“色と素材”を切り口に、人の暮らしのこれからを紐解く

(右)大澤 かほる一般社団法人 日本流行色協会 クリエイティブディレクター
(左)松永 研二:デザイン部 トレンドチーム リーダー

Daiken Designには、プロダクトチームとトレンドチームという2つのチームがあります。
そのうち、トレンドチームは、社会や暮らし方の変化からデザインの変遷を予測・分析し、
新しい空間コーディネートや内装建材の色柄(CMF※)の開発を担当しています。
(※CMF:Color:カラー、色 Material:マテリアル、素材(柄) Finish:フィニッシュ、仕上げの略)
その一環として、「色と素材」を切り口に、これからの市場動向を分析している
一般社団法人日本流行色協会(通称JAFCA(ジャフカ))の会員となり、情報を提供やコンサルティングを受けています。

JAFCAとDAIKENがコンサルティングを通して取り組んだ内容について、
これからの空間づくりの課題について、
自由に語り合った内容をお届けします。

トレンドの「裏」を深堀りする

松永

トレンドチームは、弊社が扱っているフローリングなどの床材、天井材、ドア、壁材などのいわゆる内装建材についてCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)のデザイン開発を担当しています。といっても、建材の色柄や素材を単体で考えるのではなく、その建材が使われる空間、空間にひもづく社会背景、人の暮らし、世のデザイントレンドなどを包括的にリサーチして、具体的な開発につなげる位置にあるのがトレンドチームの役割ですね。そのリサーチをするうえで、さまざまなことをご教示いただいているのがJAFCAさんなんです。

大澤

JAFCAはメンバー制で活動している組織です。大きくレディスウェア、メンズウェア、プロダクト・インテリアの3つの部会に分かれており、およそ色がついている製品を作る方々がメンバーになっているとお考えください(笑)。
私たちはメンバーの方に対して、先行き市場がどうなっていくかをお伝えする立場といえます。そのために、国内外の消費者の動向や政治・経済など時代の変化、最終的にライフスタイルがどう変化していくのかを捉えたうえで、どういう色、柄、手触りが求められるのかを分析しています。
DAIKENさんのように、完成までそれなりに時間のかかるプロダクトを作るメーカーの場合、現在求められている色や素材感が1年先もそのまま使えるかというとやはり変わります。それで、この先はどういう方向なのかについての背景情報が必要となるわけです。

松永

我々が部会員として入会したのは2018年ですが、ちょうどDAIKENでの製品提案の際に、インテリアテイストを強く打ち出した時期です。もちろん以前からインテリアテイストの提案やそこにつながる情報収集・分析はしていましたが、より先を見た提案が必要と感じておりました。そこで、トレンドの裏にある背景―なぜそのトレンドが来ているのかということをもっと深く探ることで、一歩先をいったコーディネートをお客様に提案できるのではないかというのが入会のきっかけでした。

視点をすり合わせるコンサルティング

大澤

JAFCAは普段からいろいろなジャンルの方とお付き合いしているので、広い視点から見られる部分があります。とくに新しい市場を開拓するときには、そういう情報も大切になりますよね。

松永

そうなんです。トレンドは、いろいろな業界から響きあって醸成される部分がありますから。
そうした流れで、公共・商業建築市場、住宅でのコンサルティングをお願いしました。デザイントレンドはファッションから来ている部分も多く、空間としてファッションに近いところにあるのが美容室だとアドバイスいただいたのですが、その流れはなるほどと思いました。またJAFCAさんは素材についても知見がおありなので、こういう方向性ならこの素材はどうですかなどのリアルな提案をいただけたのが、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)のディレクションをするうえで、すごく参考になりました。

大澤

実際にDAIKENさんと仕事させていただいて感じたのは、チームとして関連事項をすごく調べられているなということ。色々な方面にアンテナをはっていて。そこで我々もJAFCAだからこそ知りえる情報、そして一般の消費者の感覚を伝えて、すり合わせをしていきました。

