“0.5歩か0.7歩くらい、ちょっと先の提案ができて
初めてお客様に響くと思います”

2020.10.28

池下 修斗デザイン部 プロダクトチーム デザイナー(2012年入社)

―デザイン部ではどのような業務を担当されていますか?

現在はプロダクトチーム所属ですが、つい最近までトレンドチームというところで、主に色柄の開発と空間コーディネートの提案をしていました。次に来るであろう建材の形、色柄のまとめ合わせをしながら空間全体の雰囲気を作って提案すると言えばよいでしょうか。また、それに伴う調査活動もあります。国内外の展示会でのトレンド調査をはじめ、ウェブアンケート、あとはインタビュー形式での直接のヒアリングなどですね。

―色柄分析・提案は、商品化のどのような役割を果たしているのでしょうか?

建材は開発から発売まで早くて1年程度から、当初の調査段階からすると、企画から3年ほどかけているものもあります。そう考えると、現在の流行しているものをそのままやっていたのでは遅いので、次のトレンドの芽を見つけておかないといけません。デザイントレンドだけでなく、私たちのライフスタイルの変化、たとえば少し前なら、「働き方改革」や「おうち時間の重要性」などといった背景もおさえながら、提案できるところはどこか?というところを考えています。

―メーカー側が意識的にトレンドづくりをしていくということでしょうか、施主側が求めているものに応じる形でテイストを作っていくこともあるのですか?

大きな流れとしては、ミラノサローネやメゾン・エ・オブジェといった国際的な見本市があって、そこでの木目やコーディネート(素材)のトレンドが、ひとつの大きな柱となります。我々も当然それを見ますし、実際10年程前まではそこが主流だったとは思います。

ただ、ここ5年くらいでしょうか、リノベーションなどジャンルが広がり、SNSの影響力が強くなってきたところから流れが変わりつつあります。たとえばリノベーションでは、ヴィンテージ風が人気ですけれど、これは海外トレンドとは別のところからの流れです。SNS上にアップされたものやリノベーション会社の施工例が注目され始めて、業界とある会社が出して、あっちの会社も、というように業界全体で、お互い様子見しながら(笑)、答え合わせをするようにして雰囲気が形成されていきました。ボトムアップというか、エンドユーザー側が盛り上がって、それを我々も取り入れるようになった。自分もこの業界に入ってまだ9年ほどですけど、ああいう流れを見たのは初めてでした。

―これまで手掛けたデザイン開発で記憶に残っているのは何ですか?

直近だと『hapiaシリーズ』にMG(トープグレー)色と、MJ(クリアベージュ)色、を追加したときの色柄開発です。(写真①参照)その際はかなり時間をかけて調査を実施しました。たとえば木目の印象調査。同じ樹種でも、木目によって見え方は変わってきますので、その印象の差は勿論、モチーフとなる樹木のネーミングで響くものは何か?ということも調べました。

写真①:左:MJ(クリアベージュ)色、右:MG(トープグレー)色

調査を行う中では、実際にターゲットユーザーの方をお招きして、ヒアリングを行いました。ヒノキやケヤキ、桜など樹種の名前を書いた紙や、実際の樹種のサンプルを並べて、それを見ながらインタビューしていったんです。エンドユーザーの持つ「印象」にまでこだわって、「愛せるポイントをつくる」ことを目指した製品ですね。

―『hapia』の場合は、製品の色柄とインテリアテイストを合わせた空間の提案もしていますね。

生産者側が考えるトレンドとエンドユーザーとの意識のギャップを埋めるためにも大事ですね。というのは、エンドユーザーは自分の見慣れているものをベースに判断をします。住宅の場合なら自分の家が基準になりますが、家は頻繁な買い替え商品ではないので、ユーザーの方が見ているベースが10年以上の前のものだと、いきなりトレンドの製品を見せても、抵抗感のほうが強かったりします。自分たちだけなら、木目を見ただけである程度認識できてしまうのですが、エンドユーザーはやはり空間にしてご提案すると、納得いただけますね。(写真②参照)

写真②:トレンドチームが提案・構築したインテリアテイスト「SOFT CHIC 【ソフトシック】」

―プロダクトの開発は、技術的な先進性とデザインとの兼ね合いがあると思うのですが。

やっぱりバランスをとるのは難しいですね。
弊社の製品でWPC(ウッドプラスチックコンビネーション)という木目に樹脂を流して固めた高級床材シリーズがあります。これは傷防止ができて、硬くなって強度も上がるというメリットがありますが、どうしても樹脂を入れることによって木材の色が多少変化してしまうんですよね。もともとの木目の色合いや出そうとしていた質感、たとえば生っぽさがなくなってしまうため、色の調整に苦労します。

色柄のデザインや技術はショールームで確認できる

また、『トリニティ』という人気の高い床材の特長は基材の横のエッジ部分まで、化粧シートを巻き込む技術によって作ることのできた床材です。それによって木材が持つ厚みや立体感も出ますし、壁面から木目が見えるので、より木材本来の「らしさ」が表現できます。(写真③参照)そのため、従来の木目シート以上に無垢っぽさが表現できるよう、何度も試作を重ねました。
こうした技術と意匠の交わるところを探すのが、デザイン開発の面白さであり苦労する点です。

写真③:床材『トリニティ』の側面

―デザイン開発をするうえで大事にしていることはありますか?

私自身の業務に一番近いところにあり、心掛けているのは、Design Philosophyにもある「まだ見えていない人、物、シーンまで探り出す」です。でも、それほど遠い未来ではなく、近未来を探していく感じです。リサーチをきちんと行ってエンドユーザーの声を聞くのはもちろんですが、実際に売れたり、話題になったりするのはそのイコールではないんですよね。
開発までの過程もさることながら、製品を発売して、問屋、ハウスメーカーや、工務店を通って、ようやくエンドユーザーに届く。ここまででかなりのタイムラグが生じますので、その間隙というか、ぴったりの場所を打つ、ということが求められています。その中で私は、プロダクトアウトとマーケットインの両方をやりながら、エンドユーザーが思っている今、よりも少し未来のこと、0.5歩か、いや0.7歩くらい先の提案を目指しています。それができた時に初めてお客様に響くものになると感じています。

―タイムラグを計算しつつ、やっていくということですね。

そんなにうまくできていませんけどね(笑)。業界内の競争も激しくなっていますし。そういう意味で競合の動きはやっぱり気になります。我々が開発中とか検討中みたいなことしていたら、ちょっとの差で他社のニュースリリースに出てきて「次は、もう少し早く」のように思ったりします。

―今後デザイン部として、あるいはチームの一員として目指すのはどんなことでしょう?

私自身、策定に深く関わっている「DESIGN VISION」をより打ち出していきたいですね。「DESIGN VISION」は、次なる購入者、ターゲットとなるより具体的なペルソナを設定し、まだ目に見えないニーズを見つけ出して、会社としての新規テーマを抽出することを目的とした取り組みで、デザイン部が数年ごとに発表しています。これに関わることは、社内の中で一歩進んで動く立ち位置になりますので、私自身社内をデザイン面で牽引していく原動力になれたらと考えています。