYLE SWITCH』のプロジェクトがスタートしたのは2015 年。営業経由で弊社の展示会にブルースタジオさんをお招きしたのがきっかけです。その際に高木さんが来てくださって、意見交換をさせていただきました。

高木

商品の説明をいただいて、自分だったらこういうのが欲しいなどと自由に答えました。そして「一緒に何かやりましょうよ」と、岸田さんに言われまして。実はそうおっしゃってくれるメーカーさんは多いので、私自身は軽い気持ちだったのですが、後になって「あのとき言いましたよね?」なんて言われちゃって。「あ、社交辞令じゃなかったんだ(笑)」となって本格的にお話が始まりました。

岸田

もともと役員の方の講演を聞きに行っていて、ブルースタジオさんのことはよく知っていました。いつかは何らかの形で一緒にやりたいという思いはありましたね。

高木

DAIKENさんとのコラボを決めたのは、面白そうだからというのが一番ですが、いつもとは違うアプローチでリノベーションを広げたいという動機もありました。大手メーカーの開発システムでは、その材料を使って施工するところまでをシミュレーションし、何万回も試験を重ねて開発が進むじゃないですか。そうやって開発された商品が全国どこでも、比較的簡単に施工できるという流れができれば、リノベーションに関心を持った人に気軽に届けられる。そうすれば、我々としてもやりがいがあるなということでお受けしました。

空間の見せ方から建材を考える

岸田

ブルースタジオさんには、商品単体ではなくて、空間全体でこんなものがあったらいいなという提案をしてほしいとお願いしました。そして提案を見えるものとするためにプロトタイプとして空間試作も行いました。我々の理想の空間があり、そこにあてはめるピースを揃えていく作業ですので、自社製品ではないものもイメージサンプルとして置きました。そういう意味では、社内での説明が難しかったです(笑)。弊社がそれまでやってきたこととは毛色が違うので、開発サイドからも「それは本当に必要なのか?」と何度もすり合わせました。

高木

協業して驚いたのはそこです。開発の方はやはりモノ中心に考えるんですけど、私たちは空間ありきなんです。このモノが入った空間ってどんな感じなの?想像できないなあ、ところでその空間はかっこいいの?というような疑問をよく岸田さんに投げかけていました。

岸田

私は空間から考えていくというのが新鮮でした。今では弊社デザイン部もこうした作り方が当たり前ですけど、自分は開発部が長かったこともあって、モノありきで「これを作る!」みたいな考え方に慣れていましたので。でも、こういう部屋に住みたいから、ここにはこれが必要だと考えていくほうが際立つし、わかりやすいんですよね。

欲しかったのは抜け感と質感

岸田

最終的に「リビングドア」「玄関収納」「間仕切り戸」という3つの商品に絞って、開発が進められたのですが、それは我々が理想とした空間を作る上で重要な要素がこの3つにあると考えたからです。

レトロな空間演出に最適なモールディングデザインの「リビングドア」

下のスペースの使い方を提案したルーバー扉タイプの「玄関収納」

高木

作っていく上で、私たちはまず、リノベーションのトレンドとそれによって変わった住空間の話をしました。マンションや都心の戸建の場合はどうしてもアウトフレームが決まっていますから、その中でLDKは重要だよね、しかもLDKは広くて一体型がいいよね、などと。なぜそれがいいかというと、広々としたLDKは気持ちがいい、そして一体型なので家族が集まり、コミュニケーションが取りやすい。玄関もただ行き来するだけの空間ではありません。玄関が広いと、訪れたときに印象がいいし、ベビーカーなどがあっても窮屈でない。マンションであっても外のように使える空間があったほうがいいというのも、私たちがよくする話で、今回はそれを感じられる3商品に絞られたということですね。効率的でスペースを作るためのしつらえではなく、ある程度ゆとりを持った空間の中に上や下に仕切りを作って、抜け感をデザインしたかった。これだけ広いエントランスがあるのって開放感がありませんか?マンションの中で屋外を感じられたら気持ちよくないですか?ということをぜひ伝えたかったんです。そういったことを話していく中で、自ずと商品が絞られていきました。

岸田

「間仕切り戸」である『ラインフレーム』はそのくらし方をイメージして作った商品の典型で、決め手は「心地よさ」でした。でもそれを表現するための過程が大変でした(笑)。

部屋の内部と半外部を緩やかに仕切る間仕切り戸『ラインフレーム』

対極のせめぎあい

高木

カルチャーの違いを感じる場面は随所にあって、面白かったのがドアノブ。DAIKENさんのレバーハンドルを開ける角度って10度でしたっけ?