松永

我々が考えると、どうしてもおとなしめの、ある意味無難なものに仕上げてしまう傾向があるんです。もちろん床、建具は固定されるものという前提があり、落ち着いた色を出すという面はありますけれども。空間コーディネートにしても、ついつい建材のことばっかり考えてしまう(笑)。でも世にある空間を見てみれば、建材だけではなく色々な要素が入っているわけです。そこでJFCAさんは、家具やカーテンなどのインテリアファブリックなども含めた素材感や、自分たちにはない切り口、トータルでの空間提案と、その裏にある暮らし方や思想などの背景情報を提供いただきました。

JAFCAからの素材を含めた提案内容

松永

住宅市場向けの提案では当社の空間コーディネート提案『hapia 11taste』の新バリーションを追加する際にコンサルティングをお願いしました。例えば、カントリー調の新しいコーディネートを検討する際に、想定しているペルソナ(ターゲット層)をお伝えした上で、具体的な素材感やアレンジについてアイデアなどをいただきました。

ハピアシリーズのインテリアテイスト提案

松永

いただいた情報のおかげで、空間コーディネートを考えるときも、弊社の製品である床とドアにプラスして、DAIKENでは扱っていない壁紙であったり、あるいは小物類であったり、それらも含めて、どのようにテイストを合わせていくかをきちんと組み立てることができました。

「03 NATURAL MODERN 【ナチュラルモダン】」の空間提案。小物までトータルでコーディネートしている

大澤

お話を伺うと、やはりデザイン部というのは先行市場を開拓するためにはなくてはならない部署なんだなと感じますね。デザインの裏付けと落とし込みがあるからこそ、いざライフスタイルを変えていこうと考えた消費者に対して、どの建材がいいのかということがしっかり響くわけですよね。

大量生産から個へ―デザインはどこへ行くのか。

大澤

CMF(カラー、マテリアル、フィニッシュ)を含め、カラーデザインの重要性はさらに増していくでしょうね。住宅ではその流れは顕著かもしれません。家にいる時間が増えて、多くの人が自分の仕事と生活のバランスをどう保つかについて振り返るようになりました。その結果、自分にとって居心地のよい環境、ということの重要性が高まっています。色や素材感についても、流行りだけではなくて「心地よさ」ということにみんな真剣に考え始めたと思います。

大澤

さらにいうと、私は「見える」デザインと「見えない」デザインがあると思っています。見えないデザインはどういうことかというと、コロナ禍ではっきりしたことがいくつかあって、ひとつに「換気」の重要性があります。それからDAIKENさんも作られていますが、吸音素材などで室内の音をどう調整するかということ。空気や音の環境などは見えないデザイン、一方、色や素材は目に見えるデザインであると同時に、皮膚感覚に訴えます。快適性を追求するという点で、CMF(カラー、マテリアル、フィニッシュ)デザインは今後、更に重要になります。見えるものと見えないものをいかにバランスよくデザインするかということが大事ですよね。

松永

これまでは大量生産、大量消費が我々の経済を作ってきたわけですけれども、今回の事態でとくにホテルや飲食店とか、たくさん一気に作って、いっぱい食べさせてという基本が変わりました。輸送や旅行についても同様で、大量輸送は難しい状況ですよね。これらサービスだけでなく、作ること自体の前提が崩れているなかで、我々はメーカーとして、デザインをどうしていくべきなのかを考えさせられています。

大澤

おっしゃる通りですね。もう大量に何かを詰め込むっていうことはできないでしょうし、個別で、ということをどのように実現していくかは難しいところですよね。

松永

打開策として、DAIKENでは部分オーダーメイドの取組みは考えているところです。ちょっと手法ありきになってしまいますけど、壁材『グラビオエッジ』に採用している特殊多彩塗装の技術を発展させて、個別の色柄のご提案ができないか検討中です。基本のテイスト、ベースにどれだけオリジナリティを加えていくか、アレンジしていくかだと思っています。

