“何度でも「なぜ必要なのか?」を問い直し、
自分のテーマとして昇華させていきます”

2020.10.28

岸田 康弘デザイン部 プロダクトチーム デザイナー(2006年入社)

―手がけた製品の中で、印象深いものはありますか?

2015年発売の『ラインフレーム』は、リノベーション市場向けのガラスの間仕切り戸で、周囲を黒いアルミフレームで囲んだデザインです。(写真①参照)ショールームでも展示していますが、『ラインフレーム』を使って、インナーテラス空間を作るという、新たなくらし価値提案をしています。ただの間仕切り戸ではなくて、新しいプラスアルファの空間を作ることができるものだよということですね。

写真①:『ラインフレーム』を使ってインナーテラス空間を提案したシーン

正直、すごく数が出る商品というわけではないのですが、リノベーションを中心にやっている営業から聞くと、この『ラインフレーム』がフックとなって、そこから他のドアとか床材の営業につながることが多いらしいのです。やはり、使い方を含めての提案をしたことが、エンドユーザーに響いたと思うので、その意味でも重要な商品だと位置づけています。

―なぜ『ラインフレーム』をやろうと思ったのでしょうか?

開発当初、リノベーション市場の認知度はまだそれほどではありませんでしたが、伸びるだろうという感触はあったので、そこに向けて何かやろうとしたのがスタートですね。
社外のリノベーションをメインにやっている設計事務所にヒアリングしに行ったら、部屋の使い方としてフレームの間仕切りは重要だとアドバイスいただいたのです。ヴィンテージ感を出す際にも合わせやすいのです。そこの設計事務所でも、スチールを溶接した、高価なこだわりのフレームを作られていました。さすがにその質感まで持ってくるのは難しいかな?というのはありつつも、提案の幅を広げていく良いチャンスと考えて、『ラインフレーム』の開発を進めていきました。

―どういうところに気を使って進めていきましたか?

フレームのアイアンの質感を出すことと、いかにフレームを細くするかにこだわりました。ヴィンテージ感とスタイリッシュさの両立ですよね。扉を閉めたときにフレームが一本に見えるように、ぴったり重なるようにしたのです。(写真②参照)

写真②:細みを追求し、フレームに繊細さとスタイリッシュさを与えた

運がよかった面もあって、当時、私はTDY連携(※TOTO、DAIKEN、YKK APの3社がリフォーム・リモデル分野で協業など連携を強化している)メンバーでもあったのですが、デザイン違いで2社が出すという共同開発になったのです。効率よく開発を進められたのはラッキーでした。

―リノベーションという新たなニーズを掘り起こしたわけですね。

今では驚きでしょうが、当時は社内でもリノベーションとリフォームの何が違うのか、という説明をさせられましたよ(笑)。
大まかに言うと、今自分が住んでいて古くなったり、不便になったりしたから改修という流れがリフォーム。リノベーションは、新築にするのか、中古にするのかを考えたとき、そこを安く購入しかつ自分の好きなようにすることで、家の買い方のひとつという認識ですね。

いまでもヒアリングした設計事務所とはお付き合いがありますが、何件か『ラインフレーム』を購入いただいたりしています。やりたいけど、高価で手の出せないお客様にも提案しやすく、お客様の理想を実現できますよね。リノベーションって、中古物件をいかに自分らしくするかがモチベーションですから、こだわりとコストパフォーマンスは同じくらい大切に考えられているんです。そこに応える製品づくりを目指しました。Design Philosophyに「まだ見えていない人、物、シーンまで探り出す」というのがありますが、まさにその気持ちで、潜在ニーズに入り込むことができたのかなと思います。

―Daiken Designといえば、ドアですが。

2013年発売の「0S」と「1S」というドアデザインも記憶に残っていますね。(写真③参照)
いずれもリノベーション向けのドアデザインです。それまでDaiken Designが作ってきたのは、言ってみれば「シュッとしている」ものが多かったのですが、こちらはカントリー調を意識したもの。板張り感を強調してナチュラルな雰囲気を出そうとしたデザインです。前後して競合でも似たテイストが出てきましたが、その中にあって売り上げが出せまして、ひとつの実績として残せた、個人的にも思い入れのある製品です。

写真③

―デザインをするうえで、いちばん大事にしていることはありますか?

まず「原点を見つめる」ことですね。何のためにそれを作るのかを忘れないようにしています。開発デザインのテーマについても、社内での方向性だったり、そのときの市場性から出てきたものだったりと様々な理由で設定されるものなのですが、そこでもう一度、「なぜそれが必要なのか?」を自分なりに見つめ直し、考察することが大切だと思っています。そこから自分なりのアイデアや検討課題を見出し、自分のテーマとして昇華していけるように。
かっこいいスタイリングだけではだめで、常にそのモノをどう使うかを意識する。たとえ同じ製品だったとしても、新しい使い方はないのかと考えるようにしています。

それはデザインのことだけではありません。すべての作業で、なぜそれをやるのか、やる意味はあるのか、と問いかけるよう心がけています。そうでないと何か資料作るにしても、使えないものを作ってしまいますよね。

―今後デザイン部として、あるいはチームの一員として目指すのはどんなことでしょう?

住宅向けに比べると公共・商業向けの製品に関しては、機能性や安全性、予算などの面の違いもあり、あまりタッチできていません。それだけにデザインの余地もあると思いますので、今後はもっと提案していきたいですね。
とくにデザイン部が進めてきた『越-etsu-』プロジェクトとの親和性は高いと思っています。DAIKENのテクノロジーとデザイン、富山の伝統産業の職人力を掛け合わせ、それをどこまで各施設に寄り添えるのかというところを探りながら提案していきたいですね。

まったくのジャストアイデアですが、個人的にはレンタルオフィスはどうだろうかと考えたりしているんです。オフィス物件が市場にけっこう出ていると聞くので、そこを使って何か面白いことができないかなと。そういう話題は、普段からチェックしていますね。

DaikenDesignは色々な人がいて面白いです。出身の事業部もバラバラですし、あまり「デザインとはこうあるべき」というようなデザイナー然とした人はいない。それぞれ得意なことがあって、やりたいこともあって、異なる視点を持った人がいるのが強みだと思います。同時に核となるものは共有していて、それが現在のDesign Philosophyにつながっています。
私自身は、井波工場、大阪と開発部門が長く、設計図が読めるところ、プロダクト寄りの視点を持っているところを活かして、今後のデザイン開発につなげていきたいと考えています。