岸田

はい。荷物を持っていてもひじなどで簡単に開けられるように、うちではかなり早い段階から10 度で開く作りにしています。

高木

軽さみたいなものは我々からすると重要ではなく、逆にもっと質感があるようにしたいと考えていた。リノベーションをするお客様には、ずっしりとした物質の量を感じられるものが好みの方が多いです。そういった対極のせめぎ合いがすごく面白かったです。どちらのスタンスも、それぞれの中では正しいものが展開している。だから最初は、お互いこんなに違うのに、ひとつのものを作れるのかなと不安にもなりました。

岸田

高木さんはうちの商品カタログを全部読み込んで、すごく分厚い資料を作ってくださったんですけど、弊社で扱えそうなものが見当たらず、初回の資料をみたときに私は「お手上げ」って思いました(笑)。

高木

私たちのお客様、リノベーションに関心の高い方というのは、手入れの面倒臭さなども楽しみのひとつと捉える傾向が強いことがあげられます。手入れをすることでより愛着が増すというような。私たちとしては、質感や美観がある種の不便さとつながっているのは自然なのですが、大量生産をするという前提の今の社会やメーカーでは、そこは障壁なんだというのも今回の気づきのひとつです。このプロジェクトは、その対極同士がいかに歩み寄るかというチャレンジでした。最終的には、サンプルやデザインを何度も出してもらいながら「これかっこいいんじゃない?」というのものを作り込むことができました。その中で、ひとつひとつ、我々はここはこういう質感が欲しいんですよ、なぜならば、という細かいディティールの話ができたので、結果としてはよかったです。

作って終わり、ではなく伝え方までデザインする

空気感や世界観を伝えるカタログ

高木

開発の仕上げとなったのがカタログ作り。私たちがリノベーションで大事にしているのは「その人の暮らし」なんだと改めて気づきました。ですから、それを訴求するものであるべきだと。カタログも、メーカーさんだと物撮り写真が淡々と並ぶものが一般的ですが、商品番号や機能を羅列するのではなく、あくまでも空間の雰囲気を見せたほうが伝わるのではないか、インスタグラムが発達しているので、そこでの見え方をきちんと考えたほうがいいなどと話し合いました。

岸田

『ラインフレーム』は、部屋の一部をサンルーム的に使うくらし方などを提案する建材です。商品画像がわかりやすく載っているだけじゃなくて、掃き出し窓の手前に設置して外とつながりつつ、部屋の空間をゆるやかに仕切るものという『ラインフレーム』の発想が伝わりやすいカタログ画像を作成しました。

『STYLE SWITCH』が届いた、という実感

岸田

このプロジェクトの後、社内でリノベーション業態専任の営業チームができて、リノベーション用のセレクトカタログも作って『STYLE SWITCH』とともに提案しています。その中でこの3商品がすごく売れているということはないんですけれども、まずお客様と話すきっかけになりますし、また実際に『STYLE SWITCH』の提案から、予算上の都合でここまではできないけれど一部取り入れてみたいというお話につながったりしています。商品としてもツールとしても、営業的にはかなり助けになっていると言われています。

高木

販売後にインスタグラムでチェックしていたんですけど、写真見ると「ここに『ラインフレーム』が使われている」ってわかるじゃないですか。インテリア系のインスタグラマーは撮り方が上手なので、写真にフォロワーが反応する。空間で見せる、それで新しい価値観を作るという私たちの狙いがきちんと伝わっているんだなということがわかって嬉しかったです。

岸田

それで社内からも商品とツールの続編を作って欲しいというリクエストが来ているんですよ。このプロジェクトを始めた時は、ゼロから社内のコンセンサスを取っていたのに。リノベーション文化が浸透してきたことがわかりますよね。

それぞれが自分にとっての「気持ち良さ」を探し始めた

岸田

2020 年は家で過ごすことを余儀なくされた一年でしたが、我々の業界の商品でいうと、求められるものが極端に変わりました。国内向けだと収納商品やテレワーク向けの商品を急いで作るというミッションがありました。テレワークを意識した間取りであったり、玄関近くに除菌するゾーンを設けたり、家の形自体も変わっていくのではと感じます。急激にこういう事態になったので、今はまだモノ優先になっていますが、改めて家でどう過ごすかを考え直す時期になると思いますので、今後は空間からアプローチした提案をしていければと考えています。

高木

現代の都市は、人が集まってそこで経済活動をし、発展していくという高密度化の動きそのものですよね。それがコロナ禍という事態になって、人々は自由に外に出ることができなくなりストレスを溜めています。でも今までのように大きな集団でつながるだけではなくて、たとえば近所の3家族くらいでコミュニティを作るということだけでもストレスが軽減するんじゃないかと考えたりしています。皆が都心に行って消費する一極集中型ではなく、近隣で買い物ができておしゃべりができて、たまにオンラインで世界とつながる、という暮らし方、小さなコミュニティが散発的に存在する都市のあり方になっていくのではないかと。とくに、日本人って我慢強いというか、これまで満員電車で通勤して、家は寝るところと食べるところ。ある意味、理性的な家づくりをしてきたと思うんです。でも今回、家にずっといることで、自分らしさをどこかに置いて来てはいなかったか、自分の気持ち良さとは何なんだろうと気づけたはず。そういった部分に向けて取り組んでいければと考えています。

リノベーションで叶える 自分スタイルの家づくり
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