大澤

一般の人の目が肥えてきていることもポイントですよね。ネットやSNSの影響ももちろんありますが、それ以上に、皆が少し自分に正直になった、ということではないかと思います。流行だからではなく、自分はこうだから、ということを優先する。よい意味での個人主義の方向性は今後ますます出てくると思います。
ただ、それによってすべてが個に分散されるかというとそうではないと思うんです。人はどこかで必ずコミュニティを作り、そこには人が生きていくための本心が隠れていますので、それを探っていきたい。そのコミュニティをどう発見し、どう把握するかということ自体が、各メーカーのオリジナリティにつながるのではないでしょうか。オリジナリティは消費者にとって大きな魅力ですよね。

松永

おそらく商業施設、宿泊施設、すべてにおいてそうですね。そこに行く理由であり、逆にそれを作らないと人に来てもらえないという何か、がはっきりと必要ですね。

どこかが情報の鍵を握っていくという時代は終わるのかもしれない

松永

これまで日本のインテリア業界ってミラノサローネなどの海外展示を見て、そのトレンドを取り入れる・・・といった形で、デザインのサイクルが回っていた部分もあったと思うんです。でも来年のミラノサローネの開催も不透明な中で、どこかが中心になるのはなくなっていくのかなとも感じています。その点、いかがお考えでしょうか?

大澤

ファッションでは、ニューヨークコレクションが人数制限をして開催しました。個々のコレクション発表はオンラインで可能でしょうし、ミラノサローネもそうなる可能性は高いと思います。ただそうすると、これまでのように、そこへ行けば一通り見られるという機会がなくなるかもしれません。そういう意味で、どこかが情報の鍵を握っていくという時代は終わるのかもしれない。ある意味私たちも危機感をもっていますよ。

松永

鍵になる大きなところがなくなったら、発信源がおそらく点在して、こまめに情報を取ってこないといけない。その収集のやり方もオリジナリティになるわけですね。

これからの方向性―空間における地域性とサスティナビリティ

大澤

いま自然災害が増えていますよね。記憶に新しい千葉の大停電は、電力を遠くから運ぶことには限界があるということを知らしめてくれました。スマートグリットはこれからの街づくりのテーマです。気候変動によって今後も各地域で災害が増えます。災害が多発する地域は街ごと安全な場所に移り住むという施策も重要になるでしょう。街づくりはコミュニティづくりでもあります。そのコミュニティに合った施設や住宅のデザインが必要になります。高齢者住宅に関する調査でわかったのは、高齢者自身が高齢者しかいない場所を好まない、いろいろな年代の人が集まるコミュニティを求めるということでした。地域の自然環境を維持し、多様な人々が集まるコミュニティづくりをしていくこと、SDGs(持続可能な開発目標)に寄与するモノづくりをしていかなければならないですね。

松永

サスティナビリティは今後欠かすことのできない要素ですね。我々も公共・商業建築へのデザイン提案をより積極的に展開していくうえでは、その視点を大切にしたいと思います。そういう意味でも、またJAFCAさんともいろいろ話し合っていきたいですね。とくに商業施設というのはその「場」の素材とか空間が重要になると思いますので、広く意見交換をしていきたいです。

大澤

もうひとつ、やはりその街になじむものってあると思うんですね。私は趣味と実益を兼ねて、国内の街を訪ねるのですが、あるとき「これがうちの新しい街並みですよ」と紹介されて、強い違和感を覚えた場所があったんです。なぜだろうと考えたら、その土地で住民が長年培ってきた暮らし方を無視したデザインだったからです。とってつけたような不自然さがありました。街づくりは全く新しくしてしまってはダメなのかもしれません。古い味を残しながら、新しさを混ぜ込むような感覚が大事だと思います。

松永

昔からの伝統的な家づくりにもヒントがあるかもしれませんね。弊社の工場がある富山県や岡山県など何か一緒に見に行って、調査したら面白そうですね。是非、今後も一緒にリサーチやデザイン開発ができればと思います。今後ともよろしくお願いします。

トレンドを取り入れた
Daiken Designが提案する11のインテリアコーディネーション
『hapia 11taste』